第23話:福島ダンジョンにて~


「……鋼の次、銀か」


「はい!今なら師匠の鋼も砕けそうです!」


「そうか!中々いいものを覚えてきたのぉ碑矩!……ところで、アレは?」


「時ですよ。まぁ顔隠してるんで分かりにくいと思いますけど……」


 新幹線に揺られながら、三人は東京に戻ろうとしていた。駅弁も買ったしさぁしばらくの休憩……と思っていると、いきなり新幹線が急停止してしまう。場所は福島の郡山くらいのところ。


「おいなんだよいきなり停止しやがって!」「なんだこりゃ!?またダンジョンかぁ!?」


『えーお客様、只今線路上にダンジョンが出現いたしました。しばしの運行の遅れをお伝えします。繰り返します……』


「ダンジョン……ほんとクソですね」「よーし碑矩!時!ツブしに行くぞ」


「はい!」「そうだな!」


 どうやら線路上にダンジョンが出来てしまい立ち往生している様子。と言う訳でさっさとダンジョンを破壊しに行く三人。ダンジョンの入口が小さい奴は危険性が高いと彼らの中では決まっている。


「っと、その前に……カメラ一応起動するか確認しなきゃ。映ってるー?」


『あ!……誰!?』『コレミミちゃんのチャンネルだよな?』『ん?!』


 何故かミミのチャンネルに配信されていた。なんなんだこれはと思いながらも一応視聴者たちは見に行く。


「……一人ずつしか入れんな」


「とんでもなく狭いです!時は入れる!?」


「ちょっと待ってろよ……?おっおっおっいけるいけるいけオアーッ!」


 そこはとんでもなく狭い入口のダンジョンだった。とりあえず入ってみると、中にはチェスに出てきそうなコマを模したモンスターがウヨウヨいた。目の前には明らかにボスっぽいモンスターが城の中でふんぞり返っている。


「アレじゃな」「アレですね」「アレだろうなぁ……」


 敵は見えているので時が箱を変形させライフル状にして撃ち抜いてみる。確かに命中し倒れたが……兵士たちは動き続ける。どうやら偽のボスだったようだ。


「どうします?師匠」


「決まっとるじゃろ。全員ブチのめせばいずれたどりつけるわッ!」


「よーし全滅してやるぞ!」


 もう面倒くさくなった師匠たちは、全てのモンスターをぶっ殺せばまぁえぇやろと言う感じで突っ込んでいく。それに反応し様々なコマ兵士達が碑矩らに襲い掛かる。


「「「「「「タゼイニブゼイダイッケェッ!!!!!!」」」」」」


「何が多勢に無勢だお前らは有象無象だッ!」


 無双ゲームかって言う感じに吹き飛ばされまくるコマ兵士たち。数十人以上が束になってかかってもまるで相手にならない、

 真っ先に城に突っ込んでいった碑矩は、とりあえずくらいの感覚で新たに生まれ変わった激を叩き込む。


「表我流其の一応用……!『新激乗しんげきじょう』!」


 城壁に叩き込まれたその一撃は、城の半分を砕き壊しあっと言う間に崩落させてしまった。そこから何事もなかったかのように瓦礫を砕きながら出てくる碑矩。城から出てきたナイト兵士達に対しても容赦なし。技の一つも使わず銀状態の腕で殴り壊していく。


