第25話 救出隊!

「ミシェルお嬢様! あなたのムサルトが助けに参りました!」


 あたしと手下一匹と三人が買い食いしていると、ムサルトが現れた。


「ムサルト!」


 思わずあたしが声を上げ、ムサルトに抱き着いた。




「誰だ? この男。俺たちのご主人様が抱き着いたぞ?」

「うらやましいっす……」

「……」


「まて、ショック死するな、ムゴン! 黙って死にかけるなんて、心臓に悪いぞ!」

「というか、俺たちが誘拐犯ってバレたんじゃねーか!?」

「やべぇっす!」


 手下たちがなにやら盛り上がっていると、ムサルトの手にぶら下がっていた物体が動いた。


「……死ぬかと思った。あぁ、ミシェル、無事か。それよりも、誘拐犯の皆さんはご無事か!?」


お父様パパ、これ、拾ったの! 持って帰っていい?)


「ミシェル。このあたりなら人が少ない。自由にふるまっていいぞ? ……まさか、約束を守ってちゃんと猫を被っていたのか!? お父様、感動!!」


 外交問題にならない、とか訳のわからないことを言って喜んでいるお父様パパに、あたしはかぶっていた猫を放り投げて、語って聞かせる。


お父様パパ、こいつら拾ったの。家に持って帰って、飼っていい?」


「お父様はいいけど……お母様フライアが何と言うか……」


 よし、もう一押しでいけそう!


「あんたたち、何か自己PRしてみ? あたしの家で雇われたいんっしょ?」




「あれ……俺たちのご主人様の口調がおかしいぞ……俺は幻覚を見ているのか?」

「奇遇っす。俺もみているっす」

「……ショック死するな! ムゴン!!」


⦅我のPRポイントか……何を見せようか迷うの⦆





「さすがミシェルお嬢様。最高です。初見殺しが決まってますね」


 なぜか固まっていた三人組は、意識を失いそうな奴にかかりきりになり、ムサルトはあたしを褒め讃えている。





「ジュレちゃん、行けるっしょ!」


「うむ。ご主人様。我の自己PRを始めるぞ!」








 自信満々に一歩前に進み出た幼女姿のジュレちゃんに、お父様パパは不思議そうに首をかしげる。



「我は、国の繁栄を得意とする。国防の要にもなれるぞ。……ふむ、信じておらぬな? ご主人様、ご主人様の御父上の脳内に我の過去の映像を送ってもよいか?」



「もちもち! とりま、あとでそれのやり方教えてくれる? めちゃくちゃ便利そう!」


 ジュレちゃんの要望を容認し、幼子を見守るかのようにほほ笑んでいるお父様パパを実験体として提供し、三人組のところへ向かう。


「承知した」


 ジュレちゃんは、お父様パパに映像を見せ始めた。ま、お父様パパは丈夫いし、大丈夫っしょ!





「ねぇ、あたしの手下三人組ぃ~」


「は、はい。呼び名はご主人様でいいすか?」


 下っ端くんが真っ先に返答する。


「あんたたち、三人もいてわかりにくいから、あたしが命名してあげる」


「あんたが手下①ね」


「俺が手下①」


「そう、あんた、先輩って呼ばれてたし、わかりやすくていいっしょ? で、あんたが手下②」


「俺が手下②っすね!」


「で、あんたが手下③」


「……」


「自己PRはこの順番で行くから、とりま、やること考えておいて~」



「はい!」

「はいっす!」

「……」(こくり)


 手下三人組が頷いたところで、お父様パパが叫び声をあげた。


(ミシェル! ミシェル!!!!)


(なーにー? お父様パパ。あれ? 普通に話していいんじゃなかったっけ?)


(これが普通に話せる内容か! このかわいい女の子は、隣国……かの大国の聖獣ではないか! しかも、周辺諸国には存在が秘匿とされた!!!)


(うん、そうみたい)


(そうみたいじゃなくって……! しかも、従魔契約済みだと!? 返してらっしゃい!)


(やだ)


(やだじゃなくって!!!!!)


⦅……その、ご主人様の御父上。我はご主人様との契約に満足しておる。今更、元の国に戻されると……⦆


(餌もあたしが準備するからぁ!)


⦅我、ご主人様についていきたいのじゃ。……自分で餌をとるよりも、ご主人様のほうが確実だからのぅ⦆


(……白目)


(ほら、ドラゴン肉! あたしがとるから!!)


 さっき倒したドラゴンを収納魔法で取り出した。食べ過ぎてジュレちゃんがデブっても困るし、とりましまっておいたんだよね。


「ひぃいぃぃ。ドラゴンの幻覚ぅぅぅぅ!」

「やっぱり、幻覚っすか!? 幻覚じゃないっすか!?」

「……」


「死ぬな! ムゴン!!!」






「よっしゃ、次は手下①ね!」

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