インジゲーター

雛形 絢尊

第1話

とても音が大きくなっていく、耳を刺激するような高い音。機械音のようなとても嫌な音だ。私は耳を塞ぐ。片耳だ。

「早くしないと誰かが死ぬ!」と若い女性は言った。

徐々にその音は大きくなっていく。そのうちの誰かがその場にしゃがみ込み叫び出した。彼は一心不乱に頭を掻きむしる。

この部屋には6人いる。6人というものの1人は死体だ。生存者は5名。

白い壁が四方に見える八畳半ほどの部屋だ。

この死体を除いても、5人の人間には狭い。

「まず誰か説明しろよ」

とかなり強面な男が怒鳴るように言った。

あたりは一斉に慌て出した。

この部屋には私、20代半ばの女性、40代の女性、眼鏡をかけた30代の男性、強面の40代の男性がいる。

「一旦冷静になりましょう」と眼鏡をかけた男性が言った。「冷静になんてなれない」と40代の女性が言った。

「どうすればいいんでしょう」と若い彼女が言った。私は、とにかく助けを待ちましょうと言った。

「携帯も所持品もない、どうすればいい」と眼鏡の男性が言う。

この白い壁の部屋には扉もなく、ただの立方体の中に閉じ込められている。あとは何もない。

すると機械のような音は止んだ。

何が起きてると強面の男性が言うと続いて40代の女性が「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」と錯乱状態に陥った。

私もどうすることもできずに周りを伺う。

「まず、この死体。あなたがやったんでしょう」

と慌てた眼鏡をかけた男性が強面の男性を指差し言う。20代前半の若い男だ。

「どこにそんな証拠がある?お前だろ、こういうのはだいたい言い出しっぺだ」

落ち着いてくださいと私が言うと強面男性に「さてはお前だろ」と言う。

「とにかく」と若い女性が言うと、「この方、死んでるその人はどなたか知り合いですか」

と文が破綻しそうな勢いで問いかける。

「違う」と真っ先に眼鏡をかけた男性が言う。俺も違うと強面の男性が言った。

私も続いて「知りません」と言った。

意識を保つのがやっとな40代の女性も「そんな人知らない」と言った。

すると再び耳を刺激する高い音が再び、鳴り始めた。

「まただ、まただ」と辺りは慌てた。

私は再び耳を塞いだ。

「これいつまで続くんですか」と若い女性が言う。

そんなことはわからない。私だって知りたいのだ。ここにいる全員が。

徐々に音は大きくなっていく。


「ああもう無理無理」

と40代の女性が言う。

おいおいおい、ちょっと待て、おい。と強面の男性が言う。

音が止んだ。再び沈黙が訪れる。

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インジゲーター 雛形 絢尊 @kensonhina

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