美少女JKの(オタク)部屋

 今日も退屈な授業を受けて放課後になった。青波さんの家に着いたのだが少し掃除するから待っていてと言われてしまった。


「女の子の秘密はたくさんあるの。男のあんたが突然来られても準備が必要よ。まあ私の家ならいつでもいいわ」


「突然来たからな、掃除も必要か。多分みんな部屋は割と散らかってるだろうし」


 五分ほどまっていると青波さんがでてきた。どうやら着替えたようだ。

 だぼだぼとしたTシャツを着ているが、大きく『ミルク』のイラストが描かれている。


 下はスカートだった。割と最近発売された服であり、俺も持っているやつである


「いっらしゃい二人とも、私の部屋に入って」

「おじゃましまーす」


 ドアが開かれ、中に入ると玄関は特になんの変哲もない普通の玄関であった。二階に上がるとプレートがかけられていた。


 もう一度ドアが開くとそこには、大量の「ミルク」グッズが並べられている。ひときわ目立つのは棚の上にある。アクリルスタンドである。


 周りにはぬいぐるみや小さめの花などまるでアクスタの「ミルク」を召喚するかのように囲んでいた。これが俗にいう祭壇ってやつか。

 壁には当然のようにタペストリーがかけられている。まさに理想の部屋であった。


「これはなかなか…最高じゃないか!」

「青波、こんなにグッズいっぱいあるなんてすごいわね。前来た時より少し増えてるんじゃないかしら」


 壁には見たことのない絵もいくつも飾られていた。今まで『ミルク』が出してきたグッズは何となく全体的に把握していたが、見たことのない絵がいくつもあった。


 まさか、俺が知らないグッズがこんなにあるなんて一生の不覚。もう「さん付け」はいらない。


「このアクスタとかポスターとかってどこで売ってたんだ?見たことないけどめっちゃかわいいんだが」


 質問をすると青波はよくぞ聞いてくれたとばかりにアクスタをもって近くにやってきた。


「そんなに慌ててないでね。立ったままじゃおちつかないでしょ」

「落ち着きなさい、迷惑よ」


 迷惑をかけたので落ち着いて座る。今日は突然来たので一応ケーキを持ってきたことを思い出した。


 いちごとオレンジのケーキとティラミスを買ってきたが、すぐに食べるのならば冷蔵庫に入れる必要もないか。


「えっ、ケーキ買ってきてくれたの?ありがとう。私ケーキに目がないんだ。いちごショートケーキもらうね。」

「私は、オレンジケーキ食べるわ。金彦ティラミス好きだったわよね」


 青波はケーキを食べるときもいちごを選んでいた、そういえば今日ここに来た原因もいちごミルクを飲んだからだし、いちごが好きなのだろうパフェとか食べる時もきっとストロベリーを選ぶのだろうが。


 ケーキを食べながら青波は見たことのないグッズをある理由を話してくれた。


「私自分で作ってるよ、もちろんバイトして普通に買ってる方が多いけど。世界で誰も持ってない『ミルク』グッズが欲しくなっちゃて」


「かねちーにもこれ一回見てほしかったんだ。いっぱいあるから持ってく訳にいかなくて私絵が得意じゃないから、線が太くて簡単な絵ばっかりだけどいろんな組み合わせができるから」


「今度コスプレもやってみようって思ってるよ。」

 立ち上がって一つ一つ観察しているとここまでできるなら、もはや俺のアイデアなどいらないではないかと思う。

 しばらく眺めていると青波さんは部屋から出ていった。不穏な言葉を残して。


「ちょっとトイレにいってくるね、あとわかってるよね」

「その棚は絶対に開かないでね!」


 トイレが近かったのだろう、どたどたと下にあるトイレに駆け下りていった。絶対に開かないでねなどと言われると逆に見たくなってしまうが初めての友達の家にいって開けないでと言われている。


 棚を開けるのは良くない。そんなことは分かっている。


「この棚の中に何が入っているか知ってるか?」

「私はそもそも棚なんて開けたことないわ。そもそも開けようとも思わなかったわ」


「駄目だよな、開けちゃ」

「ええだめよ、当然じゃない」


 分かっている、開けてはいけないことくらい。



 体は正直に棚の取っ手に手が伸びていた。



 はっと手を放す。


 何で開けようとしているのか。もし開けるなら早くしないと、いけない。小声で紫乃に話す。


「どうにか、誤魔化せないか」

「いやよ、私は見ないわ、あなただけでみなさい」


 棚はぴっちりしまっている。ちょっと開けるだけでは中を確認することはできない。

 悩みに悩んで出した結論は。




「やっぱりだめだ。見ない。俺は見ないぞ」



「そう、当然よ、なに悩んでるの」


 きっぱりと諦めて壁を見る。たくさんのイラストが飾られていて。全ての絵が俺を監視しているような気がしていた。


 今度こそ諦めて仕方がなく座った瞬間にドアが大きく開かれた。


「見てましたよ、かねちー私の秘密を探ろうなんてひどいです」


「見てたってどこからだ?」


「最初からです、私がこのドアの隙間からジーっとね」


 つまり、最初からトイレになど行っていなかったのか。まさか見られているなんて思いもしていなかった。


「まあ、寸前でとどまったみたいだけどね」!

「おかしいですね~かねちーは人の着替えを勝手に覗く覗き魔って聞いてましたけど」


「俺がいつやったっていうんだ」

「あら、私のこと忘れたわけ?」


「ごめんさい」


 結局何が入っているかわからなかったが約束は守ることに成功した。

 何となく気になるが結局最後まで中を確認することはできなかった。


「私の家に来た目的忘れてない?」

「今日はケーキを食べに来たんだったか」

「違うわ、背景を何にするか考えに来たのよ、金彦」


 すっかり忘れていた。もうこの部屋に入った時点で全部記憶から吹っ飛んでいた。


「私になにを書くか教えてくれるために来たんだよね」


「背景は…、魔法陣と宝箱とかいいんじゃないかほら、ここにあるし」

「棚の中身が宝ってこと?」

「そうそう、宝物は『ミルク』ってことで」


「うーん、まあ安直だけどいいんじゃないかなー」


 どうやら無事に何を書くか決まったようだ。とっさの提案だったが少なくとも青波の家に来なくては思いつかない内容であった。とりあえず今日のミッションは達成である。


 安心したら腹が痛くなってきた。トイレどこだっけ。


面白かったら、いいねとブックマーク、★評価もぽちりしてください。


モチベ上がりますのでよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る