着飾る恋は必要ないらしい

橋本衣

第1話 もう1人の僕



美愛みあ〜、カラオケでも行かね〜?」


「ぇ、ぁ〜、ごめん。はる、今日用事あるわ。また、今度誘って!」


「オッケー〜!じゃ、また、明日〜」


「また、明日〜笑」


そう言って僕は友人達と別れて、急足で家に帰った。僕の名前は天咲美愛あまざきみあ。高校1年生になったばかりの普通の高校生だ。身長は低めだし、童顔で中学生に間違われる事も多い。髪の毛は、長めでセミロングの長さで常に1つ結びをしている。勉強だって全部得意って訳ではない、運動神経は良い方である。マスクを普段から付けているのはある事情がある。女っぽい名前がコンプレックスだし、女顔とか良く揶揄われたりもした。

好きな事、趣味は料理や裁縫、アクセサリー作りだったりする。だが、僕は誰にも友人達に言ったことない秘密がある。


ガチャ


「ただいま〜」


気付けば、僕は家に帰っておりリビングに向かうと机には、一枚の紙が置いてあった。その紙を確認すると、


「『美愛へ、ちょと、買い物に行ってきます。夕飯を作って置いてください。母より』、、、、買い物って、良い服でもあったのかな〜」


そう書かれており、僕は2階に上がってリュックを置いて、マスクを外し、オーバーサイズのパーカーとズボンに着替えた。


「作ったら、すぐに配信するか。新作の服と、あとアクセ使って」


言いながら、昨日届いたばかりの段ボールに手を置いたあと、僕は1階に降りて、洗面所に行って手を洗い、無駄に広いキッチンに向かった。


「ひき肉と玉ねぎ、ぁ、卵明日までじゃん、、、、よし、ハンバーグだな」


そう呟きながら、僕はお米を4合分取り、お米を研ぐ。お米を炊飯器に入れてスイッチを入れたら、冷蔵庫にゆっくりと歩きながら向かう。


「兄さんは大学の友達と食べるって朝言ってたから、姉さん達2人と母さんと父さんの5人分作るんだよな」


そう言いながら、冷蔵庫からひき肉や卵、ケチャップ、牛乳野菜室から玉ねぎとえのき、パン粉を取り出した。


「よし、まな板こっち使うか」


野菜専用のまな板を手に取って、玉ねぎの皮を剥いて水にさらした後、2玉分を微塵切りにして、皿に移す。そして、えのきの下部分を取ったら、残りを微塵切りにして、玉ねぎと同じ皿に移す。


「ぁ、ボール用意しとかなきゃ」


棚からボールを出しながら、調味料も手に取り、置いた後に牛豚のひき肉をボールに入れる。


「玉ねぎとえのき、少しだけ炒めるか」


フライパンを手に取り油を引いて、中火をつけて、温まったら玉ねぎとえのきを入れる。


ジュッ〜 ジュッッ〜


ヘラを使って全体的に炒める、玉ねぎが狐色になったら、火を消してボールに入れる。入れたら、フライパンやヘラを洗って、パン粉に牛乳を入れて浸して、卵と一緒にボールに入れたら、塩胡椒とケチャップ、ナツメグも適量入れる。

入れたら、全体に混ざる様に混ぜこねる。全体的に混ぜ終わったら、トレーに5人分、10個、丸く整えたのを置いてラップをかけて冷蔵庫に入れた。


「次は、味噌汁にするか。確か、豆腐がめっちゃあるんだよね〜。後、ポテサラにすれば良い感じだよね〜」

「ぁ、莉桜姉さん。冷奴好きって言ってたし、姉さんのだけポテサラじゃなくて冷奴にするか」


何て、独り言を言いながら、冷蔵庫から豆腐と厚揚げ、ワカメと味噌、しめじと蒟蒻を取り出して、お鍋をコンロに置いた後、まな板を置いて、豆腐と厚揚げ、しめじを切った後、鍋に水を入れたら、だしの素を入れて火をかけたら、豆腐などの材料を入れて、沸騰して来たら、火を止めて味噌を溶け入れる。入れたら、再び火をかけて一煮立ちすれば完成。


