第三章 散りゆく者達

第52話三方ヶ原の戦い

武田信玄は、徳川よりも織田を気にしていた。織田信長は、今は、尾張一国から、美濃、伊勢、近江、更には畿内五国、山城、大和、河内、摂津、和泉を支配下に置いていた。織田の天下統一か、自身の病が先か葛藤していた。


よって、夏希の策略もあって、浜松城をそのまま通り過ぎて行った。


「我が領地に足を踏み入れ、浜松城を無視するとは、何事か!この家康、三河魂を見せつけてやろう!」

 

武田は徳川をおびき出すことに成功した。

隊の後ろに徳川が迫ってきた途端、武田軍は、隊を乱さず方向転換し、徳川と野戦の状態へともって行った。三方ヶ原の戦い。

馬場信房隊と乱戦状態になったが、突如、表れた真っ赤な鎧兜、旗指物、武具をことごとく朱色に染めた赤備えの山県隊が徳川家康を襲った。夕焼けと共に迫ってくる山県隊は、家康に恐怖をもたらした。余りの恐ろしさに、家康は馬上で脱糞し、浜松城へと逃げ帰った。昌景、続いて昌豊は家康を追いかける。


浜松城の城門が大っぴろげに開いてある。

昌景と昌豊は、顔を見合わせ、城に入る事はしなかった。  

このことを信玄に報告すると、どんな罠があるかもしれぬ。深追いしなかったことを褒めた。

そんな信玄ならば、長篠の戦いで、武田軍が壊滅することはなかっただろう。


家康は、このことを忘れないように、絵師に己の今のみっともない姿を書かせた。


武田信玄は、標的を織田へと移す。

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