転校生の社長令嬢な美少女が、専属執事になった俺に対して、夜な夜なエッチな姿を見せてくるんだが⁉
譲羽唯月
第1話 平凡な人生を歩まされていた俺の人生は――
「私ね、本当は変態なの♡」
「え⁉ こ、こんなところで⁉」
「いいじゃない。誰も見てないんだし」
ベッドにいる彼女は四つん這いになって、黒色のテールコートを身に纏っている大和の近くまで歩み寄ってくる。
「そ、それはさすがに……」
大和は金髪な女の子と二人きりで寝室のベッドにいる。
しかも、その子はピンク色の下着が見えるほど透き通ったキャミソールを身につけているのだ。
状況によってはほぼ全裸に近い。
ベッドで腰を抜かしている大和は、この現状に困惑し、これからどうなるのか想像するだけでも心臓の高鳴りが収まる事はなかったのだ。
特に当たり障りのない日々。それが高校に入学した時から続いているのだ。
けれど、何もしなければ、その平行線的な日常が永遠に続くだけなのである。
どこかで、この生活に一線を入れなければいけないのだ。
「今日の太陽は熱いな」
「そうかな? というか、今はまだ五月だけどな。そこまで暑くはないと思うけど」
「いや、今日は何かが違う。何かありそうな気がするよ、兄さん」
「……まあ、今の生活が少しでも良くなればいいとは思ってはいるけどね」
大和は実妹の
妹はさっきから意味不明な発言ばかりしているのだが、いわゆる中二病的な感じなのだ。
萌花は丁度、中学二年生で、学校での人間関係から消極的になり、深夜アニメにハマるようになったのである。
「わらわは、下界に行ってくるぞ」
妹がその場に立ち上がると、ツインテールの髪が揺れ動いていたのだ。
「え? ああ、学校の事か」
「そうぞ」
萌花はすでに制服へと着替えており、食器を片付けた後、礼儀正しく行ってくると告げると自宅アパートから出て行く。
パッと見はしっかりとしているが、どこか変なのである。
でも、昔は普通だった。
中学という時期は色々なことがあるのだ。
人間関係や、色々な悩みが――
そんな中二病な妹ではあるものの、大和は妹が言わんとしている事は何となく察しているのだ。
「というか、そろそろ、何かバイトでも見つけないとな」
大和は家庭の事情により、母方の親戚近くのアパートを借りて住んでいる。
大和はドッと肩に疲れを感じながらも、朝食を取り終えると食器を洗い、制服に着替えた後、高校に向かう事にしたのだ。
「えっとだな。今から朝のHRに入るんだけど。今日は何と転校生がいるんだ」
女性の担任教師が教室の壇上前で辺りを見渡しながら言う。
すると、教室が騒がしくなっていく。
待ってましたという人も入れば。
転校生が来るっていう噂は本当だったのかという人もいた。
大方、男性か、女性か。そのどちらかを話の中心に置いて会話する人が多かったのである。
「では、丁度いいし、そろそろ入って来なさい」
そして、教室前の扉が開かれる。
そこから姿を現したのは、金髪ロングヘアな女子生徒だった。
クラスメイトらの顔つきが徐々に変わっていく。
皆が転校生を見る目も次第に変化していくのだ。
「転校生の
その転校生はまだ新しい制服を持っていないためか、以前通っていたであろう高校の制服を身につけていた。
「あの制服って、結構お金持ちが通ってる学園じゃなかった?」
「あ、本当だ」
「じゃあ、社長の娘とか?」
「それもあるかもね」
教室内が騒めき始めていた。
そんな中、壇上前に佇んでいる茉莉衣と大和の視線が一瞬だけ重なったのである。
朝のHRが終わった瞬間から、彼女の席の周りには多くの人が集まっていたのだ。
転校初日から、大企業の家元というだけで人気であった。
そんな彼女を大和は遠くから見ていたのである。
多分、あの子とは関わる機会なんてないんだろうな……。
大和が平凡なのは確かなのだが、そこまで裕福な家庭ではない。
お金がまったくないわけではないものの、外食する機会は昔ほどなくなっていたのだ。
それから何となく時は進んで午前の授業が終わり、大和はお昼を迎える事になったのである。
教室を後にした大和は購買部でパンを購入し、自販機で飲み物を購入して校舎の裏庭へと向かう。
