文殻

一閃

第1話

小箱に文殻ぽつんとひとり

インクも薄く消えかけて ひとりの時を思いしる

懐かしい文字 よみがえる口癖に ふたりの時に想いをはせる

「文豪たちの恋文に触発された」

笑いながら 手渡してくれた手紙

「ごめんね ひとりぼっちにして」

思い出なんて優しい言葉ではごまかしきれない 愛しさがこみあげ 文殻を抱きしめる

夕焼け空に ぽつりと名前を声にしたら 淋しく響いて 消えていった

互いが互いを想いやり 現在いまがあるのなら それも 又 宿命なのかもしれない


文殻 ぽつんと ひとりぼっち

私も ぽつんと ひとりぼっち

空に ぽつんと 宵の明星

あの頃 幼い夢を 流れ星に祈ってみたよね

叶わぬ夢は 甘い残り香のように

叶わぬ想いは 白い淡雪のように

いつの間にか 消えていったけど

消しきれないものも 確かにある

だから こうして 幾度いくたびも泣くのでしょう


捨てられずにいる 文殻のインクのように 薄れゆく時を待っている

抱きしめた文殻が「カサッ」と泣いた

「それでいいんだよ」と言うかのように

「そうだね」

文殻を小箱に戻し 移ろいいく空の下 また ひとりに戻るだけ

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文殻 一閃 @tdngai1

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