短編 神の職場はブラックだった

@streatfeild

第1話 神様のお仕事

「今日からこちらに配属されました。よろしくお願いします」


パチパチパチパチ


僕の目の前には、神様が3人。嬉しそうに歓迎をするように拍手をするステータス神のおじいさん。僕にも目もくれずそのまま自分の仕事をし、ブツブツといら立ちを見せるドロップ神のお姉さん。同じく何かモニターに向かって設計図のような物をニヤニヤと見つめながら両手を動かすアイテム神の男性


この3人が僕の上司になる人達だった



僕はメラトニアと星で一度世界を救った。数々の冒険をし、魔物に魔王、果てまでは邪神と呼ばれるものを一人で倒し平和を築いた


世界のダンジョンも全て踏破し、勇者と呼ばれながらにしてあらゆる知識を取り組み賢者ともいわれる存在だった


悪を撃ち滅ぼし、あとは自由きままなスローライフを送っていたのだが


邪神を倒した時に手に入れていた、一冊の古びた本。それを思い出したかのようにインベントリから取り出し、午後のひと時を過ごそうとしたが最後


世界の理に触れてしまい、賢者と呼ばれる僕の頭脳を破壊するほどの情報が頭に流れてきてしまった


気が付くと、僕は別の場所へとワープをしていた。







「うっ・・・なんだったんだ・・・あの本は・・・」


頭がひどく重く、頭痛がする


頭を抑えながら、周りの様子をみるが先ほどといた僕の部屋ではなくなっている


「どうなってるんだ・・・?」


周りは雲が立ち込めているようなフワフワとした足場、上は天井はなくどこまで上へとつながった白い空。横も同じだ


「おっやっときたか。招待状だしているのにひどいじゃないか」


僕が上や横に視線をむけている間に、僕の目の前には一人の若い男性が後ろでを組み立っている


「うわっ!?誰です!」


さっと飛び上がると、重心を落とし構える


「誰って、神様だよ」


サラっと自分が神だというこの男


「神?邪神の部類か」


「プアッハハハ、僕は邪神なんかじゃないよ」


僕が邪神だというと、笑いだしてしまう。今の状況に何一つ整理が出来ていない


「なぜ笑うのです!ここはどこですか!」


笑われている事が恥ずかしく、声を荒げて男に詰め寄る


「いやいや、あの本読んでないの?ほんとに?」


「本・・・本ってあの革が表紙のやつですか」


「そうだよ、ステ爺がミスっていい人材作ったからって言ってたから招待状と神の世界の歩き方ガイドがセットのもの置いといたのに」


ステ爺?ミスッた?


こいつが言っている事が何ひとつ理解できない


「何をいっているのです」


「お前は人に生まれながらにして、神をも凌駕する力を持ってしまったが故に神として迎え入れることにしたんだよ」


「・・・」


神として迎え入れるって僕が神になるってこと・・・?


「まだピンとこないかい?君の存在はあの世界には特異点なんだよ。世界のバランスを壊しかねないというか壊してしまったからね」


そんな事いわれても・・・みんな助けてって言ってたし


「魔王を初級魔法で倒し、神をなぐりあいの末に勝利をおさめるとかあってはならない事だからね。魔王をデザインした魔物神がステ爺にどんだけ怒ったことか」


だって生まれた時からなんでも出来たんだもん・・・


この神と名乗る人物の話を聞けば聞くほど、僕がどのような事をしてきたのか詳しい内容で、僕しか知り得ない情報も知っている事から本当にこいつが神様なのだと信じていってしまう


