第9話

封筒を開けると、白のメッセージカードに『新宮 悠 090-9999-■■■■ 親愛なる姪へ』 とあった。



「……キモ」



私がそう呟くと、目の前のウェイが無言で頷いた。


問題は、携帯の下4桁を水濡れで消失している事だ。



「大丈夫でした?」


「水濡れで判別不能。さすがに4桁分からないと連絡出来ない……」


「取りたいんですか?」


「一応、私も人並みに自分の出自に興味があると受け取っていただけないかしら?」



パリパリに乾いたメッセージカードをめくれば、もう一枚、写真が同封されているはずだった。



自称私の叔父、極楽鳥の様な容姿の悠が持っていた。



『私と両親の3ショットの家族写真』



ちょっと、見るのに勇気が要る。



どうしようか、躊躇ったが勢いに任せてカードをめくって驚愕した。


封筒の中身はメモの1枚きりだったからだ。


即座に考えついたのは、ウェイに寄る犯行の疑いだった。




「あんた、写真抜いたわね」


「はあ?」


「ないじゃない!! 私の写真!」


「え、知りませんよ」


「知らばっくれんじゃないわよ!連絡先と写真が入っていたはずなのよ!」


「え、それ一枚でしたよ。間違いなく」


「今更、ウェイの言う事なんて、何一つ信じらんない」


「え……。それについて、僕は確かに弁解の余地のない立場ですが、えっと、じゃあ、ファルコの狂犬に誓いましょう。中身に写真はありませんでした。信じて下さい」


「……分かった」



何となく、嘘ついてない気がしたのと、『マスターに誓う』と言うなら良しとしよう。


そう思えたから。




極楽鳥 新宮 悠に、会いたい。


今朝の記事で抱いた不安が、思い過ごしである事を確かめたい。


今夜にでも、ウェイを撒いて、行ってみるか…。




でも、もし、何らかの形で事件に関係してて身を隠していたら、彼の居所を見つけ出すのは至難の事だ。


悠の電話番号を失った事は、惜しかったが、『後の祭りだ。悔やんでも仕方ない』と思った。



「ところで、サクラさん」


「何?」


「今、8時ですので、さすがに朝食を摂っておかないと」


「は、8時って、もう出ないと間に合わないでしょう? 呑気にご飯食べている暇ないって」


「あ、それは心配ありません。今朝は、僕と一緒にオフィスに来ていただきます。産業医が念の為、サクラさんの健康状態を診たいそうです」


「え、正弘が?」


「あの産業医と知り合いなのですか?」


「うん、コドモの頃から診て貰っているけど?」


「……あの産業医、結構若いですよね?」


「何を定義の若いかは知らないけど、40歳」


「コドモの頃って、何年前からですか?」


「引き取られてすぐだから14年?……変な事考えないで。あいつ、美女にはエロいけど、コドモには優しい変態だから」


「変態って付いているだけで、心配ですが……」


「何が?」


「……別に」



変なウェイ。

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