私たちは無力だと
「拓哉、私と約束して絶対に自分を大切にするって」
「うん」
俺の過去は消えない、決して許されないことをした。
あの時、俺はどんな気持ちで付き合っていたんだろうな。
雪は自殺をしようとしていた、だから俺は雪を救うために付き合うことにした。好きでもないのに好きだと思い込んで付き合った。
本当に最低なことをした。だけど、雪が亡くなった時、俺は悲しかった。泣いて泣いてずっと泣いた。
いつも隣にいた彼女はもういなくて寂しい気持ちになっていたのは確かだ、だから雪や成瀬を馬鹿にされた時俺は怒っていた。
なんだろうな、俺は、自分自身の気持ちが分からないよ。
雪、俺はどうすればいいんだ。
「もう、寝よっか」
早百合が俺の手を強く握って言う。
「そうだな」
俺たちは、もう壁なんてなかった。あるのは拓哉を好きだと想う気持ちと、少しだけ癒えた拓哉の心だけだった。
そして、俺たちは横になる。
早百合は俺のことを抱き枕のように抱きしめ、照れながら言う。
「ねえ、拓哉、私たち付き合わない?」
一方その頃、拓哉の居ない学校では事件が起きていた。
※凜視点
校長室には多くの生徒が集まっていた。
「どういことですか? 拓哉を退学にさせるって」
私は荒い口調で言う。
「この高校に規律を乱す生徒は必要ない」
「待ってください、何か勘違いしていませんか?」
「話を聞いたんだ、君と同じ学年の男子生徒から、凜さんが拓哉と会ってから元気がないと」
「それは、嘘です。私はただ疲れていただけなんですよ」
「大丈夫、私は君の味方だ」
もう、無理だ。拓哉はあまりにも噂が多い。
全部嘘なんだよ、なんでわからないんだよ。だって、あんなに優しいし救われている人もいる。
それに、今拓哉が居なくなったら私はどうやって生きて行けばいい。
「今度ちゃんと話し合いをして、ちょんと決める」
「その話し合いは意味ないですよね」
成瀬は落ち着いた声で言う。
「なんだと」
高圧的になる校長先生。
「だって、もうこの学校で拓哉の噂を知らない人はいないでしょう」
「はあ、君たちもう帰ってくれないか? これから会議なんだよ」
逃げるように言う。
私たちは、校長室を追い出される。
どうしてこうなるんだよ。
拓哉はただ人助けをしてるだけだ、それなのに、なんで、こうも現実は邪魔をする。
そして、成瀬、志保、琴音、幸、楓、環奈、たちはそれぞれ理解する。
私たちは拓哉がいないと、何もできないと。
無力だと。
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