第11話

腕を抑えていた男がスマホを動画モードにして撮影を始める。




『いつまでも、ヤられっぱなしと思うなよ』




私はひそかに反撃のチャンスを待っていた。





撮影は片手で、もう片方の腕でいまだ私の腕を組み敷いている。


二人がかりで組み敷かれていては身動きが取れない。




反対側でカチャカチャと金属が擦れる音がした。




「ほら、これ触れって」



と言いながらズボンを脱ぎ出す。



片手でベルトを外しながら、私の肩を抑える男。




まだ、チャンスはある。





私は試しに、両手の指を動かした。


感覚はほとんど戻っていた。




目が汚れないうちに、そろそろ反撃させて貰おう。





タイミングは、片腕でも身体が自由になった瞬間だ。



大丈夫。



チャンスは必ず巡って来る。




ベルトやズボンのホックは片手で出来ても、ズボンを下ろすのは両手を使うだろう……。



片手でも脱げない事はないだろうが、焦って急いで脱ごうとすれば、必然的に両手を使うはずだ。

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