25. 新しい家族

 お屋敷についての説明を受けてから少しして、私は昼食の席についた。

 お義父様は少し後から入ってきて、お義母様が最後にダイニングに入ってくる。


「よし、揃ったな。

 昼食の前に話がある。もう知っていると思うが、今日からエリシアを養子として迎え入れた。

 一度顔合わせはしているが、今日からは家族として過ごすことになる。血の繋がりが無くても大切な家族だ。お互いに家族として接することを心掛けるように」


 そうして全員が揃うと、お義父様が家族全員を見渡しながらそう口にした。。

 この言葉にお義兄様達は揃って頷いて、私の方を見ながら柔らかな笑顔を浮かべてくれている。


 だから、私は挨拶の意味も込めて、小さく頭を下げてから笑顔を返した。


 アイシューヴ公爵家は元々六人家族。お義母様とお義父様に、私より二つ年上のスカーレットお義姉様と一つ年上のジェイクお義兄様、私と同い年のヴァイオレット様に私の一つ年下のハーマン様。

 お義姉様はもう結婚していてお屋敷では暮らしていないけれど、今日は私を迎え入れるために来てくれているのよね。


 ここダイニングのテーブルはお客様を招くことも想定しているみたいで、私が加わっても半分の席が埋まっているだけ。

 王家も凄かったけれど、公爵家も同じくらいすごいと思う。


「話したい事は山のようにあるだろう。そろそろ昼食を始めよう。

 いただきます」


「「いただきます」」


 食前の挨拶をしてから、早速料理を口に運ぶ私。

 王宮の料理もおいしかったけれど、ここ公爵邸の料理もすごく美味しくて、気を抜いていたら勢いよく食べてしまいそうだ。


 最近は王妃様と同じくらいの量を食べられるようになったから、気を付けなくちゃ。


「エリシアが王宮で暮らしていたとは聞いていたけれど……思っていた以上に所作が綺麗で驚いたわ。

 私、負けていないわよね?」


「お姉様よりエリシアの方が綺麗だと思いますわ」


「えっ!? 流石に冗談よね?

 エリシア助けて~!」


 ……なんて思って手を止めていると、早速お義姉様から無茶振りが飛んできてしまう。

 私の方が綺麗な所作なんて有り得ないけれど、ヴァイオレット様は自信満々の様子だから否定もし辛い。


「自分で自分の振舞いは分かりませんから、お義兄様達に聞いた方が良いと思いますわ」


 だからお義兄様達に質問を振ってみたのだけど……。


「間違いなくエリシアの方が綺麗だろう」


「エリシア姉様の方が綺麗だと思います。王宮で暮らしていたというのは本当だったのですね!」


 キラキラとした目ではっきりとした答えが返ってきて、お義姉様はガックリと項垂れてしまった。

 ……嫉妬されたらどうしよう。そんな不安が襲ってきてしまう


「決めましたわ。エリシア、私の所作の練習に付き合ってもらえるかしら?」


「私なんかで良ければ、ぜひご一緒させてください」


 けれど、不安は現実にならなくて、代わりに断れないお願いをされてしまった。

 まだ一度もパーティーに出ていない私に務まるとは思えないけれど、指名されてしまったのだから仕方がないと思う。


「お姉様ずるいですわ! この後テラスでエリシアとお話ししようと思っていましたのに!

 お姉様だけエリシアと仲良くなるなんて、許しません!」


「そ、そんなつもりは無いわ」


「目が泳いでいるのは気のせいでして?」


 ……なんてやり取りが始まったら苦笑いしか浮かべられないけれど。


「私達三人でお話しすれば済む話ですわ!

 エリシアもそう思わなくって?」


「え、ええ……。私も同じ考えですわ」


「……俺達は蚊帳の外か」


 お義姉様達はほっとした様子で料理を口に運んでいるけれど、お義兄様達は悔しそうにお肉を頬張っている。

 これは後でお義兄様達ともお話しをする時間を作った方が良さそうだよね……。


 そう思ったから、昼食後にお義兄様を呼び止めて、明日の朝食後にお話しする約束をしてからダイイングを後にした。

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