[第8話:Gerbera II]
桂と迅雷寺が森での修行を行う中、彩科院邸の中庭では矢島と樫間、白峰の特訓が行われていた。
「ほれほれどーした?もう終わりか?」
矢島は左手をポケットに入れ、右手で"
「ふぅ…どうする隊長…このままだと俺たちやられっぱなしだ…。」
白峰は、息を切らしながら樫間に言った。
「矢島さんは水属性…。彼が自然エネルギーで攻撃してくれれば、倍の力で俺の攻撃が撃てるけど…。」
樫間は、額の汗を拭いながら答えた。
ふと、樫間は視界の片隅にある何かに気づき、白峰に言った。
「渉さん、矢島さんを引き付けてくれ。」
樫間は、ニヤリと笑みを浮かべ白峰に言った。
「お、おっけ…。任せろ!」
白峰も、樫間の思惑に気づいたように答え、矢島に向かって突っ込んだ。
「"炎美"っ!」
炎を纏った拳で、矢島に殴りかかる。
「何度やっても結果は変わんねぇぞ?」
矢島は、その拳を槍で丁寧に受け流す。
白峰は余る勢いを精一杯踏ん張り、再び矢島へ拳を振るった。
「…変わらないかどうかは…これを見てから言って欲しいですねっ!」
突如、白峰は攻撃をやめ、矢島から距離を離した。
「…"
白峰の後方から、大量の氷の銃弾が矢島に向かって飛んできた。
「まじっ!?」
矢島は避ける暇もなく、槍を回して銃弾を防いだ。
銃弾が止むと、今度は氷の龍が矢島に襲いかかる。
「"
氷の龍は何体も現れ、真っ直ぐ矢島に向かって襲い続けた。
矢島は槍で攻撃を弾き続けるも、龍の攻撃は止まらない。
「…くそっ!」
矢島は攻撃を弾くと、後ろに身を引き、槍を構える。
「…"ボアラッシュ"っ!」
襲いかかる龍に向かって矢島は槍を無数に突き刺し、水の猪を繰り出した。
矛先から繰り出される猪は、襲いかかる龍に向かって突進した。
しかし、猪は次第に凍り始め、龍によって消されていく。
「…ちっ、だから攻撃したくなかったんだよ!」
矢島はそう叫ぶと、槍を構え直し龍に向かって走り出した。
矢島は槍を龍に向かって突き刺し、そのまま突進し龍を砕き消した。
「…へっ、忘れてたぜ。この庭、立派な池があったんだっけな。」
攻撃が止み、矢島が見つめる先には、池の中でびしょ濡れになった樫間がいた。
「池の水を生かした底無しの攻撃…やるじゃねぇか樫間!」
樫間は、白峰が攻撃を行なっている隙に池に飛び込み、そこから攻撃を繰り出していた。
「白峰との相性は良くても、お前との相性は悪いからなぁ。良く考えたな、お前ら。」
矢島は感心して言った。
すると、樫間は上空に視線を向け、突如上空に攻撃を撃ち出した。
「おいおい、どこ狙って撃ってんだよ。」
矢島が呆れたように樫間に言うと、白峰は上空を見て言った。
「矢島さん!上っ!」
白峰に言われ矢島が上を向くと、そこにはNAMELESSが10体以上現れていた。
『NAMELESSの生体反応確認!数15体!場所は…彩科院邸上空!』
突如、本部からの緊急通信が入った。
樫間達の上空に、15体のNAMELESSが現れる。
「…まじかよ…冗談キツいぜ。」
矢島は、上空を埋め尽くすほどのNAMELESSを見て、苦笑いを見せた。
『矢島さん!樫間、白峰両名と共に、NAMELESS撃退行けますか?』
矢島は、俯きながら通信に答えた。
「…了解。任せろ…!」
すると、15体のうち10体が、矢島達に向かって突っ込んできた。
「樫間!白峰!やんぞ!」
矢島はそう叫ぶと、襲いくるNAMELESSに向かって槍を構えた。
「"ボアラーーッシュ"!!!」
槍から、無数の水の猪が放たれる。
「…美しく、咲き乱れ!"炎華"っ!!」
白峰も拳に炎を纏い、NAMELESSに突っ込んだ。
「"
樫間の体を、2代の氷龍が覆った。樫間は、NAMELESSに銃口を向け、攻撃を撃った。
「"
放たれた2体の氷龍は、NAMELESSに向かって飛び出し、暴れ回る。
矢島は、通信に向かって叫んだ。
「謙!すまねぇ、フォローくれ!」
彩科院邸近くの森の中ー
「…"十五の舞、
静かな森に、鋭い雷の音が鳴り響く。
「さすがだ椎菜。既に十五の舞まで生み出すとは。」
桂は、感心した表情で迅雷寺を見つめる。
『NAMELESSと思われる生体反応確認!数15体!場所は…彩科院邸上空!』
2人の元にも、通信が入る。
「彩科院邸…慎次達のところか!」
桂は驚いた表情を見せた。
「師匠っ!」
驚く桂に、迅雷寺が駆け寄る。
「椎菜。今すぐ戻ろう。彼らが危ない!」
桂が言うと、続けて通信が入った。
『謙!すまねぇ、フォローくれ!』
慌ただしい矢島の声が、2人の耳元に入る。
「分かった。すぐに向かう!」
桂はそう言うと、迅雷寺と共に屋敷に戻った。
2人が屋敷に戻ると、そこには未だ5体のNAMELESSと、それに対抗する3人の姿があった。
「慎次っ!」
桂が叫ぶと、矢島は額から血を拭って桂に叫ぶ。
「謙っ…!10体はやった…!けど…こいつら今までとは桁違いだ…!気を…つけ…」
