NightMea

星桜

DAY1:孤高

帰り道、空は夕暮れ。遠方に微かに光る残光が、虚しさを助長する。過ぎゆく街灯りに混じる遮断機の赤い光。外界の音を遮る様に両耳を塞ぐ。いつも通り、まだ暑さの残る日中を箱庭で過ごした。唯一の理解者の彼女は今日は別々だ。私の端末のバッテリーも残り3%、道乗りを鑑みるに保つはずもなく。程なくただの鉄塊と化したそれは、今の孤独を表す様だ。耳に流れていた音は、線路を進む音に置き換わる。しかし、目線は変わらず車窓を眺める。

「あー、帰りたくないな。」

小さく、ため息と同時に溢れ出す。次の駅はもう乗り換えの駅である。憂鬱な気持ちが湧き出てくる。向かい側に停車している車両に乗り換え、程なくして最寄りの駅へと着く。

いくら日が沈んだとは言えど、じとっとした暑さは健在だ。坂を登ると、全身に汗が滲むのがわかった。街灯に照らされたアスファルトを眺めながら、一歩、また一歩と重い足を進める。いつのまにか目の前には扉。鍵を開けて中に入る。

「おかえり、今日は遅かったね?」

「ご…ごめんなさい、体育祭の準備で…」

「そう。ほら、ご飯できてるよ。先生来ちゃうよ。」

「うん!わかった。」

「じゃあ今日はここまでで、ここからここまでやっといて。次は…明日だね、明日までに宿題を終わらせておいてください。」

「はい。ありがとうございました。」

一日にすべき事を全て終わらせ、床につく。疲れがどっと出たのか、程なくして意識は落ちていった。

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