リアルASMR
紫乃視点です
「トイレに行ってもいいか?」
「一階の玄関の横だよ」
トイレに金彦が言っている間に私とと青波は話し始めた。金彦がいない今がチャンスである。
「結局かねちーは棚開かなかったね」
「あいつは、ヘタレだわ。もはや振りだってわかるでしょうに」
「中は同人誌とかだから見られても問題ないのにねー」
「私の時なんかすっごい見てきたのに」
私は信じてたわ。他の女にちょっかい出すけど結局は戻ってくるって。
一緒に服を買いに行った時も、あいつはデートだと思ってなかったようだったけど、まごうことなきデートだわ。
全く、無自覚に私だけを選んでるわね。『ミルクちゃん』の方が私よりも興奮してたのが腹が立つわ。案の定閉め切らなかったら覗いてきたし。
「ところでさ、かねちーって面白いところあるね。私ももっと仲良くなっちゃおうかな?」
「だめよ、あなたが金彦の悪いところ全然知らないでしょ、『ミルクちゃんに』詳しいのは分かってる
けどそれだけよ」
「もーそんな怒んないでよ。ふん。私のお気に入り一番は『みるく』二番は『紫乃』三番目は『・・・』これから入ってくるかもね」
なんだかむかついた私はそこらへんに転がっていたクッションをもって、天誅を下すことにした。
脳天をめがけて思いっきり振り落とす。
「やったなー、紫乃お返しだー」
青波も負けじとクッションで殴りかかってきた。
このむかつく気持ちが晴れるまで、満足するまで振り回していると、金彦が帰ってきた
ちょうど床に倒れこんでとどめの一撃を食らわせようとしたところだった。
「すごい、音としてるけど何やってんだ?」
金彦はじっとと私たちを見るとピンク…と呟くとそっと私たちから目を離した。
「なんも、見てないから、事故、事故だから…」
ふと自分たちの格好を見ると制服のスカートがめくれあがっている。
どうやら金彦は青波のパンツをみてしまったらしい。
青波も自分のが見られたと気が付いて思いっきり顔を赤くしていた。
手で見えない様にとっさに隠していた。
「かねちー私の見た?見たよねきっとなんかおかしいもん」
「ちょうどよかったよ…ごちそうさまです…」
「紫乃かねちーを取り押さえて、やるよ」
私は立ち上がって後ろから両腕を取って金彦を押さえつける。金彦は抵抗するが密着して動けなくさせた。
「いつでもいいわよ、やりなさい」
青波は手に持っていたクッションで金彦に殴りかかる。
「これは、見られた私の分」
金彦の左ほほはやられた。
「これは見られた紫乃の分」
金彦の右ほほもやられた。青波は金彦に近づき両手でほほを撫で始めた。
「ごめんね、かねちー。痛かったよね。でもかねちーが悪いんだよ」
笑顔で話しかけているが表情が私の知ってる青波じゃない。思わず背筋がぞっくとする。
危機感をいだき私は抱え込んだまま壁まで後退し、座りこませた。
青波はしゃがんで金彦をさらに追い込んでいた。全部見えている。金彦の耳元に近寄って言った。
「かねちーのへ・ん・た・いさん」
金彦の頭越しに見えた横顔は欲望を隠さず発情している猫のように見えた。
私は信じていたがもしかしなくても青波まで私のライバルになるのかもしれない。
金彦の表情は見えないが私を忘れさせない様にするために思いっきり胸を押し付けた。反応がない。
「ちっ」
このままでは何かに目覚めてしまったような青波に私の金彦がとられてしまうかもしれない。ここは金彦と青波を引きはがすしかないわ。
「もう金彦、帰るわよ」
「ああ、もう結構いい時間だしな」
私の声だけはしっかりと聞こえていたらしい。混沌とした雰囲気になってしまったのは成功だったのか失敗だったのか。
私はどうやら青波のことを勘違いしていたらしい。まさかこんな魔性の女だとは思いもしていなかった。
私は腕の拘束をとっくに解いているのだがこいつは全然立ち上がろうとしない。仕方がないので手をつかんで立ち上がらせる。
金彦は前かがみになってなかなか立ち上がろうとしない中無理やり手を引っ張って部屋を後にさせた。
「おじゃましました、また月曜日にね」
「うん、またね。」
空はすっかり暗くなり家の電気だけが煌々と輝いている。表情は良く見えないが明らかに言動がいつもよりおかしい。歩く速さもいつもよりゆっくりである。
こいつはいつもおかしい気がするが。なんとも恐ろしい部屋であった。
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