第2話 美人転校生来たる
もう少しで春も終わりに近づき、初夏の訪れを徐々に感じ取れるような時期になった。
俺は窓際の自分の席で学校に着いてから始業までの時間、机に突っ伏していた。
それも昨日俺が原作の頃から推し続けていた、美少女バトル漫画がついにアニメ化され、昨日の夜はそれの最新話がテレビで放送された。
さすがに生放送で見ない手はない。
そのおかげで絶賛俺は寝不足になっているのだ。
そうやって春の終わりの、でもポカポカとした暖かい登りかけの日差しを受けながら俺は仮眠を取ろうとしていた。
ポカポカ。
ああ気持ちい。
ポカポカ。
「ううぅん……」
ポカポカポカポカ。
?
ポカポカポカポカポカポカドカドカドカ!
「──っておい、俺の眠りを妨げるのは誰だ!」
ポカポカとした春の日差しでもなんでもなく、俺の背中をポカポカと殴る人物がいた。
振り返ると俺を軽くポカポカ殴っていたのは
俺が振り返ると悠斗は謎に嬉しそうに、屈託な笑みを浮かべ、「にししし」とか言っていた。
彼のこういう笑顔は小動物かのようだ。この笑顔守りたい。
しかし俺の横の席の坂乃上美春(さかのうえみはる)は、なんだか不満そうな顔をしていた。
どういうことだ? ま、まさか俺の寝顔を横から見ていたのにぃ、なんで石田起こしちゃった乗って感じか!?
無論そんなことは全然なく。
「蓮が寝てるからさ、俺と美春で何回で蓮が言葉を発するか勝負してたんだよ。んで俺の予想は二十回、美春の予想は四回、結果は十七回で俺の勝ちでした〜って話!」
「おいおい、人を賭け事の道具にするんじゃねぇ!」
思わず俺は突っ込んた。対する石田はいぇーいって感じで俺にピースしてきた。
「てかなんか途中から気持ち強くなった気がするのは気のせいか?」
「いや、気のせいじゃない、だってこのままだとずっと起きないって思ったから、ちょっと強くしました」
「あ、石田今気付いたけどそれってズルくない!? 叩くがわだったらいくらでも力の調整聞くじゃん! きづいちゃった私!」
そう言う美春にニヤリとしながら手を差し出す悠斗。
「ふふ、美春。今回はまだまだだったな、後でジュース一本頂こうか」
さすがにそれは俺の気が済まない。
「それだったら悠斗くん?あなたが僕の分を買ってきてくれないかな?」
「いや、だって最初そんなのこと話してないし、そんなかけした覚えないしっ……」
「悠斗くん……?」
「はっ、はいっ! なんでもかってきます! 小野寺様ー!」
たたたーと俺の威圧感に負けた悠斗はなぜだか自分を含め俺たち三人分のジュースを買ってきた。どういうことだ。
まぁいいや。石田、お前優しいじゃねーか!
******
始業の鐘がなり始めるとみんなガタガタガタ、と、いっせいに席につき始める。
そしてそんな様子を見て、みんなが席につき終わると教壇の上に立つ女教師、
「早速だが、このクラスに転校生が来る」
その言葉を齋藤千鶴こと、ちーちゃん先生は口にする。
「えっ、可愛い子だといいなぁ……」
「だよなっ」
「きも〜っ」
後ろの石田のつぶやきに俺が同意すると、その言葉を聞いた美春が少し軽蔑したような目でそう言った。
いいじゃない、転校生が来て新たな出会いが始まる──みたいな漫画やアニメだってよくあるだろ? オタクに少しくらい夢見させてくれたっていいじゃんっ。
クラスのみんなは近くの席の人とザワザワし始めるが、
「はいはーい、どんなやつか楽しみなのかはわかるけど静かに〜、ちょっと呼んでくるから」
ちーちゃん先生はそう言って俺たちの喧騒を一度おさめる。そして一度教室の外に出た。
ちなみにちーちゃん先生は俺と俺たちの周りの奴らが勝手に読んでいる呼び名だ。
何回か呼んでみて「そうやって大人をからかうんじゃないぞ。
齋藤先生と呼べ齋藤先生と」という返事が帰ってきはしたが、なんだか彼女が満更でもなさそうだった(俺の勘違いとかではなく周りのみんなにもそんなふうに見えてた。ガチだ。)ので、それから俺たちは勝手に齋藤千鶴先生のことをちーちゃん先生と呼んでいるのだ。
少し待っているとガラガラと、教室が開きちーちゃん先生と、あとそれに続いて女の子が一人入ってきた。
背こそは150センチあるかないか、それくらいだが、彼女は透き通る白い肌と大きなクリっとした目をしており、顔はとても整っていた。
メガネはしているものの、そのメガネをとても似合っており、メガネ美人、その言葉がとても似合う子だった。
「おいおい可愛いな」
「うん、めちゃくちゃ可愛い」
さっき俺たちのことをきもっ、とか言っていた美春もかなり彼女の外見を見て、引かれている様子だった。
「それじゃあ簡単に自己紹介お願いできるか?」
「
ちーちゃん先生の言葉を受けて、転校生──東雲璃子はそう言った。
教室で起こったまばらな拍手はやがて大きな拍手へと変わった。
「じゃあ東雲の席はそこだな、みんなも仲良くしてあげるように」
そしてその拍手がひとしきり収まると、ちーちゃん先生は東雲の席をさして彼女を座らせた。
俺の席は窓際の前から三番目の席。そして彼女の席はそんな俺の席の二個前の席。つまり窓際の1番前の席だった。
「よろしく、東雲ちゃん!」
「はい、よろしくお願いします」
そんな会話を隣の席の女子として、自分の席に座る東雲。
そこから何事も無かったかのようにホームルームが再開した。
なぜだか分からないが、何となく彼女の表情が不安に満ちた表情をしてるように見えて、俺はなんとなく彼女のことがきになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます