第5話

お通しはポテトサラダ。


具はキュウリとスライス玉ねぎで、ハムとかベーコンとか入ってないシンプルサラダ。


塩味濃い目、コンソメとマヨに隠し味の粒マスタード。


うーん、私好み。




「はい、前菜」




程なく私と妹の間に出された前菜のプレート。



キノコとパンチェッタ(塩漬け肉)のキッシュ、野菜のコンソメゼリー、生ハム、レーズン、干し杏子。


まるで、宅飲み(自宅で飲むこと)で私が毎度妹に作さられている酒のツマミの様ではないか……。


否、そのものではないか?



「てん、これって…」


前菜プレートに流し目しながら尋ねるわたしに、妹のてんは言った。



「私好みの前菜プレート。名付けて、姉の作る肴(さかな)」



細長のグラスに並々注がれたお酒をぐっと飲み干し、私に向かって親指を立てた。


GJ(グッジョブ)=良い仕事してるでしょ?



ってことだろうか?





さっき彼が持ってきた飲み物。




一口飲んだ時から、これまた違和感あったけど。




はちみつレモン、イチゴシロップ、全体の1割程度のテキーラをベースに.


グレープフルーツとオレンジ果汁と炭酸水で割ったもの。


私達姉妹の間ではこの飲み物を悪魔の飲み物と呼んでいる。




「あっ、マスター」


「どう、お店の雰囲気は?」



呆れていると冬野さんが再び私たちのいるカウンターに接近してきた。


そして、私ではなく妹の方に視点を定め微笑む。



ワタシは、嫌な予感がした。



「とっても良いと思います」


「それは良かった。てんちゃん、このプレート、うちの店で出して良い? てんちゃんが来るとき、毎回サービスするから」


「良いですよ」




私のレシピなのに!!(⊃ Д)⊃≡゚ ゚



勿論、口答えなんて度胸、ミジンコ並みに微塵もない、チキンの私はその場に項垂れるしかなかった。




何の駆け引きかやり取りか、私の考案したレシピが目の前で冬野さんに、流出……否搾取されていく。

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