体育着の貸し借りは男友達だけだ
パフェが追ってくる夢で目覚めた。なんだよパフェが追ってくる夢って。一瞬パフェが嫌いになりそうだったけど、こうなってしまった原因は容姿端麗でスクールカースト上位の早百合のせいだと思いながら起きる。眠ったばかりなのに眠たかった。
今日寝てしまうかもな。
二階から降りてリビングに向かう。
「おはよ、お兄ちゃん」
「おはよう、由衣」
由衣は俺の妹だ。親は海外の仕事関係をしており家にいることはほとんどない。もう慣れたけど由衣は寂しいだろう。今年から中学3年生だ。大人になったな。
「私は先に行くから、ちゃんと食べてよ。あ、お兄ちゃんのために弁当用意してるから」
「ありがとう、いつか恩を返すよ」
「楽しみにしとくよ!!行ってきます」
なんていい子なんだ、俺のためにわざわざ弁当を用意してくれるなんて。
弁当箱を開けて中身を確認する、なんとこれは驚いた。たくさんの白米に梅干しが一個。
前言撤回だ、由衣は鬼だ。
今日は余裕をもって登校することにした。こんな話を聞いたことは、ないだろうか? 朝早く登校するとそこには運命の人がって話。俺はそれを試しに行っている。 わくわくが止まらない。待っとけよ運命の人。
教室に着く、お待たせ運命の人。ドアを勢いよく開ける。そこに立っていたのは、早百合だった。
「あら、今日は来るの早いのね今日は」
ドアを閉める。よし、見なかったことにして他の場所に向かおう。その方がいい絶対。ドアが開く。
「あら、今日は早いのね」
いやいや、ドア普通に開けないで、お願いだから。
「やばい、お腹が痛くなってきた。昨日食べたパフェが」
「そうね、昨日は美味しかったね、あのパフェ」
おい、そこじゃないだろ
「そうか、それはよかったなじゃ」
「おい」
「はい」
怖すぎるよこの人、どこが天使なんだよ。天使に化けた悪魔だよ、この人悪魔ですよ。
朝の出来事が嘘のような振る舞いをしていた。すげーと感心していたがよく思うとなんで俺には冷たいんだ、おかしいでしょ。
次は体育だったので体育着持って移動しよう。あれ、ない、体育着がない、やばいどうしよう
「おい、先に行くぞ。あ、体育着忘れたら評価1ってよ」
おい、成瀬俺が体育着無いのわかって言ってるだろ。そう思いながら探した。いくら探しても見つからない。多分弁当が衝撃的で持ってくるの忘れた。
クソ、どうしよう。
「まだ、ここにいたのね」
「なんでここにいるんですか?早百合」
「水筒を取りに来たのよ。あなたこそ、何をしてるの?まさか私の鞄を漁ってるんじゃ」
「いや、被害妄想やめて、体育着が無いんだ」
「あら、そうなのね、私の貸してもいいけど、パフェ10日間奢るならいいよ」
いやまてこれは、罠だ。よく考えてみろ早百合はカースト上位だぞ俺なんかに貸すと思うか? 俺は思わない。
「罠だな、俺を見下してるのに貸すはずがない」
「そう、貸そうと思ったのに残念」
手には体育着を持っていた。えーえーマジかよと後悔した。
「まって、じゃあ30日間奢るか貸して」
「ふふ、言質取りましたから。」
そう言いスマホを見せる。どこまで用意周到やねん。
「じゃあ、これ。ちゃんと洗濯して返してよ」
受け取って考えた。これってまずくね。女子の体育着やん。俺は後悔した。絶対着ることができないのを知っていて俺に体育着を貸したんだ。やられた。
俺は体育着を持って教室を出た。てか、早百合は制服のままだったよな。てことは二個持ってないんじゃね。俺は走って早百合を追いかけた。
「おい、体育着持ってないだろ」
後ろを振り向く彼女は天使に近い死神だった
「俺は、いいから早く着替えて来いよ」
渡された体育着を返した。
それから早百合は走って体育館に向かった。さよなら俺の体育の評価。
先生にひどく叱られた。お前は最初から忘れ物をするようにはみえないけどな、今回はお前の人柄に免じて許そう。だが次はないぞ。と言われた。ありがとございます先生。
教室に帰ると俺の席に体育着が置いてあった。あれ、なんでだ? と思いながら席に着く。もしかしたらどこかに落ちてあって誰かが拾ったんだろう。まあ気にしないでいいか。
先生が入って来て、帰りの挨拶をした。
「明日は部活動紹介があるから、ちなみにうちの高校は部活に入らないといけないからな」
そんな高校まだあるのかよ。部活か、中学生の頃は部活なんか入らないで生徒会に入って学校を楽しめる場所にしようと思って頑張っていたけど、あんまりうまくいかなかったな。
解散の一言でみんなが教室を出ていく中、俺は体育着が入った袋を開け中身を確認した。すると手紙が入っていた。
『ありがと、最低辺さん』
おい、もしかしてあれって俺の体育着だったのか、つまりこの体育着は来たのか。
「あ、ちなみに着てないよ。あの後友達に貸してもらった」
俺の頭の中が見えてるのか、てかじゃ俺が損しただけじゃん。
「そうなんだ、よかったよ」
「うん、優しい友達が多くてうれしいよ」
「うん、じゃ明日ね」
「え? パフェ」
「パファ? いや俺結局借りてないしあの話は無しだろ」
するとスマホを見せ音声を流した。誰もいない教室に音声が流れ出した。
『まって、30日間パフェ奢るから』
おいおい、この人は悪魔だろ、やっぱり、天使の、て、の字もない。
「さてと、行こうか」
こんなに嬉しくない誘いなんてあるだろうか。さようなら俺の貯金。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます