第11話

「私共CROWNでは、これから毎月カフェタイムで、月替わりの特別メニューを始めます。記念すべき最初の月替わりメニューは『クレープシュゼット』です」



カートの上には、カセットコンロの他、事前に焼いて置いたクレープとリンゴのカラメル煮と、グランマニエに浸したリンゴの皮とアイスクリームを保冷器に入れてすぐ取り出せる様にセットした。


企画・編集は私で。


配置など大まかな監修は由貴さんがしてくれた。


でも、実践はこれが初めてなので緊張している。


でも、大丈夫。


新しい自分を始めるんだ。


そう心で念じた。



「じゃぁ、カメラを回します。セイさん。どうぞ」



美咲ちゃんの声掛けで私は気持ちを切り替えた。


キッチンカートのコンロに火を付け、フライパンを熱して、そこにグラニュー糖を振りかけた。



「「ええ! お砂糖?!!」」



台本、二人が驚きのリアクションって書いてあったけど。


ユニゾンするとまでは聞いてない。


どうやら、息が合うらしい。


息が合うなら、気も合うだろう。



「まずはお砂糖だけでカラメルを作ります。茶色に煮詰まって来たら、バターを一かけら入れて、カラメルと砂糖が溶けあった所でオレンジジュースを加えます」



砂糖の焦げる甘い匂いとバターの香り、オレンジジュースの酸味のある爽やかな匂いが入れ替わり立ち代わり鼻をくすぐる。



「これに普通は4つ折りにしたクレープを入れるのが定石ですが軽めに召し上がっていただく為に、敢えて丸型のクレープを半分に切って二つ折りにしたものを使います。そうするとクレープ2枚で4っつになります。1人で召し上がっていただいても良いですし、2枚ずつシェアして二人で召し上がる事も出来ます」



そこに1個12等分して作ったリンゴをカラメルで煮詰めたものを加えた。



「仕上げに、グランマニエと言うオレンジリキュールで香りづけをします」



20センチぐらいの細く向いた長いリンゴの皮に、グランマニエに浸したのを、フライパン上に掲げて、上から火を付けた。



「「うわぁ!!」」



私のパフォーマンスに、美咲ちゃんとマリアンヌさんは新鮮なリアクションを取った。


ただ、美味しい物を食べるだけではなく、楽しい思い出も提供できたらと思ってちょっと頑張ってみた。


炎が上がった後は、燃え上がるリンゴの皮から手を離して、グランマニエのアルコール分が飛んで、火が消えた所で、コンロの火を消してリンゴの皮をトングで取り出し、白い平皿に出来上がったクレープシュゼットを2人分よそって、そこに自家製のバニラビーンズたっぷりのバニラアイスをよそった。


「どうぞ、クレープが冷めず、アイスクリームが溶けないうちにお召し上がりください」


カメラ班が、出来上がったクレープシュゼットの撮影に移り、その合間に、美咲ちゃんが私に言った。


「素敵です!!」


「ありがとう。良かったら、後で美咲さんかマリアンヌさんも、挑戦してみます? 楽しいですよ!」


「えっ、やりたい!!」


マリアンヌさんも、今のパフォーマンスが気に入った様で、ノリノリでそう言ってくれた。



おススメダイジェスト『第2章 人の人生を変えるなら、人に人生変えられるかくご位してやがれ バイオレーション(反則技) 前編』


https://maho.jp/works/15591074771452834292#15591074771453679563

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