ALIVE

一閃

第1話

「人生の目標って何かありますか?」

メガネの奥の目は暗く 無表情な女性に問われた

「そんなものがあったら ここにはいません」

ボクも無表情で答えた

「困りましたね」

女性は薄笑いを浮かべた

「困ってませんよ とりあえず生きてみます」

机の向こうの女性に言った

「困った答えですね」

繰り返し言った

「だから 困っていません」

ただの机じゃない 境界線

デットラインの向こうの世界に宣戦布告した

「アナタが目の前の書類に記入できなくて困っているだけで ボクは困っていません」

「とりあえず生きてみないと目標とやらにも出会えないじゃないですか」

ボクはまくしたてた


ボクは気がついてしまったんだ

有資格者のアナタに道をたずねても 委ねても どうにもならないことを

ボクはレールの上をひた走るアナタとは違う

これからのボクは自分の足で歩き ボクの目で見て ボクの思考で道を選べるんだ

進むか戻るしかできず 自分ではレールを変えることができないアナタとは違う

寄り道もできるし 迷うこともできる

見えない何かと闘いながら 傷つきながら 誰かを愛しながら 泣きながら 笑いながら

生きていければいいと思っている

それがわからないアナタとはが違うだけで 生きるに正解も間違いもないと思っている 罰せられるべきは『人を傷つける犯罪あやまち』だと思っている


とりあえず生きてみて 何かボクの中に残ったら 儲けものだし 何も残らなかったら そんなもんだと消えて逝くだけ 勝ち負けでもない ボクはボクをまっとうするだけ


とりあえず生きろ! ボクはボクにエールを送る

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ALIVE 一閃 @tdngai1

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