異世界に飛行機と原稿用紙はありますか?〜作家の道〜
沼津平成
序・異世界転生
「——繰り返します。当機はホノルル行き、二〇三八便……」
また自動音声が流れた。一体いつになったら羽田空港を発つのだろう。
壮一は深くため息をついた。自動音声が切り替わる。安っぽい効果音をバックに、「間も無く、離陸いたします。シートベルトをおつけください」と命令される。こっちは待ってやってんだぞ、少しは言葉遣いを慎め、なんて到底いえないが。
もともと今回の旅ってどんな経緯だったっけな。
上昇し始めた飛行機は、最初は怖いが、徐々にゆったりと落ち着いてきた。
壮一は、女子高生がイヤホンをつけたのを見ると、思い出し始める。鞄から日記を取り出し、思い出し切ると、日記を閉じて、膝の上に置いた。
時々、「ああ、俺何やってんだろ……」と働く人たちを見てため息をつく。気分転換を編集者に促されて、もともと旅好きだった壮一の血が騒いだ。よっしゃ、旅してやるぞ!
ウィンドウズをとりだして、青色に塗られているあるアプリをクリック。「よっしゃ、執筆始めるぞ」Wordだ。形式はたしか40字40行だったな——。壮一はレイアウト欄から「余白」を開いた。
*
コックピットの中だった。
「あれ、風が強いぞ……」
機長が顔を歪めた。
副機長が振り向いた。「大丈夫なんですか……?」
「ああ、大丈夫だろう」
機長は気にしていないというふうに振る舞い始めた。しかし、副機長は、自分でも犯さないはずの小さなミスを機長が数発犯すのを見ていた。
(明らかに、動揺しているな……)
そして副機長はあることに気づいた。
*
機体が急に右に傾いたのを感じた。2048便の進路が右に流され始めたときづいたのは、壮一がショートのプロットを書き出し終えて、執筆に取り組み始めて、順調に進んでいた、まさにそのときだった。
「おい、不時着するぞ!」と壮一は叫んだ。後ろの女子高生が悲鳴をあげた。
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