「まぁというわけだからね、君はもうこちら側にきたという事で半神半人の身、デミゴッドだ。これからは神としてこっちにいてもらうから」


「意味が分かりません!」


「まぁ仕方ないよ。神をも凌駕する力を持ってるんだからね、じゃあ君の配属はまずファンタジー課にしようかな。ステ爺もそこにいるし丁度いいや」


「え?何も納得も理解も出来てないんですが」


「大丈夫、そのバグったステータスがあれば何でもできるさ。とりあえず仕事覚えて貰わなきゃな・・・おーい、かなちゃーん」


説明をしていた男性が、かなちゃんと呼ぶと白い翼を背にした女性がうわうわと飛びながらやってきた


「はーい、サルタ様ーどうしましたー」


「この新人君のお世話を頼むよ。ここでの生活やファンタジー課とかまぁ新人に色々教えてあげてね。ほら、あの薬草の彼だから」


「あー薬草のですね・・・ぷぷぷ。分かりました」


「笑っちゃ駄目だよぷぷ、僕だって我慢してるんだからねぷぷぷ」


・・・なぜ笑っているのかは分からないが、僕の事をバカにしている事は間違いないために腹が少し立つ


「サルタ様も我慢出来てませんよ~。ふー、気を取り直して。えっと新人さん私は神様たちを補助する事務天使のカナディアです、よろしくお願いします」


その女性は笑っていたことを無かったことにするかのように、深呼吸を一度すると僕に向かい合いお辞儀をした


「あっ・・・えっとノエルです」


「はい、神様見習いのノエル様ですね」


神様見習い・・・賢者や勇者と呼ばれた僕でもここでは見習いか・・・


でも、僕は目の前にいるこのサルタという神に勝てる気は一切しない。戦おうと思うことさえ出来ないほど実力の差を感じてしまっている


「うんうん、順応が早いね。でも君のノエルって名前は人名だよね・・・ここで神となったから神名もいる?」


「違いはあります?」


「あるよ、自分でカッコいい名前つけれる」


「・・・いいです、僕はこの名前気に入っているので」


まだ自分が神になるという感覚がなく、僕の親がつけてくれた名前を捨てたくなかった


だが、ばぐったステータスといったこのサルタという神の言う通り、僕の頭にはすでにここでの生活をしていくという覚悟が出来上がり、邪神が落とした本の内容もあの時は爆発した情報量だったように思えたが、今じゃ内容を思い返せている


「そうかい。じゃあノエルのままで手配しておくからね、じゃ後はよろしくねー。僕はこれからとある世界の国で動物レースして一年の大将を決めるって催しがあるからね」


「あっサルタ様!私、猫って動物に1万ゴッド賭けてるのでお願いしますよ!」


「おー、いいの選ぶね。あの小さくて素早い生き物はみんな賭けているから人気らしいね。じゃノエル君もまたね~」


そういうとサルタという神は一瞬で僕の前から消え去った


なんとも軽い説明を受けただけで、僕は今日から神となってしまったのだ


「う~ん、まずはどうします?ファンタジー課に挨拶いっておきますか?」


「・・・はい、お願いします」


なにも納得は出来ていないのに、そうするしか手がない為に僕は渋々とカナという天使の後ろを歩いていく


「あれ~?元気ないですね~?折角神様になれたのに嬉しくないんですか?」


「嬉しい・・・分かりません、何がどうなっているのか・・・自分の感情も何も・・・」


「駄目ですよ~、新人さんはやっぱり元気がなきゃ!ステータス神のゼウ様はノエル様と合うのを待ち望んでいましたので!」


「はあ・・・」


元気も何も・・・説明不足すぎるんだよ・・・いや・・・僕の頭にはすでに知っている情報のようだ


あの古びた本の内容か


これからいくファンタジー課は、ステータス神のゼウ、ドロップ神のブッセン、アイテム神のマニアが居るところだと歩き方ガイドに書いていたようだ


そして僕の能力値をバグらせた要因のステータス神ことステ爺がいる所だった


あって一つでも文句を言ってやりたいが・・・メラトニアではそのバグった能力のおかげでいい思いは出来た。文句どころかお礼を言わなければいけないかも・・・そう思うと手土産でも持っておけばよかったと後悔


そんな思いをしながら、雲で出来た扉にドアノブがついた部屋の前に事務天使のカナが立ち止まる


そこにはファンタジー課と看板が掛かっている


「つきましたよ、ここです」


「はい」


「駄目ですよ、元気よくですよ。みなさん神様なので気難しい人もいますが基本はいい人達なので」


「・・・分かりました」


「じゃいきますよ」


カナはコンコンと扉をノックすると、中からおじいさんのような声が聞こえる。失礼しますというカナの後ろをついて行き、僕はこれから一緒に仕事をする神様と顔合わせをしたのだった






