20. 予行練習です
お茶会の練習をしてから数日、私は久々に体調を崩した。
最後に体調を崩したのはまだお母様が生きていた頃だから、数年ぶりだ。
お陰で四日近く何も出来なくて、せっかくのお茶会もお休みすることになってしまったのだけど、フィリア様は怒らずにお祝いしてくれた。
ライアス様は一切この事には触れなかったけれど、毎日お見舞いには来てくれていたから、見捨てられたわけでは無いと思う。
数日もすれば体調はかなり落ち着いたから、昨日からは学問の勉強を始めている。
今は勉強を終えて、休憩にお菓子を広げている最中だ。
もうすぐ夕食だからクッキーは一人一枚だけれど、夕食を食べられなくなったら料理人さんに申し訳ないから、今日はこれで我慢しなくちゃ。
「エリー、お疲れ様。体調は大丈夫か?」
「ありがとうございます。もう落ち着いたので大丈夫です」
体調は万全ではないけれど、バードナ邸で毎日忙しくしていた時よりはずっと元気だから、ついさっきまで先生をしてくれていたライアス様の問いかけに笑顔で答えた。
「それは良かった。まだ万全では無いのなら、無理はしなくて良い。
しかし、どうして明るく振舞えるのだ? 今日は元気かもしれないが、昨日だって楽しそうにしていた」
「身体は辛いですけど、成長の証だから嬉しかったのです」
「エリーは本当に強いな。一人で怖がっていた俺が馬鹿みたいだ」
「馬鹿なんて思ったりはしませんわ。
親しくなった人が苦しんでいたら、怖くなるのは当然だと思います。もしライアス様が病で倒れたら、私は居ても立っても居られなくなります」
お母様が亡くなった時、最初は少し熱があるくらいでお父様も私も危機感なんて感じていなかった。
けれど、朝になるとお母様は冷たくなっていて……。
……思い出すと辛いから、考えるのは止めた方が良いよね。
「それもそうだな。安心したよ」
小さく息をついてから、お茶を口にするライアス様。
そんな時、隣で聞いていたフィリア様が口を開いた。
「エリーさん、明日の裁判には参加出来そうでして?」
「ええ、今の感じなら大丈夫そうです!」
「良かったです。
義母との戦い、応援していますわ」
「ありがとうございます。頑張ります!」
「ライアス様、フィリア様、エリシア様。お楽しみ中に申し訳ありませんが、間もなく夕食のお時間でございます」
「もうそんな時間だったのか。すぐに行く」
お話する時間はこれだけで終わってしまったけれど、これから夕食の場でも沢山お話出来るから、私達はダイニングに移動することになった。
それから少しして、夕食後。
お話のし過ぎで乾いた喉を潤してから部屋に戻ると、侍女さん四人に出迎えられた。
「エリシア様、今日もお疲れ様でした。
湯浴みの準備は出来ておりますので、いつでもお入り頂けます」
「ありがとうございます」
普段は一人か二人の侍女さんがこの部屋で控えてくれているのだけど、今日は四人。
一体何が始まるのかと身構えながら、お風呂に入る私。
不安になりながらも身体を洗っていく。
お風呂に入り始めた頃はお義母様に引きずられた時に出来た傷がヒリヒリと痛んだけれど、すっかり治ったみたいで石鹸が触れても痛みは無かった。
それから部屋に戻ると、いつもとは違ってベッドの上に促された。
ベッドの上にはタオルが敷かれているから髪が濡れていても大丈夫なのかもしれないけれど、少し不安になってしまう。
「まずはマッサージから致しましょう」
「は、はいっ! お願いします」
この状況に戸惑いながらも頷くと、足を優しく揉まれる。
「こちらの香油はお肌を綺麗にする効果があるので、一緒に塗り込んでいきますね」
「ありがとうございます」
「……凝っているところは無さそうですね。
次はこちらのクリームを塗らせていただきます」
そうして訳が分からないまま、全身に香油を塗られ、お顔には謎のクリームまで。
確かに私の肌は使用人として働かされていた時からずっとボロボロだけれど、これで綺麗になるのかしら?
今はお化粧で誤魔化しているから、素の肌は綺麗にした方が良い事くらいは分かる。
きっと今日から毎晩このエステのフルコースになると思うけれど、この時間は心地よいから断ろうなんて思わなかった。
そうしていると、温かいタオルで香油とクリームが拭われていって、肌に空気が触れた。
「お待たせしました。
すぐに効果が出ることはありませんが、毎日続ければフィリア様と同じくらいの綺麗なお肌になると思います」
「ありがとうございます。
本当にそんなに綺麗になるのですか?」
「私達にお任せください!
一ヶ月後……いえ、半月でフィリア様に追いつけるように致します!」
「そんなにすぐに効果が出るのですね! 楽しみにしていますわ」
それからの私は一気に眠気に襲われてしまったから、髪を乾かしてもらってすぐベッドに入って目を閉じた。
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