第9話 勇者パーティへの不信感

その頃、勇者パーティの方では――


王子アレン、王子カイ、そして王女リリスは




以前

命の危険にさらされた

強敵であるゴブリンではなく




もっと弱いスライムを相手に

再び挑むことにした。




そして



勇者パーティは

森の奥でスライム2体と遭遇した。




スライムは一見弱そうに見えたが

その粘液の強力な粘着力と

毒素が3人を苦しめた。






アレンは双剣を振るいながらスライムを切りつけたが

切った部分はすぐに再生し

攻撃はまるで効果がないように感じられた。




カイは風魔法でスライムを吹き飛ばそうとしたが

粘り強いスライムはしつこく食らいつき

逃げ場を奪っていった。




リリスも治癒魔法を使いつつ火球の攻撃を試みたが

スライムの分裂能力により状況はますます悪化した。






次第に体力が奪われ

3人は必死に後退し始めた。




スライムの攻撃を避ける中で何度も転び

服や鎧が粘液にまみれて動きが鈍くなっていく。




最終的に

なんとか全力で逃げ出すことに成功したが

アレン、カイ、リリスの3人は

全員大怪我を負い

疲労困憊の状態で城に戻る羽目となった。







自室に戻ったアレン王子は

高級回復アイテムで怪我を治癒させながら



「我々がモンスター討伐に

成功したことを国民に伝えよ」


と、自分たちがスライムに

勝てなかったにもかかわらず



王国ニュースで自らの勝利を

報じるように指示を出した。



しかし

テレビ局側は


「真実ではありません」


と断った。




この態度に激怒したアレン王子は

自らテレビ局に乗り込んでいった。






アレン王子は


「どういうことだ!

私が勝利したという報道をしろと言ったはずだ!」




番組プロデューサーは


「申し訳ありません、王子


しかし

視聴者には真実を伝える責任があります

嘘の報道はできません」



「貴様、私の命令を拒否するのか?

王族の命令に逆らうなど許されないのだぞ!」



「それでも

視聴者の信頼を裏切ることはできません」



「なんだと!?」



「それに……

王子によって以前

不当に逮捕された人のことを

悪くニュースで報道してしまったことに

みんな罪悪感を抱いているんです!」




アレン王子は怒りに震えながら

プロデューサーを睨みつけた。




「貴様ら全員、牢にぶち込んでやる!」


と叫び

テレビ局内は緊張感に包まれた。




その後

アレン王子は


「お前、覚えていろよ」



とプロデューサーに言い放ち

テレビ局を去った。




怒りが収まらなかったアレンは

プロデューサーとその家族全員を逮捕させ

投獄してしまった。




この出来事により

王子アレンの悪政の噂はますます世の中に広がっていった。




勇者パーティの無力さを目の当たりにし

人々の不信感はさらに深まっていった。




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