僕の事を歓迎してくれているのは、ゼウ様だけのようだ


「ふぉっふぉっふぉ、会いたかったぞノエル坊」


僕が挨拶をすると拍手と同時にステータス神のゼウが声を掛けてくる


「ゼウ様、初めまして・・・えっと僕に類まれな能力を授けていただいたみたいで・・・感謝してます」


「ふぉふぉふぉ、まぁ堅くならなくていいぞ。もう一人のアビリティ神のオーディとわしの考えた最強勇者を話込んで仮で作っておったら、間違えてそのまま実際に作ってしもうたからの」


わしの考えた最強・・・・仮・・・


そのゼウがいう言葉に、自分が作られた存在なのだと感じ自分の中の正気度が少し失われたような気がした


「お?つくったとかは気にする事ないぞ?みんなわしやオーディが作っとるからな、まぁだいたいはコピペよ」


コピペ・・・聞きなれない単語も歩き方ガイドに書いてあるために、頭にすんなり入り理解できる


「そうですか・・・」


「ふふ、お主にもそのうち手伝って貰うからの」


「僕がですか・・・?」


それってつまり人を作るってこと・・・?


「そうじゃ、まぁ難しいことはないわい。基本はコピペじゃ、たまにサイコロ振ってみたり、ルーレットしてみたり、システムに任せてみたりと色々あるからの」


「ふんふん・・・」


僕が挨拶程度にゼウと話をしていると


「はーい、ゼウ様今日は挨拶だけなので、他にも教える事がありますので今日はこの辺でー」


事務天使のカナが間をとり、話が終わる


「おぉそうじゃったな、じゃあ明日から頼むぞい」


「はい、よろしくお願いします」


僕はもう一度頭を下げると、ゼウ様は僕の頭を撫でた


「ではブッセン様、マニア様も明日からノエル様をお願いしますね~」


カナがドロップ神とアイテム神に声を掛けると


「はーい、カナちゃん。なんの用事もなくてもいいからおいでねーデュフフ」


ずっと黙っていたアイテム神のマニアがカナにそう返事をするのを最後に、僕らはファンタジー課を出た


僕の自室もあるようなので、次はそっちの案内をしてくれるみたいなので、緊張が少しとけカナと横に並んで歩きだす


「ふふ、ゼウ様嬉しそうでしたね。さながら自分の子供、いや孫にあった気分なのでしょう」


「そうなんですかね・・・?」


「そうですよ、一時ゼウ様とオーディ様が作った人が最強だと豪語するので、魔物神や自然神、ダンジョン神がどうにノエル様を殺してやろうと試行錯誤してましたから」


「・・・だから異常に魔物の数や魔王が四天王だったりと、意味が分からないぐらいダンジョンが乱立してたんですか」


「そういう事ですね、いやぁあれは盛り上がりましたよ。最後には神様自体が直々につぶしにいくという暴挙になりましたからね」


そんな事知りたくなかった。それに何か不穏な事を言っている。いやいや特異点だったとしても世界のバランスを壊そうとしてるのは神様たちじゃん!そんなツッコミを入れたくなる


