砂糖みたいに甘い恋をした

ヤマノカジ

砂糖みたいに甘い恋をした

最近TLでよく仲のいいフレンドのお砂糖報告が流れてくる。

お砂糖か…お砂糖ってどうやってできるもんなんだ?

学生みたいにこう…告白?なんかして出来るものなのか?

僕にはまだ早いみたいだ。

はぁ…なんてため息をつきながら、自分のところからフレンドが離れてしまうんじゃないかという不安と感傷な気持ちに浸った。


数日経ったある日、フレンド+であり得ないくらい距離が近い人にあった。

あった初めから撫でてくるし、可愛い可愛いって言ってくるし…

現実でもVRCでも異常者だろ…。

なんて思っていた。

その日からその人とたまに会うようになった。

その度に撫でてくるし、可愛いって言ってくるし。

でもそれほど嫌じゃなかった。

アバターが好みっていうのもあったり、声が良いっていうのがあったり。

性格を置いておいて。

困るもんだなぁ。なんて考えているけど、内心嬉しかった。


数日経って、僕がフレンド+でインスタンスをたてて、このワールドいいなぁ、なんて思っていたらその人がjoinしてきた。

軽快なjoin音に比べ僕は少し緊張していた。 

初めて2人きりで会うもんだからちょっと怖いという面がある。

僕は喉から振り絞ってテンプレートの挨拶を出す。

それに呼応し相手も挨拶をする。

いつも通りその後、僕を撫でまわし始めた。

イベントだか、改変だか、アバターだか、

いろんな話をした。

いつも通り彼は僕のことを撫でながら、会話の合間合間にかわいいね。なんて言う。

この人、意外と面白いな。なんて2人っきりで喋っていて思う。

それになんだか、頼りになる。

いや、VRC歴が相手の方が長いっていうのがあるんだろうけども。

話も続き、もうそろそろ終わる頃かな?なんて思っていた時だった。

「お砂糖とかって興味あったりするの?」

一瞬、ワールドBGMが止まった気がした。

心臓だけが鮮明にリズムを奏でている。

血を循環させて、脳が回転させるように作用する。


「あ、えっと、最近フレンドがいっぱいお砂糖報告とかしてて、ちょっと興味?ていうか、どういう世界なのかっていうのは気になりますね…」

これで本当にいいのか…と不安になりながら言葉を紡ぐ。

「そっか〜、じゃあさ、俺とお砂糖なってみない?」

また心臓が早く動き始める。

撫でられている感触も強くなり暑くなる。

熱でも出したかのように顔は熱くなり、強張る。

「ちょっと考えさせてください」

僕の周りはみんなお砂糖なっていって、僕を1人にした。

僕の番が回ってきたのかもしれない。

いいん…だよね?

数分たち、心を決し、喉から言葉を投げる。

「はい。もし良かったら、なってください」

「うん、これからよろしくね」

相手が抱きついてくる。この多幸感。

幸せでいっぱいでおかしくなりそうだった。

早速、同じ指輪を互いにつけて、手を撮ってお砂糖報告をした。

こんな気分だったのか。

少しマウンティングをしているような。

小っ恥ずかしいような。

それからの日々は幸せに包まれていた。

2人っきりでいろんなワールドに行って、いろんな景色を見た。

こんな広い世界なのに、僕たち2人しかいない。

愛し合っている2人だけの世界。

この幸せはずっと続いてほしい。

いや離したくない。

離したくないんだ。

ずっと、一緒に。

ずっと

ずっと

ずっと

ずっと

砂糖みたいに甘い日々が続いた。


お砂糖報告から一ヶ月半。

最近インバイトを送ってもあまり彼が来てくれない。

いや、来てくれないっていうか、遅いというか。

どってもいいんだ。

僕以外の人が彼と僕の世界に入ってきているんじゃないかって不安になってきた。

最近、なんだか冷たい気もするし。


メニューをひらき、今日も送ろうかなんて思った。

だが、インバイトを送るのが憚れる。

だけど自分が行動しなきゃ何も始まらない。

僕は勇気を出してインバイトを送った。

最近にしては珍しく、早く僕のインスタンスにきた。

このjoin音を僕は聞きたかったんだ。

手を振って挨拶をする。恋人みたいに。

だが彼は振り返してくれなかった。

困惑の熟語が浮かぶ。

「なぁ、もう、俺たちお塩しないか…?」

唐突な言葉に心臓が止まる。

殺されたような感覚。

「な、なんで…?」

必死に出した言葉が自分でもわかるぐらい痛々しい。

「最近、しつこいんだよ…、俺だって、1人の時間が欲しいんだよ。色んな人と関わる時間とかさ…」

「いや、でも!!そっちからお砂糖なろうって言ったじゃん!!なんでそっちからフってくんの!?!?おかしいでしょ!?」

もう自分がわからない。

お互いの今まで溜めていたストレスを爆発させる。

お互い疲れて、息を吐く。

「もう、お前、可愛くねぇんだよ…」

心にグサリとナイフがささる。

体は痛くないのに。

死んだ気がした。

「わかったよ…もう。うん。お塩しよう」

相手がワールドからいなくなる。

虚空なプラベ。

もう送るインバイトもない。

ただ、ワールドから抜けた音と、僕の鼻を啜る音が響いていた。


ソーシャルを見たが、もう彼はいない。

これで良かったんだ。


僕には甘すぎた。

砂糖ばかり摂取して。

糖尿病だよ。

相手はきっと、甘いものを摂取した後だからしょっぱい物が摂取したかったんだろう。

この別れは僕にとって必要だったんだ。

砂糖ほど甘かった日々もあれば、砂糖ほど甘くなかった日々もある。

そして今現在、塩ほど辛い別れではない。

僕の勝手な考えかもしれないけど。

どちらしか摂取しないのは毒なのだ。

塩と砂糖。

お互いが調和することによって料理は完成する。

甘すぎずしょっぱすぎず。

友達だったら、まだ、彼と楽しく遊べたのかなぁ…。

振り返ると結構バカだったなぁ。

自分を嘲笑するかのように乾いた笑いが出る。


僕は、砂糖みたいに甘くなく、塩ほど辛くない恋をした。

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砂糖みたいに甘い恋をした ヤマノカジ @yAMaDied

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