第4話 戦火の出会い
「みんな逃げなさい! 早く!」
「で、でもマリス様が……」
「マリスさま、マリスさまっ、うわあああああん!」
リリーがためらい、幼い子どもたちが怯えて泣いてしまう。
安心させてあげたいのに私を取り押さえようとする帝国兵に反撃できません。
「オラ、もう逃げるのは終わりだ! 捕まえたぜ!!」
「は、離しなさい……!」
とうとう腕を掴まれました。
振り払おうとするも羽交い絞めされ、両腕を掴まれて帝国兵の前に引き出されます。
「無駄な抵抗ご苦労さまだ。なにもかも無駄だったな」
「っ……」
強引に膝をつかされました。
睨みあげると、帝国兵が私の頬を片手で掴みます。
「くっ……」
痛いほど掴まれて顔をしかめました。
すると帝国兵たちは私を見て「へえー」とニヤつきます。
「綺麗な顔してるじゃねぇか」
「どれ。おっ、なかなかの美人じゃねぇか。こんな小せぇ国に置いておくなんてもったいないぜ」
「こんなところに一人でくるなんて
帝国兵は下品に笑いだしました。
私は悔しさと恥辱に声を荒げます。
「っ、離しなさい!」
「離しなさいだとよ。自分の立場分かってんのかよ」
「ハハハッ、強気なのもそそる。立場を分からせてやろうぜ」
「いやですっ、やめなさい! やめろと言っているでしょう……!」
帝国兵が無理やり私をおさえつけてきます。
なんとか逃れようとするも強い力で服を破られてしまう。
「いやっ、やめなさい! っ、なにをっ……!」
めちゃくちゃに暴れて抵抗しました。
遠くに子どもたちの怯えた泣き声が聞こえるのに助けることもできない。
それどころか抵抗はなんの意味もなく、服は無残に破られて剥ぎ取られ、帝国兵の前に素肌が曝されていく。
劣情に煽られた帝国兵たちは欲望に色めき立って、いくつもの手が私の体を這いまわります。
気持ち悪い。吐き気がするほど気持ち悪い。
必死で抵抗するのに体が地面に引き倒されてしまう。這って逃げようとすると「どこに行くつもりだ?」と足首を掴まれてずるずると引き戻されました。
私に覆いかぶさった帝国兵が足にまとわりつく衣服の残骸を引き千切ろうとした時。
――――ザシュッ!
視界いっぱいに血飛沫があがりました。
それは雨のように私に降りかかって、唖然としてしまう。
私に覆いかぶさっていた男の首から大量の血飛沫が噴いたのです。
ごろりっ。絶命した帝国兵がごろりと倒れました。
「あ、あなたは……っ」
驚愕に目を見開きました。
そこに剣を持った男が立っていたのです。
目が合ってドキリとしてしまう。
心臓はうるさいほど鳴っているのに食い入るように男を見つめてしまう。
だって男はこの戦場にあって圧倒的な風格を纏っていたのです。
私を見下ろす高い身長と鍛えられた体躯。その容貌は力強い印象を与えながらも、誰もが振り返るほどの造形美でした。
しかし男は私を一瞥しただけで、動揺する帝国兵を冷ややかに見据えます。
「ここで何をしていた」
男が淡々と問いました。
帝国兵が動揺しながらも怒鳴ります。
「てめぇ、いきなり殺しやがって!!」
「俺たちが誰だか分かってるのか!」
「やっちまおうぜ、殺せ!」
逆上した帝国兵たちが男に切りかかりました。
でもその前に男の剣が閃く。風よりも早い一閃に帝国兵から血飛沫があがりました。ひとりふたりとあっという間に切り伏せて、残った帝国兵はガタガタと震えて完全に
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