サファイアとセレスタイト

第10話

イェルガーは濃い青い瞳の色をしている。

宝石で言うとサファイアだろうか、それもかなり高価なやつ。


セイラは薄い青灰色だ。

宝石だとセレスタイトとでも言うのか。自分ではあまり好きではない。



この家に来て一年と約半年が過ぎる。

セイラの十八歳の誕生日、嫌味なくらい高そうなサファイアのネックレスをもらった。

聞けば、自分の色を相手に身に付けさせるのは、独占欲の象徴らしい。

どんどん役作りは進んでいる。

今日から身に付けなくてはならない。


(いや、嫌なわけではないよ。ただ傷をつけてしまったり、なくしたら大変だなと思うくらいで)


「指輪にするとなくすだろ?」

「なるほど!! なくす確率は下がるわね」

「なくす前提なのか?」

「いえ、がんばる」


絶対とは言い切れないから曖昧な返事をする。

もしなくしたらと、使用人と全員で探し回るイメージが浮かんだ。


(まぁそれはそれでカトリーナ様に話すエピソードが増えて良いか)

そんなのんきな事を考える。


「他に欲しいものはあるか?」


イェルガーはワイングラスを手に持った。


「うーん。うーん……」


衣食住はもう充分だろう。あと足りないものと言えば。


「子どもとかどう?」


グラスに口を付けようとしていたが、置いた。


「危ない、噴き出すとこだった」

「なんでよ」


「まだ主治医の許可がおりてない」

「そうなのね。ところで許可ってなんの?」

「は? 養子でも取る気か? まさか子どもの作り方知らないとは言わないよな?」

「……昔、婆やに聞いたけど、覚えてないのよね。事故のせいかしら」

「そうか……」


セイラはなんとなくしか知らなかった。

イェルガーの心底呆れたような返事が来た。

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