廃異世界旅行記
芙蓉
夜の光
異世界転生と言うものを経験したことがあるだろうか。少なくとも生きているうちは経験することが無いだろう。
私たちは異世界転生を経験した、のだろうか。
ここが異世界かどうか、転生したかどうかすら分からない。異世界っぽいと言うだけで異世界と決めつけている。
この世界に私たち2人以外の人間はいない。いや、確認できていないと表現するのが正しいか。
しかし人間が居た証拠はいくつも発見している。人工の建築物、一部日本語や英語で書かれた書物。
私たちは"絶滅した"と考えているがその証拠も無い。
私の名前は
そして一緒に旅をしている相手が
多分、と言うのは誕生日を覚えていないから。こちらに来た日にちを便宜上誕生日として使用している。
人間が居なくても、人間が作った太陽光発電式の電光時計が色んな地域に置いてある。今はAnt1963年10月3日19時20分。Antと言うのが何かわからないがこちらの暦だと仮説を立てている。この世界の名称である『アンテロ』から取ったとしたら辻褄も会う。
光がキャンプ用のランタンと焚き火、少しの星明りしかないとこの時間はもう真っ暗。
朝はアウトドアワゴンを引きながら娯楽やアンテロに関する論文と、ついでに人を探しながら歩き回る。夜はご飯を食べて本を読みながら天ヶ瀬さんと話をしたりしながら眠りにつく。これが私たちのルーティーン。かれこれ1年は続けている。
今日の夜ご飯はお米と、サラダと、大豆ミート。
完全菜食主義者のような献立だが、どうしても肉が無いとこう言った献立にならざる負えない。
時々、アンテロ世界の発展した技術で消費期限が延長された本物の肉に出会うことがある。それを楽しみに今日も苦手なサラダを口にする。
全部の肉を保存してくれればいいのに、やはりどの世界でも新鮮な物が1番美味しいということだろうか。
廃異世界旅行記 芙蓉 @fuyou0
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