スノードーム【BL/ショート】

「もし、この世界みたいに俺とお前しかいなかったらどうする?」


傍らにあるスノードームを見つめて呟いた。


「そりゃあ勿論、友達になるだろうなぁ」


間髪入れずに返答される。


「じゃあ、もし、友達になれなかったらどうする?」


スノードームを手に持ち、一端ひっくり返してから、また置いた。


「ライバルになる」


彼はまた、間髪入れずに呟いた。


「ライバルかー……なんの?」

「何かの」


スノードームの中では、キラキラと雪に見立てたスパンコールが二つの小さな人型に降り注ぐ。

彼は再び口を開いた。


「他になんかあるか?親子とか?」


俺はスノードームを見つめて呟く。


「……歳的には兄弟だろう?でも血は繋がってないし」

「義理って知ってるか?」


彼は笑った。

そんなん知ってるし。

俺は話を逸らした。


「いや、……それとも」

「それとも?」

「恋人……、とか」

「……」


今度は俺が笑って言った。

だが、彼は無言のまま返答し無かった。


「何で黙んだよ!」

「……別に」


彼の態度に何故か焦った。

よく分からないけど、気まずい空気が流れて耐えられない。


「やっぱり無いよなぁー、恋人は……」

「否」

「ん?」

「なきにしもあらず」


溜め息混じりに呟くと、彼は顔色変えずにそう言った。

唐突過ぎて驚いた。


「マジで?何で!?」


疑問を呈すると、彼はしれっと答えた。


「だって、好きになったらあり得るだろ?俺とお前だし」

「……」

「何でお前が黙んだよ。振ってきたのソッチだろ!」


少しムッとした顔を此方に見せる。

そんな彼から思わず目を逸らし、俯いた。


「いや、ちょっと嬉しかっただけ……」

「……あっそ」


スノードームのスパンコールは、いつの間にか沈殿していた。




───もし、この世界みたいに俺とお前しかいなかったら……。



「きっとコイツらみたく、それだけで十分だと俺は思う!」

「右に同じく」


そう言って、再びスノードームの雪を仲睦まじく佇む二つの人型に降らせながら笑った。





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