第1話 いつもの朝

『おはよう、きょうもかわいいね。』


いつもあなたは、目覚めると私にそう云う。

わたしは、この時間が好き。

ずっとずっと永遠に続いてほしいと思う。


『さて、そろそろ…。』


そして、私のそばから離れあなたは今日の身支度を始める。

毎日とても幸せだ。

いつも楽しそうに笑うあなたの顔を見て声を感じるだけで。

支度を終えた彼が


『それじゃあ、行ってくるね。』


そういい、今日も出かけていく。

一人の時間はさみしい。

早く帰ってこないかな。


わたしは、この部屋の中しか知らない。

外の世界のことなんて何も知らない。


きれいな植物、きれいな石、きれいな水、そしてぷくぷく石…。

おいしいご飯だってわたしにくれる。

何不自由ない生活を送らせてくれている。


でも私は、こんな素敵な生活よりも欲しいものがある。

人間の姿と声が欲しい。

彼に毎朝『おはよう。』や『いってらっしゃい』と私も言いたい。

私の思いを彼に伝えたい。


叶うはずのない望みがどんどん膨らんで苦しくなる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る