第15話 ギルドマスターからの勧誘

 


「申し訳御座いませんでした! ほら、レティも謝って!」

「すみませんでした」



 現在私とレティは、ギルドマスターさんが居る冒険者ギルド3階のお部屋におります。冒険者ギルド・レアルカリアの支部、ギルドマスターの名は、オリビエ・エスメラルダと言うらしい。てっきり初老のおじ様か、むさ苦しいおっさんだと思ってたのだが、まさかギルドマスターが銀髪の美しい女性だったとは……



「頭をお上げください、それに関してはこちらの条件を呑んで下さったら全て不問にしますよ。ソフィアさん、聞く所に寄れば、この街でお仕事を探しているそうですね」

「あ、はい……そうですが」

「そこで提案です。冒険者ギルド・レアルカリア支部で、受け付け穣のお仕事をしてみませんか? 人手も不足しており、私もどうしようかと困っていたのですよ。お試しでも良いのでまずは1ヶ月でどうでしょう?」



 受け付け穣!? この私が……出来るのだろうか。でも、私に拒否権は最早無いに等しい……しかし、ポジティブに考えたら仕事が舞い降りて来たようなものではないか。これはチャンス?



「勿論、お給金は出しますし休みの方もしっかりとありますよ。それにソフィアさんとレティさんは美人さんなので、とても素晴らしい絵になりますし……うふふ♡」

「そ、そうかな……私で良ければ是非ともお願いします!」



 このギルドマスターさんも何か怪しいぞ!? 見た目は銀髪のお下げ髪の妙齢な女性だ。眼鏡も掛けており、真面目な印象を感じる。だけど怒らせると怖いタイプの人種だな。日本で暮らしてた時もこう言うタイプの人が職場にも居たものだ。決して逆らっては行けない何かを感じるぞ。



「ではソフィアさん、レティさん宜しくお願い致しますね♪」

「あ、あの……私はまだやると言って居ないのですが」

「レティ〜誰のせいでこうなってると思ってるのかなぁ? 

「あ、はい……♡ ソフィア様のゴミを見る様な目……子宮がきゅんとしてしまいそうです♡」



 全くもう……レティの事もしっかりと教育して行く必要がありそうだな。もう少し健全になって欲しいものだよ。まあ、結果はともあれ仕事にはありつけたのはレティのお陰……なのか? でもここでレティを褒めてたら、また調子に乗って取り返しのつかない事をしてしまうかもしれない。ここは心を鬼にするべきだろう。



「ではこちらが契約書で御座います♪」

「おおっ……!?」

「如何なさいましたか?」

「字が……はっきりと見えます!」

「え?」



 異世界に来てから何故か言語は何となく分かるし、こうして書類も見ると字が何と無く読める。しかし、私が今感動している事は、字が鮮明に見えると言う事なのだ! 近年老眼が酷くて、細かい字を読むのにも中々に苦労をしたのだ。身体が若いと言うのは素晴らしいぞ!



「こちらの欄に早くサインをお願いします」

「待って下さい……まだ全部読んでませんのですが……」

「私も忙しい身で御座います。もう良いです。私がサインをしておきます」

「え、あの……」

「はい♪ これにて契約成立です♪」



 そ、そんなのありですか!? オリビエさん、何か先程から息がめっちゃ荒い……もしかして、レティと同じ系統の人種なのか? これでは契約書の意味が最早無いじゃないか……



「では今後とも宜しくお願い致しますね♪ ソフィアさんとレティさんの服はこちらに置いておくので、着替えたら1階に集合して下さい。受け付け嬢のアヤメさんの元でお仕事を覚えて貰いますので」

「え、今からですか!?」

「はい、実践あるのみです♡ さあ、こちらにお着替え下さい」



 ギルドマスターのオリビエに急かされながら、ソフィアとレティは控え室の方で着替える事になった。





 ―――――――――





「ふんっ……うぉぉおおお!!」

「ソフィア様、もう少しです! あと少しでボタンが!」

「この制服めっちゃキツくない!? 胸のボタンが閉まらないよ!」



 受け付け嬢の制服少し舐めてたよ。太腿が丸見えなくらいに裾が短いミニスカートで、少し胸元が大胆なくらいに開いている上の服。しかも、ボタンで胸元を閉めないと行けないから苦しくて仕方が無いぞ。こんな格好で業務をするとか、風俗か何かなのか?



