第7話 宿命
「なんだったんだ一体‥‥」
「これから大変なことになりそうだな。灰斗クン?」
昼休みが終了する時間が近づいてきたため、俺たちはひとまず屋上から自分たちの教室へと戻り始めていた。聖女たちは屋上の戸締りなどいろいろやることがあるようで、俺たちが先に帰ることになった。同じタイミングで帰ると、それはそれでまた噂が広がりそうなので、俺としては非常にありがたい。
「お前マジで
「だってまぁ俺は別に関係ないからな。あの聖女2人に好かれて、しかも登下校だったりを一緒にするんだろ? 学校中の注目を集めること間違いなしだな」
「あのなぁ‥‥いくら聖女たちがあんなことを言ってたとしても、さすがに登下校を一緒にするっていうのは‥‥」
透真はケラケラと笑いながら俺のことを煽ってくる。俺はそんな透真のことを軽くはたきながら、これからのことについて考える。
聖女たちには「一緒に登下校」をしようとか言われたけど、正直俺はそんなことをしようとは思えない。透真が言ったようにそんなことをすれば、学校中で噂になることは間違いないし、なにより俺は聖女たちが俺に興味を持ってくれるというのがにわかに信じがたかった。もちろん、学校で莫大な人気を誇る聖女2人と話したり、登下校したりっていうのは悪い話ではない。そりゃあ、あんな美人2人に挟まれるなんて、夢のような話だ。けど、やっぱり引っかかるものもある‥‥。
「ま、どうするかはお前次第だけどな。けど、聖女2人と仲良くなれるチャンスだぞ? 逃したら後悔することになると思うけどな」
「それはそうだけどリスクがでかすぎるんだよなぁ‥‥」
なんだかんだ言いつつ歩いていると、いつの間にか自分たちの教室へと戻ってきていた。昼休み終了間際ではあるのだが、聖女目的の人たちがいるのか、何人か教室に集まっていた。今朝の影響で、俺たちの姿を見た瞬間、集まっていた人たちがざわつくが気にしたところで意味がないので気づかないふりをする。
「もう慣れたもんだな?」
「うるせ。気にしたところで意味ないだけだ」
「やっぱ慣れてんじゃねーか」
揶揄ってくる透真を適当にあしらい俺は自分の席へとつく。そうしているうちに、またしても教室がざわめく。入口の方へと視線を向けると、聖女2人が教室へと入ってくるところだった。
そうして聖女を眺めていると、白聖女がこっちを見てきたことでばっちりと目が合った。そしてその瞬間、白聖女は口元に笑みを浮かべ、パチンと俺に向かってウインクをしてきた。
「ばっ! 何してきてんだアイツ‥‥」
「人気者はつらいですなぁ。向こうも積極的になってきてるし。先が思いやられるな」
「こっちのセリフだ」
隣で面白そうにしている透真をはたきつつ、俺はもう一度聖女たちの方へと視線を向ける。どうやらさっきのウインクに気付いたのは俺と透真だけであるようで、周りの人間は聖女2人に見惚れ続けている様子だった。
「ま、これから頑張れよ。お・う・じ・さ・ま」
最後の最後までうざったらしい透真を見送り、俺は昼休み終了のチャイムが鳴るのを待った。
「灰斗くん! 一緒にかーえろ!」
「よろしくお願いします」
放課後。聖女二人の言葉に一瞬でこちらへクラス中の視線が集まる。
なんでこうなっちゃうかなぁ‥‥。
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