不良少女と地雷女【百合/ショート】

彼女が唐突にキスしてきたのは、この私に対しての当て付けか。


ニヤリと笑う彼女に私はいつもの癖で手を出した。


バチンと頬を叩くと、彼女はすぐに喚き出す。

 

「いやぁん、痛~いっ!!」

「黙れレズ女!!」

 

頬を抑えて可憐なアテクシアピールか?


それともお涙頂戴悲劇のヒロイン気取りか。

 

「何しやがんだよ!気持ち悪ぃな!!」

「何って挨拶よ!悪い?」

 

フンと鼻を鳴らして威張れる立場か?仁王立ちが地味にムカつく。

 

「アンタ、女相手によくキスなんか出来んな?それとも私を男だと思って発情したのか?」

「そんなわけないでしょ!発情なんてはしたない!!」

「形振り構わずキスするのははしたなく無いんですかー?」

 

尖った野郎ならわかるが、キチ◯イ女に目を付けられる筋合いはないんだがなぁ……。

 

「てか、アンタ彼氏いなかったか?」

「えぇ、いるわよ?貴女と違って私モテるから!!」

 

威張って言うなよアバズレ女。

 

「彼氏いんのにこんな事していいのかよ?彼氏に棄てられたのかぁ?それとも遊ぶだけ遊んでポイされたとか!?可愛想だなぁ~オイッ!!」

「そんなんじゃあないわよ!!」      

    

やけに意地になるなぁ……月モノか?


そう言ってやったら頭を叩かれた。

 

「違うわよ馬鹿!!」

「いっったいなぁ!何すんだアバズレ!!」

 

思わず拳を食らわせようとしたが、上手い具合にかわされた。


当たれば野郎でも一撃な私の拳を……。

 

「あっ!テメェよけんなっ!!」

「別れたの!!」

「あ゛ぁっ!?」

 

唐突に言われてもワケわからん。

 

「何がっ!!」

「今の彼とっ!」

「どうしてっ!!」

「私が振ったの!!」

 

いや、だから。

 

「なんで振ったんだっつってんだよ!」

「それは……」

 

いきなり良い処で黙りやがった……このアマァ。

 

「女癖でも悪かったのかぁ?」

「違うわ!」

「実は男が好きだったとかかっ!!」

「そんなんじゃあない!!」

 

だったらなんだ。


腹が立ってきたから、胸ぐら掴んで脅した。

 

「じゃあ、何で振ったんだよ!!言わねーと前歯全本持ってくぞっ!」

「……好きだったの」

 

全然、意味わからん。

 

「おし。歯ぁ食いしばれよ?」

「なんでそーなんのよ!!好きだって言ってんでしょ!!!!」

「テメェ、日本語きっちり使えよっ!!」

 

そう言ったら顔を逸してこう言われた。

 

「……アンタが」

「あっ?」

「ア、アンタが好きなの……私」

 

気のせいだろうか、地獄耳が取り柄の私の耳が今なんて言ったか聞き取れなかった。

 

「アンタ、今、なんつ────」

「冗談じゃないわよっ!?本気なんだからぁ!!アンタの事好きなのっ!!!!」

「はあああっ!?ざけんなよぉお!!」

「ふざけてないって言ってんでしょ~~!!」

 

彼女は叫んだ後に人差し指を私の目の前に突き出した。

 

「覚悟なさいっ!ぜっっつたいアンタを落としてみせるからっ!!」

 

彼女の宣戦布告に、今まで怖いモノがなかった私が、この時初めて恐怖を感じた。

 

 

 

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