第2話 初めてのステージ⁉ 猫耳アイドル、デビューへの道!
リリカが目を覚ましてから、数時間が経った。信じられないことだらけの状況に、頭が追いつかないまま、彼女は病院内の一室でレオンとともに待機していた。豪華な部屋の中にいるというのに、リリカの心は不安でいっぱいだった。
「本当に…私がアイドルなんて、できるのかな……?」
ふと呟くと、レオンは優しく微笑んで答えた。
「リリカ様、心配なさらずに。あなたには特別な力があります。それに、皆がサポートしますから、まずはリラックスしてください」
リリカはその言葉に少しだけ安堵を覚えたが、それでも不安は消えない。知らない場所、猫耳という新たな自分、そしてアイドル活動――すべてが未知の世界だった。彼女はただの高校生で、目立つのは得意ではない。ステージの上で輝けるなんて、そんな自信は全くなかった。
その時、部屋の扉が再び開かれ、一人の女性が入ってきた。長い金髪を揺らし、鮮やかなドレスをまとったその女性は、見るからに気品があり、どこか厳しさも感じさせる。
「あなたがリリカね。初めまして、私はマネージャーのメルヴィルよ」
彼女の視線は鋭く、リリカを一瞬で見抜くかのようだった。メルヴィルは一歩前に出て、リリカをじっと見つめた。
「正直言って、あなたが本当に異世界を救う存在なのかどうか、少し疑問だけど…まあ、やってみる価値はあるでしょう」
リリカはその言葉に少しショックを受けたが、同時に反発心も芽生えた。自分を疑われるのは嫌だったし、何よりこの異世界での自分の役割を全うしようとする決意が少しずつ固まってきた。
「私…頑張ります。まだ何もわからないけど、やってみたいです」
メルヴィルはその答えに満足そうに頷き、リリカに向けて手を差し出した。
「いい返事ね。さあ、まずはあなたの力を見せてもらうわ。明後日、そう、ちょうど小さいイベントがあったわね。そのステージに立ってもらいましょう」
「ええっ!?明後日って……いきなりすぎませんか?」
リリカは驚きの声を上げたが、メルヴィルは動じることなく、冷静に続けた。
「リリカ、この業界ではタイミングを逃せば、全てが終わるわ。だから、今この瞬間が大切なの」
「安心して、あなたにはすでに、ステージで輝くための力が備わっているのよ」
「他に何人かの新人アイドルも出場するから、あなたもそのうちの一人って事。気楽に想いのままに歌い踊ればいいの、それだけでいいのよ」
メルヴィルの言葉は厳しくもあり、真剣だった。リリカはその言葉に押されるようにして、覚悟を決めた。初めてのステージに立つことは怖いけれど、何もしなければ何も変わらない。リリカは心を奮い立たせ、頷いた。
「わかりました。やってみます!」
次の日、リリカはメルヴィル主導のもと歌と振り付けを必死に練習した。リリカの透き通るような歌声はメルヴィルの心を震わせ、きれきれのダンスは見たこともない激しい動きだった。リリカは自ら歌とダンスをアレンジして新しいパフォーマンスをみせた。リリカの潜在能力の凄さと、明日のステージの成功をメルヴィルは確信した。
本番当日、メルヴィルは満足そうに微笑み、リリカをステージへと導いた。町の広場に設置されたステージは、既に多くの人々で賑わっていた。彼女がその光景を見た瞬間、心臓がドキドキと高鳴る。観客の期待の眼差しを感じるたびに、プレッシャーがのしかかってきた。
「大丈夫、リリカ様。皆、あなたを応援しています」
レオンの励ましの言葉に勇気をもらい、リリカはステージの中央に立つ。眩しいスポットライトが彼女を照らし、猫耳がキラリと光った。司会者がリリカの紹介を始めると、観客からは歓声が上がる。
「皆様、今日がデビューとなる新人猫耳アイドル、リリカ!」
拍手と歓声が一斉に沸き起こる。リリカは息を深く吸い込み、メルヴィルから教わった簡単な自己紹介を思い出しながら、言葉を紡ぐ。
「えっと、初めまして! リリカです。今日から、猫耳アイドルとして頑張ります。よろしくお願いします!」
その瞬間、リリカの心の中に温かい何かが広がるのを感じた。恐れていた気持ちはどこかへ消え、ただこの場所で頑張ろうという決意が強まっていく。観客の声援が彼女の背中を押し、リリカはこの世界で初めての歌とダンスを披露した。
彼女はゆっくりと観客に語りかけるように歌い始める。その優しく透き通る声にだれもが心を奪われ、聞き入ってしまった。リリカは全力でステージを楽しもうとした。猫耳が揺れ、リズムに合わせて体を動かすたびに、彼女の不安は少しずつ消えていった。
曲の後半、リリカは一気にダンスのパフォーマンスへと移行した。軽やかなステップと鋭いターンを織り交ぜたキレキレのダンスで、彼女は観客の目を釘付けにする。まるで風に舞うような動きでステージを駆け回り、そのたびに猫耳が愛らしく揺れた。リリカのエネルギーと情熱は次第に観客にも伝わり、会場全体が彼女のリズムに合わせて揺れ始める。
観客は次第に熱狂し、リリカの一挙一動に歓声が上がった。最後のサビでは、リリカのダンスはさらに加速し、観客のボルテージは最高潮に達する。ステージのライトがリリカを照らし、まるで彼女が輝いているかのように見えた。
曲が終わり、最後のポーズを決めると同時に、会場には大きな拍手と歓声が響き渡った。リリカは息を切らしながらも、笑顔で手を振り返した。観客の盛り上がりと熱い視線が、彼女に大成功を実感させた。
リリカのステージは見事に大成功を収め、彼女のキレキレのダンスと透き通る歌声は、観客の心に深く刻まれたのだった。
リリカは観客の拍手と笑顔に包まれ、確かな自信が芽生え始めていた。
「良かったわ、リリカ。この調子で次も頑張りましょう」
メルヴィルが微笑みながら言った。リリカはその言葉に応え、深く頷いた。まだまだ道は長い。だが、リリカはこの世界でアイドルとしての一歩を確かに踏み出したのだ。
リリカの波乱万丈なアイドル活動が、今ここに幕を開ける――。
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