第13話:意識なし、慈悲なし、殺意あり。もう殺すしかなくなっちゃったよ~『弟子!?』


「はい俺チャンの勝ち~ッ!」


「……!」


 骸、勝利。


 ◇


「と言う訳で~っ、俺チャンのおかげで!コイツを倒せたんだから感謝しろよ」


「……まぁそこは感謝してやる。どうやって倒したんだ?」


「不死だしゴリ押しで攻略。累計千二百五十七回は死んだね」


「……」


 色々と聞きたいことはあったが、碑矩が無事ならそれでヨシ!と切り替えてベッドに寝かせる師匠。そして入れ替わるように目が覚めた兄。


「お兄様!」


「あ……。俺は……」


「お主、名前は?」


「……『コン』。それが俺の名前だ」


 そう言うとコンは近寄ってくるタマをなでる。


「それで……。俺は負けたのか」


「あぁ。まぁ本気碑矩に勝てるとすればワシくらいの物じゃから仕方あるまい。……で、いったいお主何者じゃ?」


 師匠がそう質問すると、コンは一瞬目を伏せ覚悟を決めた様子で自分が何者なのかを説明する。


「俺は……。モンスターと人間のハーフだ」


「モンスターと?とんだ変態がおるんじゃなぁ……」


「違う、実験材料みたいなものさ。……ロクでもない、控えめに言ってマトモじゃない奴らの元で……生まれたんだ」


 話を聞くに、どうやらこのコンと言う少年はある会社の男がモンスターとの交配実験の末に生まれた存在らしく、彼は人の見た目でありながらモンスターのような能力と力を、タマは見た目だけモンスターみたいな尻尾と耳持ち生まれてきたのだ。


「……なんと言うか、だいぶお主……暗い過去じゃな?」


「……いえ、俺はまだマシな方です。まだ見た目が人に似てるから……。でも、妹は違う。……この耳と尻尾じゃ、……迫害されてしまう」


「おっそうだな。お前もそう思うよなぁイチ」


「……ん?今俺バカにされてんな?」


 狐耳どころかほとんどケモ度が同じようなイチ。だからシンパシーを感じたのかと、納得したようでタマに話しかける。


「あー……。俺もコイツと出会うまではコレを着て耳と尻尾をごまかしてたからよ。使えばいいさ」


 そう言ってパーカーを着せるイチ。それだけで誰もがケモ耳と認識できなくなる。


「まぁ……困ったらよ、最大限何とかしてやる」


「……。なぜですか?」


「俺が仕えている神は狐神様だからな。同じ神様として……何もしないわけにはいかんだろ」


「経費は自腹な」


「うるせぇお前にツケるに決まってんだろコラ」


 そうこうしていると全力て走って来たらしい子猫が、息を切らしながら碑矩に駆け寄る。


「ちょ、ウチのいない間に何があったの!?」


「……。碑矩が本気を出しおったんじゃよ」


「本気出してなんでボロボロになるの!?」


「……。わからん。ワシもこ奴の本気を見るのは二回目じゃからな……。相変わらず化け物のような強さだがな」


 一回目の本気は師匠と碑矩が出会って少し経った時の事。

 山なので野生動物が普通にいるのだが、その日は師匠がいないのにクマに出会ってしまった。まだ五歳の碑矩がである。普通なら殺されるだけだろうが……


『……。なんじゃこれは』


 彼は、化け物だった。


「え?じゃあクマをその……殺すどころか山にいたほとんどの野生動物虐殺しちゃったって訳?」


「あぁ。ワシは目を疑った。あ奴の体に大量の返り血が付いているのを見た時、ワシはソレを碑矩だと思う事は出来んかった。化け物が目の前にいると思い……ワシは本気で奴と殺しあった」


 結局何とか師匠が勝利したのだが、お互い割とボロボロになっていた。


「……それ以降、ワシは一度もこ奴が本気になるところを見ていない。本気を出すとどうなるか知っておるからじゃ」


「……じゃあ、使ったって事は……」


「あぁ。このコンと言う少年がそれほどの強さをしていたと言う事じゃよ」


 まぁそれはそうと、スカイツリーダンジョンが完全に機能停止していることを知った骸はじゃあアレはどこ情報だったん?と調べ始める。


「いやスマン。俺チャンミスったっぽい」


「四つあると言っておったな?残り二つはどこじゃ?」


「チョーっと待ってね。俺チャンも流石にボスじゃない奴をボスだって思っちゃうとはなぁ……。トホホのホ」


 数分後、確定した情報を教えてくれる骸。


「この前説明した音楽の奴前は確定、後三つは……。ね。一つ目がえげつねぇところだぞ『渋谷スクランブル交差点』。しかもド真ん中」


「クソ邪魔じゃん……」


「もちろんそれだけじゃねぇ、六本木は『国立新美術館』を貫くように出てきた奴、台場から『お台場海浜公園』の……どっかだ」


「……観光名所ばかり狙ってるのぉ、見事に……」


「そりゃ目立つ所にあった方が入る確率上がるだろ?さて……。ちょいと相談なんだがよ」


「相談?」


 そう言うと骸はマクナを呼び出し地図を取り出した。そこには文字が書かれており、かなり少ない時間が刻まれていた。


「これは?」


「残り時間……とでもいえばいいのか。人が入れば一時は外にモンスターが出てくることはなくなるが、ボスを倒さないと最終的に出てきてしまうのだ。一回やらかして九州地方がエラい事になった」


「……え、全部もうすぐ出てくるじゃん……」


「ハイ!いいところに気が付いてくれたねお嬢チャン!つまりこれから……この四つのダンジョンのうち三つを同時攻略しに行きます」


「……この奏楽堂前の場所はいいのか?」


「そこはぜんぜーん人いないし時間制限も無いの。だからしょうがねぇんだわさ!ともかくこの三つをブチのめしに行くので……。ハイ三グループ作ってー!」


「ワシは一人で構わんが?」


「そんな事言わないでよぉ~?俺チャンと行・こ・う?」


「チッ」


 まぁ仕方ないので、骸と師匠と子猫のパーティーが六本木に。碑矩とコンの二人が渋谷スクランブル交差点に、残ったお台場のがイチ&マクナの二人が行く事となった。


「よし……。では行くぞ!」


「貴様が仕切るな!」


 ◇


 と言う訳で現場にやって来た碑矩とコン。しかしまぁ~空気が悪い。そりゃそうだ、生きていたからいいモノの互いに命を取り合った仲である。

 静寂を切るようにコンが碑矩に質問し始めた。


「あー……。そうだな、碑矩」


「なんだ?」


「……。弟子って募集……してる?」


 そんなことを言い出したコンだが、碑矩は割と前向きに受け取ったようで目を輝かせながらそれに答える。


「もちろん!いつでも歓迎だ!」


「そうか。……俺はもっと強くなりてぇんだ」


「今のアレでも十分強いと思うけど……まぁそれはソレだからね!このダンジョンから出たらしっかり修行するからな!」


 そう言ってダンジョンに入っていく二人。入って早々見知った顔の男が魔導書を片手にモンスターをブチのめしている光景を目撃する。


「時?」


「ん?なんだ碑矩か。今日は師匠と一緒じゃねぇのか?」


「師匠は今別のダンジョンに行ってるんだ。なんでもこのダンジョンを今日中に破壊しないとヤバいんだってさ」


「そりゃやべぇ。じゃあ付き合ってやるか!」


 こうして謎の三人組パーティーが完成してしまった。


「ところでお前誰?」


「あ、どうもコンです」


「ほー。そこそこ出来るッぽいな?まぁ別にいいさ、さて、このダンジョン五階まであるぜ」


「だいぶ深いなこのダンジョン」


「それは構わねぇんだけど……。それ以上に厄介なのが全フロアに強いモンスターが出てくるってとこさ」


 一行が階段まで歩いていると、早速暴走列車に足が生えたような見た目をした強モンスターが現れた。


「あぁいうの?」


「あぁアレみたいな……。ってマジで出やがったな!じゃあぶっ殺してやるよ!」


「待て二人とも。ここは俺にやらせてくれ」


 そう言って前に出るコン。


「『九尾の魂ナインテイルズ』」


 そう言うと九つの手が浮かびあがり、一つにまとまったかと思うとそのモンスターを殴り飛ばした。


「よし、行くぞ」


「……。お前の周り、なんでどいつもこいつも強い奴ばっかり集まるん?」


「さぁ……」


 とは言えこのパーティーであれば大概どうにかなるだろうと言う信頼がある。下の階に下りる前に時がキッチリ強モンスターにトドメを刺したところで、だいぶ魑魅魍魎になっている二階に降り立つのであった……。

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