第22話 夜会②
あたしの婚約者の座を狙っている王子サマのことだから、二曲続けてとか言ってくるかなぁって思っていたけど、誘われなかった。そうか、王子サマは踊り狂じゃないのか。そこは、あたしと気が合うかもしれない。ダンスの必要性については、あたしも疑問に思っているよ。
「最後、踏まれ……気のせいか。バルコニーにでも行こうか? そのほうが、踊りながらよりも、ずっと、ものすごく、非常に、とてつもなく、話しやすいからね?」
「ありがとうございます」
やっぱ王子サマもイヤイヤ踊ってたんだね。いいよ、話しやすいようにしてくれてありがとう。
(寿命が……縮んだ……)
(
(ははは)
エスコートされてバルコニーに出る。周囲には人もいないし、話しやすそう。道中、王子サマはワインを受け取り、あたしはジュースを頼む。ついでに食事も運んでくれた。王宮の飯、最高なんだよね。
「さてと、黒真珠のイヤリングについて、気にしていたよね? もしかして、ミシェル嬢は黒真珠が気に入ってくれたのかな? 黒真珠は王族しか手に入れられないからね。私の伴侶となってくれたら、いくらでも贈るよ?」
「まぁ」(困った顔)
この王子サマ、物で釣ろうとしてくる。あたしがそんな単純だと思うか?
(お父様は、ミシェルちゃんが、物で釣れるくらい単純だと思うよ? お父様、心配……)
(……ナンニモキコエナイ)
バルコニーのすぐ近くから、
「黒真珠は、本当に王族にしか手に入らないのかという顔だね? そうだよ、黒真珠は王家にすべて献上するように決まっているからね」
なにこの王子サマキモい。一人語りし始めた。
「はは、わたくしの心の声が聞こえるの? って? 聞こえるわけないけど、愛おしい君の考えくらい、顔を見ればわかるよ」
(うざい、きもい、はげろ、吐きそう)
あたしの手を取り、口づけを落とした王子サマ。そう何度も何度も手にキスをするなんて、欲求不満なの? あたしに懸想してる? きもいきもいきもい。
(み、ミシェルちゃぁあん、落ち着いて、大丈夫、それは怖くないよ? 大丈夫、あ、さりげなくふき取るな!?)
そんなことより、、この王子サマが黒真珠を贈った黒幕だとどうやって証明するかな……。
「え!? 黒真珠を贈ったのが母上の事件の黒幕なのかい!? そんなことは知らなかったよ……」
(!? こいつまじで心の声、聞こえている!?)
(もしかして、お父様の心の声も聞こえているの!? まずいぞ……)
(こいつ曰く、「愛おしい君の考えくらいわかるよ」ってことだから、その理論で行くと、
(お父様もそれは嫌だなぁ……って、ミシェル! 心の声が聞こえているかもしれないのに、こいつとか言わない!)
(え、心の声まで制限される!? 言論の自由を求めまーす!!)
「まぁ、冗談はさておき。父上からたぶん概要は聞いているよ。側妃が母上の命を狙ったんだろう? ただ、不明な点が多くて、隣国からの介入があった可能性がある、と。その黒幕探しは継続して行っていく意向だって言っていたよ。よくわからないけど、黒真珠に気をつけろとは言われたな。そこから推察したんだよ」
(紛らわしいことしやがって)
(ミシェルに完全同意)
「私の予想は当たっていたかな? まぁ、私が君に黒真珠のイヤリングを贈ろうと思ったのは、ある方から助言をいただいたからだよ」
(それは)
(誰!?)
あたしと
「第一王子! 一緒に来てもらおう!」
そう言って、ふわふわな生き物に乗った黒ずくめの人間が、手を伸ばしてきた。
(危ない!)
あたしは無意識に手を伸ばし、王子サマを突き飛ばした。あ、ムサルト。そう思って、自分の持っていたジュースを投げ捨て、王子サマのワインを奪い取る。
(ミシェル!?)
「ミシェルちゃん!?」
「ミシェル嬢!?」
やば、あたし、臣下の鏡じゃん! とりま、ワインがこぼれないように魔法を使って……魔法で戻れる気がするけど、このもふもふの生き物が気になるからついていこーっと。ま、なんとでもなるっしょ!
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