すったもんだのはちみつレモン

第2話

スライスしたレモンから丁寧に種を抜き、煮沸した瓶に入れて。



ひたひたになるまではちみつを注いだら、出来上がり。






お湯や水で割って良し、酒で割って良し、そのまま食べて良し。



私の無人島に持っていきたいベストテンの一つ。





例え、私の人生、薄っぺらですっからかんでも、かまわない。


一生、恋人居なくて、一人でもかまわない。





無理して恋愛なんてしない。




はちみつレモンがこいびとで良い……。



私は欲張らない。



身の程は弁えている。



私が世界に望むことなんて、そうない事だ。



いつか、どんな大事なものを失っても、それだけは私から取り上げないで。



はちみつレモンさえあれば、それで良い。










「石崎さん、付き合っている人居ないの?」








不意に、蘇る古い記憶に胸抉られても。


まだ、記憶から呼び戻せばはっきり思い出せる、王子様のようなあの人の事がが好きだった。






「私、はちみつレモンがあれば大丈夫です」






あの人との最後の会話。


かろうじてまだ思い出せる。


彼が会社を辞める送別会の時。



格好良かった、優しかった、素敵だった。


何より好きだったな……、私の王子様。






もう、一生会えなくても良い。







けど、もう少しだけ、いつか忘れるその日まで、わたしの記憶で踊って欲しい。






いつかちゃんと忘れるから。








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