目覚めたら猫耳⁉ ~神隠しで別宇宙のアイドル級猫耳メイド魔法使い⁉に大変身!~

INASAKU6

第1話  猫耳、目覚める⁉ 猫と光の国でアイドルに!

 稲垣 梨々香は自称【陽キャ系オタク女子高生】本人の自覚はないが、男性にはよくチラ見される程度にはかわいい。たまに告られるが異性には興味がない。アニメとダンスと猫に夢中で高校ではダンス部に所属し休日の土日は猫カフェでアルバイトに励んでいた。


 「ここのコスチューム、かわいいが過ぎて最高!」


 コスチュームのメイド服に猫耳のカチューシャを頭に付けて、梨々香はご満悦。姿見の前でくるりと舞って満面の笑みで自分を見つめ返す。

 

 すると梨々香の足元に一匹の猫がまとわりついきた。この猫は店の保護猫で三毛猫のチャチャ、梨々香がお店に頼んで世話をしてもらっている


 「チャチャもお着替えしたいのかにゃ~?」


 梨々香がチャチャを抱きかかえ頬ずりする。すると額に何か硬いものが。よく見ると細長い宝石のような物がくっついていた。


 「額に何か付いてる」  


 その時だった。急に目の前が眩しくなって思わず目を覆う。その瞬間、ふっと体が浮き上がりまるで無重力の空間にいるような感覚に陥った。


 その瞬間、梨々香は気を失い光る空間の中に吸い込まれていった。

  

 雷鳴のような轟音が空に響き渡り、エルフェリア王国の城を包む静けさを一瞬で打ち破った。まるで空そのものが裂けたかのように、雲一つない青空から一本の眩しい光が降り注ぐ。


 その光はまるで天と地をつなぐ矢のように一直線に地上へと突き刺さっていた。


「これは……まさか……!」


 城内の窓からその光景を目にしたエルフェリア王国の大魔法師メルヴィルは、驚愕の声を漏らした。彼女が瞬時に思い出したのは、古文書に記されていた「光陰の矢」の伝説。遥か昔に記録された現象であり、何か重要な存在がこの国に降り立つ際に現れるとされていた。


「騎馬隊を数名連れて、光が降りている場所へ急げ!」


 メルヴィルは指揮を取り、騎馬隊を引き連れ、急ぎ光の射し込む地点へと向かった。馬蹄が響き、隊は草原を駆け抜けていく。心の中で膨れ上がる不安と期待、そして何よりもあの伝説が本当であるかどうかを確かめるために、彼女は息を切らせながら目的地を目指した。


 光が降り注いでいる場所にたどり着いた時、メルヴィルの目に飛び込んできたのは、まばゆい光に包まれた一人の少女の姿だった。少女の髪は黒く長く、頭にはぴんと立った猫耳がついている。しかし、次の瞬間、少女の体がゆっくりと崩れるように倒れた。


「まさか……!大丈夫か!?」


 メルヴィルは騎馬から飛び降り、少女のもとへ駆け寄った。光は徐々に弱まり、消えかけていたが、その場に漂う魔力の残り香は確かに強力なものだった。彼女が駆け寄った時、少女――リリカは既に地面に横たわり、意識を失っていた。


「この方が……二人目の……」


 メルヴィルは少女の顔をじっと見つめながら、思わずつぶやいた。彼女が探し求めていた者、そしてこの国の未来を担う存在。それがこの少女に違いないと確信した。だが、彼女はまだ意識を取り戻していない。


「急いでこの少女を病院へ運べ!慎重にだ!」


 メルヴィルはすぐに騎馬隊に命令を下し、少女を運ぶ手配を始めた。横たわったその顔は穏やかで、まるで眠っているかのようだった。彼女がこの世界にきた理由はまだわからないが、その運命はもう動き始めていた。


 光が完全に消え、あたりは再び静寂に包まれた。 

 

 目を覚ました瞬間、梨々香は自分がどこにいるのかまったくわからなかった。視界に映るのは、見慣れない天井と豪華なシャンデリア。部屋中には高価そうな調度品が並び、絵画や花の装飾が美しく施されている。ベッドはふかふかで、シルクのシーツが肌に優しく触れる。ここはまるでお姫様が住んでいるような部屋だ。でも、リリカにはこの場所に見覚えがない。


 以前のことを思い出そうとする。朝起きて、コンビニでお菓子を買って、バイトして……。


「えっ、ここどこ?」


 梨々香はベッドから飛び起きると、化粧台の鏡を覗き込む。


「よかった!私の顔だ!」

 