「えっ・・・じゃあ僕がなぐりあったのは・・・」


「えぇ魔物神のベルゼ様ですね」


邪神がじゃなかったのか・・・


「・・・僕ものすごく殴っちゃいましたよ」


「はい、あの時は神様や天使一同で拝見しておりました。いやぁ~中々の熱狂でしたよ」


みんなに見られてたんだ・・・


最後クロスカウンターが決まり、その邪神もとい魔物神さんという方は消えて行ったが、あれは消滅したりはしていないのだろうか


「その・・・ベルゼ様という方は・・・ご無事でしょうか」


「ぴんぴんしてますよ、あの時は全能神様が判定した結果、ノエル様の勝利とみなしベルゼ様を強制送還しましたから」


全能神か


「お怪我がないならいいですが・・・僕嫌われてたりしますかね」


「はい、とっても嫌ってますよ~。こっちきたらすっごくこき使うって言ってたので気を付けてくださいね~」


「ハハハ・・・そうですか」


世界を救ったつもりが僕のせいであの世界は危機に反していたようだ


「さっきお会いしたドロップ神のブッセン様やアイテム神のマニア様も、ノエル様の件には一枚かんでますよ」


「あの綺麗な女性と男性ですよね・・・あの方にも僕何かしました?」


「う~ん、ノエル様が一番最初に訪れたダンジョンでボスを倒した時にドロップしたアイテム覚えてますか?」


「覚えてますよ、その武器をずっと使い続けてましたからね。少し汚いですがよく切れるナイフですよね」


それはトールズという村にある、ダンジョンだった。ゴブリンが住まうダンンジョンの最深部にゴブリンリーダーがボスとして君臨するものだった


「あはは、ノエル様はあの武器よく切れるという評価だったんですね」


「違ったんですか?」


「あれマニア様があらゆる呪いを込めて作った呪物だったそうです」


「え?」


「それをゼウ様がすごい人を作ったと大騒ぎしていたので、ブッセン様はいたずら心でその呪物をノエル様に与えたんですよ」


「・・・」


「でも結果、ノエル様には呪いは効かずブッセン様とマニア様は面白くない様子で次々に呪われているアイテムを作り、ノエル様が手にする宝箱にいれてましたが・・・」


「何ともなかったですね」


「そう、なので途中からはブッセン様はノエル様には一切ドロップするのを辞めました」


「・・・だから途中から何も落ちなかったんですね。謎が解けましたよ」


僕はこの能力のせいで、ゼウ様以外には結構嫌われているようで知らぬところで意地悪をされていたようだ


こんな新人いびりがあるブラック企業で僕は働けるのだろうか・・・あの2人が挨拶のそっけない態度も分かってしまった今、仲良くは・・・最初から無理なような気がして早くも辞めたくなってしまった




自室に案内されるが何もない部屋、あるのは椅子とテーブルだけだ


神になれば、食事、睡眠などをとる必要がないらしい。その為に自室には何も置いていないようだ


「何もないですよねー、でもお金を貯めたら色々買えるので頑張って働きましょうね」


「・・・働く意味は?」


飲み食いが必要ないのなら働く理由がない、ただぐうたらとすればいいのでは思う


「えー、働かないとこの天上界追放されて、地上界におとされちゃいますよ?」


「え!?じゃあ働かなかったら帰れるってことですか!?」


「え・・・それは・・・サルタ様に聞いてみてください」


僕としてはこのまま神でいるよりかは、残りの余生をゆっくりと暮らしたい・・・いや世界の理を知った今、地上でそんな生活が出来るか不明だが、ここよりはましだと思う


「とりあえず、ここと職場さえ知ってもらえれば問題ありませんね。食事も必要としませんが、美味しいという味覚か感情はありますので食べたければ食事もしていいですからね」


簡潔なオリエンテーリングが終わったようだ。


「何か質問はありますか?」


「・・・・分からない事だらけです。とりあえず・・・ファンタジー課以外にどんな場所があるのかも見たいです」


「なるほど、ノエル様は有名人なので他の課に挨拶行くのもいいですね!そうしましょう!」


「・・・有名人といわれても嬉しくないです」


とりあえず・・・ここで生きていくと言うことはまだ自覚もないし、飲み込んでもいない。だが、ここがどんな状況の場所なのかは好奇心がでてしまい、僕らは部屋から出て他の課へと向かった。




白い壁が続く、この建物。雲で出来ているかと思えるほど地面はフワフワとしている。


「ここは、転送課ですね。ここは楽しい職場なので一番最初にもってこいかもしれません」


「転送課ですか・・・」


カナはそういって、転送課とラベルのような看板がついた扉をノックして返事が来る前に扉をかけて入っていった。


「うおーーー、いくぞーーー」


部屋に入るとすぐに飛び込んできたもの。


初めてみる物なのだったが、既に僕の頭にはそれがどんな物に似ているのか知っている情報だった。あのサルタが言っていた、神のガイドブックとやらに載っていた情報のようだ。


地球というゲーセンにあるレーシングゲームにから着想を得たという、転送装置を男がハンドルを握りディスプレイを見ながら寄生をあげてやっていた。


「ジッコ様~失礼しますねー」


「おー、カナちゃん、ちょっとまってねー。今・・・いい所だから・・・おりゃーーードーーーン。はい、異世界送り成功!」


・・・・


僕はその転送装置を黙って見ていた。


ディスプレイに移っていたのは、学生服をきた子供から大人になるぐらいの子へと勢いよく突っ込んでいく所。それがその男の子にぶつかると、男の子は勢いよく吹き飛んでいったのだ。


「お待たせ―・・・、おっそっちの子はだれだい?」


転送装置の座席から、降りてきたのはサングラスをつけたアロハな見た目の褐色な肌の男。軽薄な喋り方から、これが神なのかと疑問に思う見た目だ。


「新しい神見習いのノエル様です。ほら、薬草のですよ」


「あーーー、君が薬草の!いつくるのか楽しみにしてたけど、やっときたのか!」


そういったジッコという男は僕の背中をバンバンと叩き、喜びを露わにしている。


ただ、薬草の・・・って何で覚えてるんだ?