『コイツまた強くなってんな……』『どうやったらこんなことになるん?』『あの……ミミちゃんはどこですか?』


「なんか地味にパワーアップしとらんか碑矩?」


「一応三日間で負荷高い筋トレしましたからね!それに!この銀状態だと火力がハネ上がるんです……よっ!」


「なるほどのぉ……。ワシにもそれは使えんようじゃ」


 そう言いつつ防御力の高いはずのルーク兵をゴミのように蹴散らしていく師匠。ジャイアントスイングで投げ飛ばすだけで兵士が散らされていく。


「さぁ邪魔をするならば……!全員ブチのめしてくれるッ!」


『わー。凄いよぉ……』『ジャイアントスイングで水平に吹っ飛ぶのヤバない?』『それ以前にあの後ろにいる奴……誰?』


 そんなこんなで大騒ぎしていると、兵たちが奥から出てきたキングらしき存在に吸収されてしまう。そして城を破壊して遂に三人の目の前にやって来た。


スーパーキング:伝説のぉ……。超キング人だどぉ!勝てる訳がないヨォ!』


「相変わらず誰が書いてるんだろうな、この文章……」


「オイ面倒だから撃つか?」


「一撃でやれるか?」


「任せな。コイツ含めて遂に俺は次のレベルに達したんだからよ……!三重詠唱トリオ……『炎魔法フレア』!」


 やたらとデカくなったキングだったが、時の炎魔法の前にドロドロに溶けて燃え尽きてしまった。こりゃとんでもない強さである。更にコレでも魔力切れには一切ならない。


「フゥ……。じゃー帰ろうぜ」


「そうじゃな」


『待てよまだ十分も経ってねぇよ』『なんだこれは……たまげたなぁ……』『どうなってんだよコレ』


 こうしてボスをけちょんけちょんにブチのめした一行は何事もなかったかのように新幹線に戻る。案外簡単に元に戻った地面。

 新幹線は何事もなかったように運転再開し始める。碑矩はこれにやっぱり異常だよなぁと思った。


「……やっぱり、こういうのって異常なんですかね」


「ダンジョンが出る事か?」


「……はい。だれが何の目的なのか……は、この際一旦無視するとして」


「無視していいのかソレ」


「正直、考えるだけ無駄だと思います。そもそも誰が作ってるかさえ分かっていないんですし」


「それもそうじゃのぉ……。せめて誰がこんなもん作ったのかとか分かれば、まだわかりやすいんじゃが」


「ところで聞くけど、コンは今何してんだ?多分あの骸って野郎に修行付けられてるのは分かるけどよ」


「今?確か……。どうしてるんだろ」


 ◇


「で?自分にない物を埋めるために銃を頼んだってマジ?」


「……。あぁ。もちろんナインテイルズはこれからも強くしていくけど……。それはそれとして近寄られると少しヤバいと言う問題がある」


「まぁ俺チャンは別に構いやしないけどねぇ。でも銃なんていきなり使って大丈夫~?」


「……そこは、頑張る」


 コンと骸は相変わらず修行を行っていた。現在では一つの手に人を乗せて運ぶ事が出来るようにまでなっていた。これでだいぶ出来る事が変わっていく。


「と言う訳で結構動けるようになったな」


「なるほどね!それいいんじゃな~い?で銃は?」


「……」


 しつこく聞いてくる骸に一回ぶん殴ってやろうかと思ったが、手を出してどうにかなる相手ではない。まぁ仕方ないので一旦無視してタマの元へ。


「お兄様!今日もお疲れ様です!」


「あぁ」


「最近は子猫さんと遊んだりしてます!」


「そうか。……よかったな」


「はい!」


 タマをモチモチしながらメシでも作るかと思っていると、レインに着信。何事だとメッセージを読むと、もうすぐ着くからと言う物だった。


「そうか。……それにしても骸!」


「んぇ?」


「東京にあるダンジョンは本当にあそこで最後なんだよな?」


「あぁ。今度全員で殴り込みイクゾーッ!!!!」


「うるせぇ!」


 そんなこと言ってると子猫も帰ってきた。モフモフと子猫に抱き着くタマ。隣には虹の姿があった。


「……どちらさん?」


「俺虹十一!はいヨロシク!」


「……そう」


 そして碑矩らも骸の神社に合流。


「よーし……。これだけいればアレが出来るな!」


「アレ?」


「そりゃお前……アレよ!」


 そんな訳で翌日。一行は何故かボウリング場へとやってきていたのであった……。

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