第30話 はじめまして
ひょこっと現れたジュレちゃんに驚いていた
あたしと
「この、ジュレちゃんっていう子は、隣国の隠された聖獣なのね?」
「我、領地の繁栄が得意じゃ!!」
自信満々に胸を張るジュレちゃん。お上品にハイスピードで果実を口に運びながら、問いかける
「ジュレちゃんは、元いたところには戻れないのかしら?」
「ふぇ、我、ご主人様と一緒にいたい」
「さすがジュレちゃん! あたしの使い魔! よく言った!」
あたしがジュレちゃんの頭を撫でまわし、褒めていると
「ミシェルちゃんはお黙りなさい?」
「ひぃ!?」
大人しくあたしは果実をかじりながら、成り行きをみている。
「でもね、あなたみたいな聖獣は、普通の家庭で面倒が見られないの」
「我、元いたところに返されると、軍事兵器としてこの国に侵略になることになるかもしれぬ……我、我、ご主人様と戦うことだけは嫌じゃ!! ムサルト殿もこわい!!!」
涙目でふるふると首を振るジュレちゃんは、愛らしい幼子のようで庇護欲がそそられる。
「それは……困ったわね。はぁ、仕方ありません。ミシェルちゃん? ジュレちゃんの面倒をちゃんと見るのよ?」
「よっしゃ! まっかせて! お散歩は、伯爵領の人通りのない森に連れて行くしぃ、ごはんもちゃんとあげるから!!」
ばっちーんとウインクを飛ばすと、あたしはジュレちゃんの手を握った。
「これからも、よろしく!!」
「わ、我、ご主人様の顔面の威力が高すぎて倒れそう……あの者たちの気持ち、理解した」
「あの者たちって……?」
「うむ? ご主人様が倒した、隣国の暗殺組織の者たちじゃ!! なに、問題ない、記憶の改謬もすんでおる! 我々の仕業とはわからぬぞ!!」
ジュレちゃんは、ウサギ肉をかじりながら、満面の笑みで言い放った。
とりま、あたしは上空を飛んでいたドラゴンを魔法で撃ち落とし、ジュレちゃんを喜ばせた。
「ジュレちゃんって、もふもふには戻れないの?」
「ん? 戻れるぞ? ご主人様があの身体を維持するための魔力を、我に分け与えてくれたら」
「いいこと聞いた! あたしの部屋でもっふもっふさせて!!」
そんなあたしを見ているひとりの影が屋敷の中にあるなんて知らずに。
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