彼女にフラれ病んだ俺に迫ってくるヤンデレたち

コーテイ

第1話 

「もうどうでもいいか……」


学校の屋上から下を見下ろすとイチャつくリア充どもが目に止まる


「アイツらはこれからも楽しいんだろうなぁ…」


俺こと桜井さくらい凛太郎りんたろうはついさっきまでは彼女がいた

1ヶ月前俺はずっと片想いしていたクラスメイトに告白した

結果はOKそれからは毎日彼女のことを考えていた

体の関係こそ無かったが一緒にデートもしたし、毎日寝る前に電話もしていた

しかしさっき彼女に屋上に呼び出され、別れを告げられた

俺が理解する前に彼女は逃げるように屋上から去っていった


「ホントに俺の何がダメだったんだろうなぁ、あんなに彼女を一番に考えてたはずなんだけどな」


そう口にする俺はフェンスに手をかけ、フェンスを登り始める


「でももうどうでも良いよなこれから死ぬんだから」


俺の精神は完全にイカれていた

もう人に裏切られるのはごめんだ

死んで楽になりたい

中学のころのトラウマが蘇ってくる

周りから向けられる軽蔑の目

ぶつけられる罵詈雑言

地獄のような毎日が昨日のことのように鮮明に脳内に写される


「良い眺めだな」


もう俺の目の前にフェンスは無い

あとは前に倒れればこのクソみたいな世界からおさらばだ


「キミ、自殺するの?」


誰もいないと思っていた後ろから声がした

でも俺はもう死ぬ、関係ない

無視して目を瞑り覚悟を決める


「無視するの?ねぇ」


随分うるさい奴だな

死ぬ前に一言言ってやろう


そう思い振り向くとそこには少し不気味な笑みを浮かべた小柄な女子生徒がポニーテールをなびかせながら立っていた


「やっと見てくれた」


彼女はそう言うやいなや俺の体に抱きつきフェンスから引き剥がした


「いきなりなんだ、離してくれ」

「やぁだ」

「そもそも誰だ?」

「キミの先輩だよ」


小柄な容姿や幼さの残る声からてっきり後輩だと思い込んでいたがどうやら先輩らしい

俺はクラブや委員会には入っていないので先輩や後輩といった人種と関わることはゼロに等しいので分からなかった


「····変な先輩ですね」

「初対面で変な先輩とは失礼じゃない?」

「····人が死のうとしているのに笑顔なのは充分変ですよ」

「ごめんごめんあまりに非現実的すぎてね、勘違いしないでねキミが嫌いとかそういうのじゃないんだ」


先輩は全く悪びれることなくあっけらかんとそう答えた


「理解できません」

「キミなら分かると思うけどね?」


笑顔のままじっと俺の目を見つめてくる先輩の瞳には妖しい炎がゆらめいていた


「話を戻すけどなんで死のうとしてたんだい?お姉さんに話してみなさい」


先輩は無い胸を張りそう聞いてくる


「····先輩には関係ないですよ」

「なら無理矢理は聞かないよ、ただ私は絶対にキミが死ぬことを許すつもりはないからね」


先輩はさっきまでの笑顔と売って変わって無表情のまま詰めてくる


「もしそれでも死ぬと言ったら?」

「どうしても死にたいなら私がキミを殺しちゃおうかな、でもまさかそんなこと言わないよね?」


いつの間にか俺の首へと伸ばされた先輩の腕を見ればそれが本気かどうかぐらい容易に理解することができた

俺が恐怖のあまり一言も発せられないでいると先輩が首から手を下ろし、口を開いた


「キミは死のうとしたのに死ぬのが怖いんだね」

「ッ!」

「それが正しい感情だよ、その感情を忘れないようにね」


そう言う先輩の表情は最初の少し不気味さのある笑顔とはまた違う明るい笑顔に変わっていた


「····すみませんでした」

「気にしなくて良いよ後輩は先輩に迷惑をかけるものだし先輩もそういう後輩が可愛いんだよ」

「あの、名前を聞いても?」

西条さいじょう優理花ゆりか、キミは?」

「桜井凛太郎です」

「これからよろしくね凛太郎くん」

「····よろしくお願いします」


俺の一度止まった青春の歯車はまた動き出そうとしていた

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