第11話

「はっ?今何て言った?」



「だから、別れたんだ。文美と。」


 透の言葉は衝撃だった。


「なんで!…まさか……」


 すぐ、あの人の顔が浮かんだけど…



「…友達に戻りたいって言われたから。それ以上、理由は追及してないんだ。だからキョウも、文美を問い詰めたりしないでくれ。」


「んなこと言ったって!」


「恭平。」


「…っ」


「文美の方が、俺よりもずっと悩んで苦しんだんだ。…それに、友達に戻るってことは付き合う前と一緒だし、俺は文美をあきらめるつもりはない。そんなの、簡単にはできないし…キョウもその気持ち、わかるだろ?」



「………」



 たとえ相手が他の人を見ていても、その気持ちは変わらない。



「…透がいいなら、俺は何も言わない。でもいつでも相談しろよ。」


「ああ。ありがと。」




 絶対、平気なんかじゃなかったはずだ。惚れた女、それも一度は手に入れたはずの女とただの友達に戻るなんて。


 でも、透は優しさを失わなかった。相手の幸せを一番に考える愛の形を、教えられた気がした。



 そんな透だったから、文美は戻れたんだと思う。文美も、要さんとうまくいくはずがないってわかってても別れたのは、自分のためより透を傷つけたくなかったからだし。透の言った通り悩んだはずだから。

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