あまり人のいない環境こそが、大和にとって過ごしやすい環境なのだ。
「ここにいらしたんですね」
大和がベンチに座り、パンを食べようとした瞬間だった――
「え?」
ハッとして、声する方へ顔を向けた。
「すいません、急に話しかけてしまって」
「え、別にいいんだけど……あれ? 白鳥さん?」
そこには礼儀正しく佇む社長令嬢である茉莉衣が佇んでいたのだ。
「はい。今から暇でしたら、少しでもいいのでは会話しませんか?」
「え、俺なんかと?」
「そんな事は言わないでください。昔、あなたは私が困っている時、助けてくれた恩人ではないですか」
「恩人? 俺が?」
「二年ほど前、この街で」
「……え? そんなことあったっけ?」
「はい、あったんです。覚えておられないんですか?」
「ごめん、さすがにずっと前の事は。自分がやった事はなかなか思い出せないんだよね」
「でも、お礼をさせてください。あの時は、どうしても時間がないという事でしたので。ここで出会えたのも何かの縁だと思いますので」
茉莉衣から何度も頭を下げられていた。
「まあ、そういう事なら、わかったよ」
大和の方から折れる事となったのだ。
「では、私にできる事なら何でも言ってくれれば」
「じゃあ……バイト先かな。今、バイト先を探してるんだけど。全然見つからなくて。高校生って理由で断られたりとかで」
「バイト先? でしたら、良い場所がありますよ」
「え? 本当?」
大和は彼女の言葉にホッとした。
「白鳥さん! こんなところにいたのー、私たちと一緒に昼食を食べよ!」
裏庭までやって来た数人のクラスメイト。
茉莉衣は彼女らに誘われていたのだ。
「どうしましょうか」
「いいよ。その話は後でもいいから。あの人らと一緒に食事をとればいいと思うよ」
「ですが……はッ、そうですね、これを上げます」
「封筒?」
「はい。その中には、あなたにとって大切な情報が入っておりますので。では、失礼しますね」
そう言って、彼女は丁寧に頭を下げ、立ち去って行ったのである。
「なんだろ、これ」
封筒の中身を確認してみると、それは一枚の名刺のようなカードが入っており、それは住所が記されてあったのだ。
「この場所に行けば、バイトが出来るってことなのかな?」
大和は詳しくはわからなかったのだが、後でその住所のところに行ってみようと思った。
その昼休み時間は、一人で昼食をとるのだった。
普段から一人で過ごしていることが多いものの、ようやく新しいバイト先が見つかったと思い、気分だけは明るくいられたのである。
「ここかな……というか、ここって凄い大きなお屋敷だな」
バスで二〇分ほどかけて、名刺に記されてあった住所のところまでやってきていた。
日本なのに、この場所だけ海外のような雰囲気を漂わせており、敷地内の扉からして高級感あふれる印象を感じられたのだ。
「……どちら様でしょうか」
「え⁉」
感心しながら門のところに佇んでいると、扉の内側にいた人から声をかけられる。
「えっと、俺は……怪しい者では」
「もしや、今日ここに来られる方ですか?」
「え、あ、はい」
「そうですか。では、今から開けますから、少し下がってくれますか」
扉の方から、そう言った声をかけられた。
次第に、大きな扉がゆっくりと音を立てて開かれる。
「では、こちらにどうぞ」
「ありがとございます」
出迎えてくれたのは、メイド服を身につけた綺麗な女性だった。
普段から手入れされているセミロングヘアであり、落ち着いた話し方をする女の子だ。
「どうなされたんですか?」
「い、いいえ、なんでも」
「そうですか。一先ず今から案内致します。こちらに来てください」
大和は、その女性と一緒に屋敷がある方へ向かって歩き出す。
そんな中、背後の扉が閉まる音が聞こえたのであった。
転校生の社長令嬢な美少女が、専属執事になった俺に対して、夜な夜なエッチな姿を見せてくるんだが⁉ 譲羽唯月 @UitukiSiranui
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