そこまで言いかけると、矢島は倒れた。
「慎次っ!!」
桂は叫んだ。
「…椎菜っ!逃げ…ろ…」
白峰もそう叫ぶと、前のめりに倒れた。
「渉っ!!」
迅雷寺も叫んだ。
「…椎菜、行くよっ!」
桂は、上空に浮かぶNAMELESSを睨みながら言った。
「…"十一の舞…
そう叫んだ迅雷寺の体から、抑え切れないほどの雷が溢れ出た。
「喰らえぇっ!!」
迅雷寺は、溢れる雷を纏いながらNAMELESSに突っ込んだ。
それに対し、4体のNAMELESSが迎えうつ。
「…"氷結叢雨"っ!!」
樫間は、迅雷寺を援護する形で氷の龍を撃ち込んだ。
迅雷寺は、雷を纏い唸る刀を振り、4体のNAMELESSに斬りかかった。
その攻撃を後押しするように、氷の龍がNAMELESSに突き刺さっていく。
迅雷寺は地面に降りると、白峰に駆け寄った。
「渉っ!しっかりして!渉っ!」
迅雷寺は、目に涙を浮かべながら、白峰に声をかけた。
「…少々おいたが過ぎますね…"十三の舞、
桂が刀に手をかけると、風が吹き荒れ、その風は鋭く荒く、NAMELESSを斬り付けた。
4体のNAMELESSは、桂の攻撃により核を斬り裂かれ、静かに消滅した。
「"十五の舞、
そう言うと、桂は刀を構えて残る1体のNAMELESSに向かって飛びかかった。
すると、そのNAMELESSは突然黒く光り、目に大きな縦線が現れた。
そして右腕が鋭く伸び、刀のような形に変形した。
変化したNAMELESSは、向かい来る桂目掛けて突撃した。
NAMELESSの右腕と、桂の刀が激しくぶつかると、嵐のような風が周囲に吹き荒れた。
「…テメェ、マダイキテヤガッタカ。ソノヒダリメ、ツカイモノニシテヤッタハズダッタノニナッ!」
NAMELESSが、急に喋り始めた。その声は、何種類も重なった機械音のような声だが、話口調は、まるで子供のようだった。
「…その姿!?…忘れもしないですよ。この目を奪った貴様の事はねっ!」
桂は刀を思いっきり振り、NAMELESSと距離をとった。
すると、突如桂の体のあちこちが切れはじめた。
「アマイナ。テメェハオレノコウゲキヲウケトメタジテンデマケナンダヨッ!」
NAMELESSはバカにしたような口調で桂に言った。
「オワリダ。シネヨォォ!!」
NAMELESSの右腕が黒いオーラに包まれ、それを桂に向けて振り下ろした。
黒いオーラは真っ直ぐ、桂に向かって飛んだ。
桂が避けられずにいると、桂の横を人影が通り過ぎる。
「…"
NAMELESSの放った黒いかまいたちは、炎を纏った剣に斬り裂かれ、その剣はそのままNAMELESSに斬りかかった。
その攻撃は、NAMELESSを真っ二つに切り裂いた。
「…テ、テメェハッ!アノトキノッ!」
核を斬り裂かれ、消えそうになるNAMELESSは、剣を持った人影に向かって言った。
「…た、隊長…!」
傷を庇いながら、桂が言った。
そこに現れたのは、炎に纏われた馬に乗った彩科院だった。
「てめぇら、甘いんだよ。こんぐらいてめぇらで始末できなくて、BOX・FORCE名乗んじゃねぇよ。」
彩科院は、負傷する5人を見下ろし、言った。
「こちら"ガーベラ"。NAMELESS始末完了。」
彩科院は、冷静に本部に報告の通信を送った。
すると、彩科院に黒い人影が襲いかかる。
その人影は、黒いローブに覆われ、ローブの袖から鋭い刀を出し彩科院に斬りかかった。
彩科院は、自身の"裁馬刀"でそれを受け止めた。
「…誰だテメェは。」
彩科院がそう言うと、その人影は答えた。
「…ナノルヒツヨウハネェ。テメェラヲケスモノダ!」
刀がぶつかり合う中、彩科院はその人影に右脚で蹴りを放った。
すると、その人影はスッと消えていった。
「ツギアウトキガ、テメェラノサイゴダ…」
その言葉を残し、あたりには静かな風が吹いた。
彩科院は、冷静に本部に向けて再び通信を行った。
「…こちら彩科院。至急、本部にて緊急会議を行いたい。全員参加だ。よろしく頼む。」
通信を終えると、今度は携帯を取り出して電話を行った。
「日向さん。うちの2人と第1の連中を、手当てしながら至急本部へ送ってください。お手数お掛けします。」
電話を終えると、彩科院は馬を走らせ屋敷へ消えていった。
BOX・FORCE本部にある巨大な会議室。そこには大きなモニターが用意され、先程の戦闘の画像が映し出されていた。
そこには、各隊員全員と本部係員、そしてパンダと楢迫が集められた。
すると、彩科院が立ち上がり、静かに話し始めた。
「皆さま、ご多用の中お集まりいただき大変感謝いたします。早速ではありますが、報告させていただきます。
『人型のNAMELESS』が、先程確認されました。」
彩科院は、眉間にシワを寄せ、険しい表情で話した。
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