『自由か愛か!』 ロベール・デスノス

 シュルレアリスム運動が明確に立ち上がったのは1924年に、アンドレ・ブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表したことが契機となっている。ロベール・デスノスはその運動に参加した詩人のひとりだ。シュルレアリスムの方法として、自動記述があるが、デスノスは運動が立ち上がる前に、既に自己流の夢の口述を確立していて、彼の方法は運動そのものに大きな役割を果たした。しかし、運動が左傾化していくと、ブルトンにより、アルトーやスーポーらと共に追放されてしまう。次第に伝統的な詩作に関心を寄せ、自らも運動から距離を置くことになった。

 さて、小説家のシュルレアリストとして、デスノスは『自由か愛か!』を発表している。一見して二者択一のような題名をしている本作のあらすじは以下の通り。時はフランス革命の渦中にあったパリ。主人公・コルセール・サングロはルイズ・ラムという女と出会う。刺激を求め合った両者は付き合い出す。出会ってからもうじき1年、航海をしていたコルセールはルイズとの再会を待ち望んだ。再び地上に踏み入れたコルセールはしかし、最愛の女の死を知ってしまうのであった。やがて、新たなる愛を築くため、彼は海星を求める……

 本作は極めて自由な筆記を採り、展開も奇想天外なものとなっている。彼は、本作を執筆するにあたって、まさに夢のあるがまま自由な方法を採っているのだ。そして二者択一的なタイトルだが、本作ではその両方が備わった、絶対的自由と愛を求めている。そして、本作ではそれらを追求する風潮が燻っている象徴的な歴史的出来事、フランス革命(実態がどうであったかはともかく)を舞台としている。

 シュルレアリスム運動から離れたデスノスはやがて現実社会に於いても自由と愛を希求し、第二次世界大戦中はレジスタンスに加わる。そのことが発覚し、彼はゲシュタポに逮捕され、チェコスロバキアの収容所で病死する。

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