第6話 

わるるの元を離れた魔人達。わるるの下にはもうサタン1人しかいない。

ちゃぶ台をわるるとサタン2人で囲み、相談する。

「寂しくなっちゃいましたね。わるる様」

「魔界再編だな。人材を集めて、、、」

「どこから?」

「人間界だろ、財◯省の役人とか、自◯党の議員とか、、、」

政宗まさむねの話は日本では通常してはいけないと言われておりますが、、、」

「えー。日本、了見狭いのぉ〜。この物語、おしまいじゃん」

ん?(作者唸り)

「で、私は考えたのですが、我々は楽して生きるのを目標に人間を魔人にして魔界を築き上げてきたのですが、、、」

「うん、それで?」

「いっその事、人間界で商売をして金稼いで豪遊する、に目的を変えては? 魔人達ももう魔界にいませんし」

「えー、人間界やだよ」

「でも、金さえあれば、なんでもできるかもですよ」

「んじゃしてみる?」

「とりあえず、なんの商売ができるかを考えないと、、、

Vtuberなどは?」

「何それ?」

「簡単に言うと動画配信ですよ」

「金になるの?」

「我々の変身能力を使えば、いとも簡単に稼ぐ事ができるかと」

わるるはちゃぶ台の上でカップに残った茶を傾けながら、目を細めた。

「つまり!」

サタンはポンと手を打ち、尻尾でちゃぶ台の脚をぽこぽこ叩きながら言った。

「可愛いキャラになって、喋ったり踊ったり、歌ったりして、ファンから『スパチャ』という名の金を巻き上げる仕組みです!」

「スパチャ……スパイシーチャーハンか?」

「違います。投げ銭です。お金です。渋◯栄一が画面の向こうからビュンビュン飛んできます!」

「なんと!」

わるるの瞳がギラリと光った。かつて地獄七層目を焼き尽くした業火の光である。

「では早速……我が名は“わる姫ルルナ”と名乗るぞ!」

「おぉ、いきなり可愛い名前……!」

魔界の片隅にある、かつて「血の涙池」と呼ばれた地獄スポットは、今や『撮影スタジオルーム・わるる』へと改装された。

照明、グリーンバック、最新のVTuber用フェイストラッカーを魔法で調達。ちゃぶ台の横にはDellならぬ「HellBook Pro」も設置。

わるる改め「わる姫ルルナ」、ついにデビューである!

初配信『はじめまして!わる姫ルルナだぶひ〜☆』

画面には、キラキラした目に猫耳、ゆるふわ金髪の美少女キャラ(中身は魔王)が現れた。

「みんな〜、きょうからわる姫ルルナだぶひ〜☆ よろしくぶひ〜!」

……コメント欄、無言。

「あれ? なんか……静かじゃない?」

「今のVtuber界はレッドオーシャンですから」

「レッドオーシャン……地獄の血の海か?」

「似てますけど違います」

それでも翌日、辛抱強く配信を続ける

二回目配信『地獄のマシュマロ焼きチャレンジ!』

「今日は人間界で流行ってるやつを真似するぶひ☆ “辛ラーメン+マシュマロ+硫黄の粉”で地獄鍋を作るぶひ!」

──結果、爆発。

サタン、顔面大やけど(すぐ治癒)。わるるは背景のグリーンバックごと吹っ飛び、配信は突如終了。

コメント欄だけが一言、

「事故?」

それが一番の盛り上がりだった。

三回目配信『歌ってはみた♪ 【うっせぇわ】を地獄バージョンで』

わるる(ルルナ)が地獄声で「うっせぇわ」の替え歌を熱唱。

「ちっちゃな頃から劣等生、気づいてりゃ悪魔になってた」

視聴者数:2。うち1人はサタン、もう1人は多分、アナーキスト。

「ダメだ……ダメだサタン……!」

配信後、ちゃぶ台に突っ伏すわるる。

「我、もはや人気など望めぬ……登録者数、3、うち2は我ら。再生回数、常に6。低評価の数、まさかの66。」

「わるる様……!」

サタンはそっと、ルルナのウィッグを外してやった。

「もうこうなったら……宗教作るしか……」

「ぶひひ教?」

新企画『ぶひひ教 開祖・わるる、降臨』

神々しきポーズで浮かび上がるわるる。

「ぶひひ〜! この世の全ては“ぶひ”の内にあるのだ!」

「信徒になれば、福引で金の豚まん(中身は空)進呈!」

「入信者は“ぶひ教の証”として、我のLINEスタンプを買うのだ!」

──まさかの、大ヒット。

信者数、爆増。コメント

「くだらなくて笑える」

前の10倍以上のスパチャが飛び交う。

しかし──

数週間後。

「おい、わるる様……税務署に目をつけられてます」

「なにっ!?」

「“宗教法人は非課税”を逆手にとって、NFT『ぶひ符(※かつて、キリスト教がやっていた免罪符のパクリの名)』売りすぎました」

「や、やりすぎたか……!」

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

こうして、わるるは《謎の内部崩壊》を迎えた。

魔界再び。ちゃぶ台のある部屋。

「やっぱり、魔界でおとなしくしてるのが一番か……」

「はい、わるる様。お茶、淹れました」

「……ありがとう、サタン。お前だけは、最後までいてくれるな」

「……はい。でも、次は“魔界スナック”ってどうです?」

「……何その、また面倒なフラグ立てやがって」


ちゃぶ台の上に、また“企画書”と書かれた書類が積まれる。

わるるの長い溜息が、地獄の風を揺らした。


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