全く心辺りがない、僕の話題で盛り上がりを2人は見せていた。


「アハハハ。ふー、ちょっとご紹介が遅れましたが、こちらはジッコ様です。他の世界から他の世界へ転生、転移をつかさどっている神様です」


「よろしくー、薬草君」


「・・・ノエルです」


差し出された右手に、名前の訂正を入れながら握手を交わした。


ピー、ピー、ピー


その時アラームみたいなものが鳴り響く。


「あっちょっと待ってね、次の転移の時間だわ」


「あっどうぞどうぞ」


「見ていてもいいですか?」


「おっ流石、見習いは真面目だな~。いいぞー」


そういいながらジッコは携帯を取り出し、どこかに電話を始めた。


「あー、もしもしメアちゃん。うん、そう出番だわ。そークラス転移。とりあえず一人、うんそうそう。えーっと、この陰湿そうなやつうん、こいつだけハブってみてくれる?そー、メガネの。多分復讐に燃えて色々と頑張ってくれると思うから、はーいはーいよろしくねー。あっしっかり冷徹な女神を演じてねー、はーい」


電話をおえると、タブレットのような物の上にシュッシュと指を動かし何か操作をしている。


このジッコが使う、携帯に電話、タブレット・・・その他もろもろもすでに僕の知識にあり違和感なくそれを使っているという事ももはや不思議と思わなくなってしまっていた。


「はい、おっけー。クラス転移完了。後はメアちゃんがうまくやってくるっしょー。と、お待たせ―」


「流石ジッコ様、お仕事が早いですねー」


「いやいや、優秀な部下にめぐまれてんのようちは」


「今のは?」


「うん今の?クラス転移てやつだよ、知らない?」


「知りません・・・」


「まぁおいおいさ。ここに慣れてきたらこっちの業務も手伝ってもらう事もあるだろうしさ。とりあえず、これからよろしくなー」


軽く挨拶を交すと、この一見チャラチャラしているジッコはそれなりに忙しいの今度は電話が鳴り、それに応対を始めた。


プルルルプルルル


「あー。ちょっとごめんねー。もしもしーおー、カロシン?どしたー?――――――――」


ジッコは左手で、悪いと仕草をして離れて行った。


「ちょっとタイミングが悪かったですね」


「お忙しいんですね、ジッコ様は。あの、僕らが最初に入って来た時にジッコ様がやってたのは何ですか?」


そして残されて暇だったので、初めて見る転送装置の方へ僕は歩きながらカナへと質問した。


「これはトラックやタクシーといった乗り物で、だいたい男子高校生や中学生を轢いて他の世界へと転送させる装置です」


「ふんふん・・・」


僕には分からない世界の事だ、色々とあるんだな~と思いながらカナに質問を続けていると、ジッコは電話を耳にあてがったまま戻ってきた。


「ほーい、じゃあ過労死させるようによろしく頼むよー。あぁ5徹ぐらいじゃ最近は温いらしいから厳しめなーはーい。・・・・おまたせー」


そしてジッコは電話を切り、タブレットを操りながら戻ってきた。


「お忙しそうですねー、とりあえず私達は今日の所はご挨拶なのでこれでお邪魔しますねー」


「おー、ごめんな折角に来てもらったのによ。まぁとりあえずよろしく頼むわ」


「はい、これからよろしくお願いします」


見た目に反し、仕事もやり気さくないい人なジッコだった。




そして僕はその他の課にも挨拶に周り、行く先々で薬草のやつと笑われたり、喧嘩をふっかけられたりと散々な挨拶周りを終わらせた。


「ふー・・・神様って結構普通なんだな」


思ったよりも堅物そうな人はおらず、みな仕事が忙しそうにしていた。


そんな様子をみて少し、自分もこれからここで働くのか・・・と少し実感をしてきてしまっていた。


だが、僕に待ち受けていたのは睡眠も食事もいらないという環境のせいで、無休で働く機械のようにコキをつかわれる運命だった。








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