第8話 令和の時代から届く文
あのね
驚かないで聞いてほしいんだけど
うちのお母さんは
ゲームのシナリオライターなの
あっ、ゲームって言ってもわからないか
なんて言ったらわかるんだろう……
あっ、そうだ!
物語を……物語を作っているの
それで……
ごめんね……こんなことを言って
混乱させるかもしれないけど
緊急事態だからどうか聞いて欲しい
翡翠たちの世界をお母さんが作ったの
あなたたちの世界は愛にあふれていて
幸せがいっぱいになるはずだったの
だけど……
うちのお母さん……
去年から心の病気にかかっちゃって
人が変わったような作品ばかり
作るようになっちゃってしまって……
翡翠たちが平穏に暮らせていたはずの
温かな世界から
心の闇に包まれちゃったというか……
おか……さんの……
……れで……なの……
今は物語の世界から離れて
お母さんはゆっくり休んでいるんだけど
大変なことに……
物語がひとり歩きしてしまったの!!
わたしはそれを食い止め……
翡翠……おねが……しんげ……そ……にで……いで……
−−−−−−−−−
ところどころ文字がにじんで読めない場所があった。
あれは、冷たい雨の降る日のことだった。
あの日、突然送られてきた陽葵からの文はいつものものと違ってとても切羽詰まった文字でいっぱいになっていて、内容のほとんどの意味が全くわからなかったけど、すぐに悟ることになった。
わたしたちのいる平安の世は、陽葵のお母さんによる作り物で、なおかつ穏やかだった世界は恐ろしい闇の世界に書き換えられてしまったのだと。
月の出ない夜には、見たこともない不気味な妖鬼たちが街を襲うのだと。
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