「よし、後はポテサラだけか〜。てか、今何時だったけ?」


菜箸やスプーンなどを洗っていると、時間が気になり、時計に目をやると、短い針が5時に差し掛かろうとしていた。僕は急いで冷蔵庫からじゃがいもときゅうり、マヨネーズにマスタード。後、玉ねぎと厚切りベーコンを取り出した。


「今日はちょと多めにするか」


そう言いながら、野菜専用のまな板を置き、きゅうりを輪切りにし、塩揉みをした後、皿に入れ、じゃがいもの皮を剥いて、1cm角に切ってボールに移し水を少量入れて、ラップをかけてレンジへと温まる。

温めている間に玉ねぎを切って、フライパンに入れる。厚切りベーコンも切って入れたら、炒める。良い感じに炒めたら、火を止めて、少し放置。

温め終わったじゃがいもを取り出して、潰したら、きゅうりと玉ねぎ、ベーコンをボールに入れる。マスタード少量、マヨネーズを多めに入れ、お酢を入れたらヘラで良く混ぜる。途中、塩胡椒を入れて味を整えたら完成。


「よし、これで終わり!帰ってくる前に、ハンバーグを焼いて、冷奴作れば良いよね〜」


何て言いながら、手を洗った後駆け足で2階に上がった。

僕が誰にも、友人達に言えない秘密は、今からおこなわれる。

上がってすぐに、髪を下ろして、編み込みツインテールをして、ミニテーブルや周りに撮影機材などを置いて、ミニソファに座る前に、足元に先ほどの段ボールを置く。

準備が出来たら、撮影兼配信用のスマホを三脚スタンドに置いたら、準備完了。好きなブランドの化粧品で下地を塗ってファンデとチークを入れて、リップを塗って、アイシャドウをして、配信ボタンを押そうとしたら普段使っているスマホに着信が来た。スマホを見ると母さんから『7時には帰ります。他の3人もそれぐらいには帰るそうです』と、来ていた。僕は確認して『OK』と返信をして、スマホを閉じ配信ボタンを押した。


「おっ、もう視聴者が千人も来た。事前に告知してたのが良かったかな〜」


事前、昨日段ボールが届いた後すぐにスマホでライブ配信の告知をしたのだ。


「はい、では、もう1万人だし、良いよね」

「こんにちは!いつも来てくれる皆んなも、初見さんもこんにちは!僕は美咲みさき!今日は、【エンジェルデビル】の新作の服を着てみようと思います!着てみたら、他の服とコーデを組んだりしまーす!」


そう一言一句噛まずに言う。そう、僕は動画投稿者である。4年前に動画を投稿始めてから、月1で動画配信を行うのだ。主な動画投稿は自分で作ったアクセサリーの紹介や作っている工程、あとは料理動画とやってみた、挑戦してみた系の動画をあげている。

そして動画配信では月1で出る新作の大好きなブランドを紹介するのを配信している。美咲みさきと言うのは、名前から取っただけの何の変哲もない名前だ。動画や配信ではいつも女の子の格好をしているが、性別を公表して居ない。視聴者達は主に女性が多いから、友人達の前では普通にマスクを外したりするけど、学校とかではマスクを付けてる事が多い。

僕は、昔から女の子に間違われてきて、それが嫌だった。だけど、今何でこれを武器にしているかは、後程言う事にしよう。


僕の好きなブランド【エンジェルデビル】は2つの派党があり、天使の羽か輪っかの刺繍があり、白色が基調のエンジェル派党、悪魔の羽とツノ、尻尾の刺繍があり、黒色が基調のデビル派党がある。僕は、所謂エンジェル派党である。なので、エンジェル派党の服が殆どだ。エンジェルデビルが創業してから、毎月買っているので、ヘビーユーザーだと自負している。


