名作の館

龍姫

はじめに

 『名作の館』という大層なタイトルを付してあるが、では一体ここでは何を標榜しているのだろうか。時代や場所を飛び越えて、名作は世界中の人々に普遍的な何かを伝え、そして心を揺り動かす力を持っている。そんな名作たちを、私は幾つも読んでいるが、それでもまだ手を付けていないものが無限に満ちている。

 勿論、本作は所謂評論とでも言えよう。しかし、読んだものに対して、執筆背景や感想を次々と書き連ねては、ただの読書日誌になってしまう。いや、別にそうなったって、構わない。しかし、公にするものとして、やはり特異性を持つものでなければ面白くない、私はそんな矜持がある。

 話を戻して、ここで目指されるものについてを述べていこう。名作と一口で言っても実に様々な意味合いでの名作が存在する。前述の、世代や国籍を越えて愛される作品そうであると考えられる。しかし、殆どの人間には知られないが、見た者には必ず語り継がれる、所謂知られざる名作というものもある。或いは特定のジャンルに於いての先駆けであったり、教科書的なものであったりするなど、そのジャンルを見直す際に必ず通過しなければならない意味での名作もあるだろう。とにかく、「名作」という言葉には多義的なアプローチをすることがし得るのだ。

 では、実際に名作を取り上げるとして、書く側としては、明確な意図がなければ、全く意味を為さない。何かしらのテーマを持つ必要がある。SF名作集、ラノベ名作集、ミステリー名作集…… いやはやどれもありきたりなものだ。そんなこんな考えると、私はふとあることを思い出した。ちょうど今年で、アンドレ・ブルトンが『シュルレアリスム宣言』を出してから、100周年だというのだ(2024年現在)。しかし、実際の所、多くの読者には縁遠いものだ。それはむしろ好適な題材であることを意味した。ということで、私は1つ目のテーマとして、シュルレアリスムの中でもより狭く「小説のシュルレアリスム」をテーマに据えることを思い立ったのだ。

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