「何とか閉まったけど……これ大丈夫かな?」

「何と言う……恐ろしい爆乳でしょう」

「レティも十分大きいでしょ!」

「いいえ、ソフィア様には遠く及びませんよ♪」



 レティは元が美人さんだから、受け付け嬢の衣装が物凄く似合っているな。喋らなければ大和なでしこなのに……喋らなければ。



「失礼するわよ」



 突然控え室の扉がトントンッと叩かれた後に、私と同じ服を着た赤髪ポニーテールの女性が入って来たのだ。キツそうな目だけど、顔は整っておりスタイルも抜群に良い。八重歯がチャームポイントの可愛い女性だ。恐らく先程ギルドマスターの言ってたアヤメさんと言う方だろう。よし……何事も最初が肝心だ。笑顔で挨拶と自己紹介をして、今後ともアヤメさんとは良き関係を築き上げる!



「ふ〜ん、貴方達がギルマスの言ってた新人さんね。あたしはアヤメ、宜しく。それにしても……デカイわね」

「はい、ソフィアと申します。アヤメ先輩、今後ともよしなにご指導ご鞭撻の方をお願い致します」

「レティです」



 何かこの人、態度デカそうだな。何か素っ気ない様な感じもする。私の苦手なタイプの人種かもしれない……これからこの人の元で、仕事を覚えるのだと思うと少し憂鬱だ。上司ガチャ外れか?



「ふんっ! ほんの少しばかり可愛からって、調子に乗らない事ね。まあ、間抜けそうな顔をしているし、脳の栄養が全て胸に行ってそうな……何よ?」

「ソフィア様を罵倒するのは……この私が許しません。自分の胸が貧相だからって、ソフィア様に八つ当たりですか? みっともないですね」

「ちょっとレティ!?」



 早くも剣呑な雰囲気だ。レティはマジでコミュニケーション能力が欠けている。はぁ……どうすれば良いのだ。



「貧乳……あ、失礼。絶壁先輩でしたか? 」

「なっ……何ですって!?」

「貧乳だから、心も器も小さいのでしょう。ソフィア様の足元にも及びませんね。貧乳先輩……あ、もしかしてパッドでも入れてますかぁ? あ、もしかして殿方の方ですか? あまりにも胸が無いのでつい……」

「貴方先輩に対して、まるで口の利き方がなってないようね……これは厳しく教育をしてやる必要があるわね!」



 レティもいい加減やめて! 火に油を注ぐ様な事をしてどうするの!



「こんな脂肪の塊……こうしてこうだわ!」

「ちょっと……!? あん……♡」

「こ、これが本物なのか……くそっ!」



 何で私!? アヤメさんが私の胸を思いっきり揉んでいる。いくら何でもこれはセクハラに該当するのでは無いのか!?




 ―――バチンッ―――




 何かが爆ぜた音がした。そして、数秒の静けさが過ぎた後にその原因が何なのか直ぐに分かってしまった。



「わおっ。ソフィア様……恐るべし、貧乳キラー」

「ううっ……何よもう!」



 あ、そういう事か。私の胸のボタンが弾けて、アヤメさんのおでこに直撃したんだ……



「アヤメさん……大丈夫ですか?」

「ソフィアさん、この後早速仕事に取り掛かります。覚悟して……準備してくださいね♪」

「あ、はい……」



 やばい。アヤメさん……めっちゃ怒ってらっしゃるよ。早くも人間関係に亀裂が入ってしまったのかな? もうやだ……宿屋に帰りたい。


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