「では、今回の新作を開封していきましょう!」


そう言いながら、足元の段ボールを持ち上げて、テーブルに置く。段ボールにはエンジェルの羽と輪っかが印刷されている。

段ボールをカッターで開けて、中身を取り出す。中にはパーカーやワンピース、スカートが入っていた。


「では、中を開けてみましょう!」


綺麗に開けて、まずはパーカーを大きく見える様に広げる。


「胸元に天使の羽と輪っかの刺繍があり、袖口や裾は薄水色。刺繍は黄色で他は白色で、オーバーサイズでゆったりと着れそうって言う僕の初見のイメージ!後で、このパーカーに合ったコーデを組んでいくね」

「次は〜」


次に出したのはワンピース。


「袖口と胸元から下がチェック柄で他は無地で色はベージュで、これも胸元に天使の羽と輪っかの刺繍が施されており、ワンピースの長さは足首が見えるぐらい長さだね〜」

「そして、最後は!」


そう大きな声を出しながら出したのはスカート。


「フレアスカートだね。ウエスト部分に刺繍が施されてて、色は白っていうより薄いピンクって感じ。落ち着いた色味で結構好きだな、僕は。これで、最後なので、今から僕がこの3つに合うコーデを組んでいきます!」


そう言って、スマホの画面を暗くする。と、言っても配信を辞めた訳ではなく、色々裏側が映ったりしない様にって事で、何て思いながら、大きなクローゼットから、ロングスカートとショートパンツ、カーディガンや小物、ボトムスと薄くチェク柄のシャツを取り出した。

取り出したら、すぐにパーカーとズボンを脱いで、先ほどのパーカーとショートパンツに着替える。それと、これに合うエンジェルのヘアピンを付ければ完成、僕はテーブルを動かし、スマホを付けた三脚を移動させてカメラの明かりを付けた。

付けてすぐに、


「はい!このパーカーに合う服として、このショートパンツは半年前に出た服で夏だったり秋に使いやすい感じで色味も合うと思う!もう1つのコーデは!」


と、言いながら画面から出て、ロングスカートに履き替えて、ヘアピンから帽子を着用してカメラの前に戻る。


「このロングスカートは1年前に出たので、履き心地も良いし、このパーカーと合うと思う。この帽子もこの格好なら似合うんじゃないかなって思って見繕いました!次はワンピースです!」


再び画面から出て、ワンピースに着替えてカーディガンを着用、ツインテールを結んでいる部分にリボンを付けて、鞄を肩にかけて、再び画面に戻る。


「ワンピースはとりあえず、1コーデしか思い浮かばなかったけど、これです!練乳の様な色のカーディガンは1年前に出たので僕のお気に入りの1つ。この鞄は小物を入れたりするのに便利だし、このコーデに合うかなって思ったよ。最後はスカートですね!」


と言いながら、画面から出て、急いでフレアスカートを履き黒めのインナーを着て、大きめのシャツを閉めずに着て、さっきとは違う鞄を持ち、リボンを外して再び画面に戻る。


「これで最後!このインナーは初めて買ったデビルのインナー!色合いが好きだし使い勝手が良いから好きで、このシャツとも会うから、僕は良く使うかな〜、この上のコーデだとデニムでも、良いけど今回はフレアスカートでやってみた!」

「今から、コメント読んでいくね〜」


そう言いながら、パーカーとズボンに着替えたあと、コメントを確認する。見てくれている人はチャンネルやアカウントを登録してくれてる人達、ファンで、僕の性別がどっちか論争を良くやっているのを見る。


「えっと、何々『ぴっちり系かゆったり系どっちが好き?』かぁ、ん〜、やっぱゆったり系かな。あんまり、体のラインが出る服は好きやないし、あとはゆったりとした感じが好きなんよね」

「他には『アクセサリーを作ろうってなった経緯は?』ぁ〜、それはね、昔から細かい作業が好きで、それで、ピアスに限って可愛いのあったりするし、いざピアス開ければイヤリングにも可愛い物があるなぁ〜、って考えてから、なら自分で好きなのを作ろうってなったのがきっかけかな」


次々と読んでいく中であるコメントが目に入って、一瞬固まったが、すぐに立て直してそのコメントを読んだ。








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