 自分が知ってる自分の顔で内心ホッとした。


「そうだ!私メイド服に着替えて、それから……」

 

 あらためて自分の姿を確認する。柔らかな生地のメイド服を身にまとい、エプロンには可愛らしいフリルがついている。そして飾りの猫耳。とりあえず猫耳だけでも外そうと引っ張ってみる。すると飾りで付けたはずの猫耳から激痛がはしり思わず


「痛い!なんなの!外れない!」


 もう一度頭を触って確認してみる。するとそこにあるはずのカチューシャが無かった。あらためて鏡を覗き込み猫耳の付け根を確認する。あきらかにコスプレでもしているかのようなフワフワの猫耳が生えていた。


「え、嘘でしょ?これ、本物?」


 鏡に映る自分の姿に驚きながら、リリカは恐る恐る猫耳に手を伸ばす。耳を触るとピクッと動き、その感触は確かに本物だとリリカに確信させる。こんなこと現実にあり得るのか。夢なのか、現実なのか、リリカにはわからなかった。彼女は何度も頬をつねってみたが、痛みは現実を突きつける。


「どうしてこんなことに……」


 混乱するリリカの心に、さらに追い打ちをかけるように、部屋のドアが静かに開いた。入ってきたのは、銀髪で甲冑に身を包んだ騎士風の男性だった。彼は落ち着いた表情で、梨々香に向かって軽く一礼をする。


「お目覚めですか、私はレオン、あなたの護衛です」


「失礼ですが、お名前をお聞かせ願えますか?」


「あ、はい。えっと、稲垣 梨々香 です。リリカといいます」


「えっ、護衛? って、レオンさん? どういうこと、ここどこなの?」


 リリカの頭はパニック寸前だった。レオンと名乗る男性は、まるでリリカが質問するのを予測していたかのように、微笑んで答えた。


「リリカ様、ここは猫と光の国と呼ばれるエルフェリア王国、あなたを一時的に病院で保護させていただきました。リリカ様は猫神の化身、猫耳メイド魔法使いとして、特別な力を持つ存在です。皆、あなたをお待ちしています」


「猫神? 魔法使い? 特別な力って、何それ……」


 リリカはレオンの言葉に呆然とするばかりだった。これが夢であればどんなに良かったか。だが、目の前の光景はあまりにリアルで、現実味を帯びている。彼女の心は焦りと不安でいっぱいになったが、レオンの穏やかな態度に少しだけ安心感を覚えた。


「混乱するのも無理はありません。まずはゆっくり落ち着いてください。リリカ様のことは王宮の者たちも知っておりますし、これからの生活については王国がしっかりサポートさせていただきます。さあ、こちらへ。」


 レオンはリリカを部屋の外へと促す。廊下に出ると、そこにはまるで王宮のような広大な空間が広がっていた。壁には豪華なタペストリーが掛けられ、床には美しい赤い絨毯が敷かれている。リリカは信じられない思いで辺りを見回し呟く。


「ここが病院?すごく豪華……」


 すかさずレオンが答える。


「ここは王宮御用達の特別病院です。しばらくこの部屋を仮住まいとしてご自由にお使いください。特別待遇です。何といってもリリカ様はアイドル活動を通じて、この国を救う存在となるお方ですから、当然です」


「アイドル……活動?」


 リリカは耳を疑った。アイドルといえば、華やかで憧れの存在。それを自分が知らない国でやるなんて、全く想像もしていなかった。レオンはリリカの戸惑いをよそに、にこやかに微笑んでいる。


「ええ、アイドルはこの世界で特別な役割を持っています。人々に希望を与え、そして魔法の力を強める存在です。リリカ様は猫耳メイド魔法使いとして、その素質を持っていますから、きっとすぐに人気者になれるでしょう。」


「そ、そんな……私は普通の女子高生で、アイドルなんて無理!」


 リリカは思わず叫んだが、レオンは優しく彼女の肩に手を置いた。


「大丈夫です。あなたには素晴らしい力があります。それに、あなたはもうこの世界に必要な存在です」


 リリカの心はまだ混乱していたが、レオンの言葉にはどこか説得力があった。彼の導きに従い、リリカは少しずつこの世界での新しい自分を受け入れようとしていた。


 突然知らない国で猫耳メイド魔法使いとなってしまった稲垣 梨々花、彼女の波乱万丈な冒険とアイドル活動は、今ここから始まる――。

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