独身おじさん、異世界で闇組織のボスのご令嬢に転生!? スラムで女の子を拾い母性に目覚めてママになる

二宮まーや

第1話 Prologue

 



「ういっ……やっぱりお酒は良いよなぁ。五臓六腑に染み渡る」



 私の名前は神崎 浩一かんざきこういち。46歳のうだつの上がらないおじさんだ。名前だけはかっこいいねと職場の人間に言われた事があるが、容姿に関してはメタボで頭のてっぺんが少し寂しくなりつつある、ごく普通のありふれたおじさんである。


「はぁ……私は一体、何処で道を間違えたのだろう」


 六畳間の家賃2万5千円の築50年のボロアパートに現在住んでいるが、最近では独りの時間が苦に感じる。最初は結婚何てせずに、孤独を愛して好き勝手自由に生きてやろうと思いながら独身生活を謳歌していた。


 しかし、今では全てに置いてあの時こうすれば良かった、もっとこうした方が良かったのでは無いかと後悔をする毎日だ。医師からもお酒を飲むなとドクターストップを掛けられているが、そんなもの知った事では無い。酒が飲めないなら死んだ方がましだ!


「はぁ……」


 友達も居ない、この歳でアルバイトをしてその日暮らしの生活をする困窮した毎日。正直言って死にたい……両親もとっくの昔に他界しており、私には兄弟も居ないので本当に独り身だ。分かってはいるんだ……お酒に逃げているだけなんだと。


「これが人生最期のお酒か……」


 気付けば目から涙が出ていた。ぽたぽたと茶色の古びた机に自分の涙が染み込んで行った。この机とは思えば長い付き合いだな。かれこれ20年は使ってるかもしれない。至る所が汚れかなり年季の入った机だ。この机のように私自身の人生も朽ちて行くのだろうな……


「神様……お願いします。どうか私に若さと家族を下さい……」


 声に出して言った所で意味の無い事だと分かっている。しかし、人間とは不思議な生き物でいつか何とかなる、誰かが自分を変えてくれる、運命の人といつか巡り会える、宝くじが当たるかもしれないと言った、何の根拠も無い希望的観測に縋って期待をしてしまう。


「本当に私は馬鹿だよな……そんな馬鹿な私の人生に今日で終止符を打とう……」


 私は買って来たアルコール度数96℃のお酒を袋から取り出した。大好きなお酒を呑んで死ぬ事が出来るなら本望だ。私が死んだ所で、誰も悲しんでくれる人等は居ない。人生を終える覚悟は出来ている。今日が私の命日となろう……


「あぁ……これを呑めば楽園エデンに……ぐふっ……」


 私は吐きそうになりながらもお酒を飲み続けた。途中目眩や激しい頭痛にも襲われたが、そんなのはお構い無しに飲み続けた。そして、気付けば私の意識は暗闇の奥へと沈んで行った……








 ――――――――――――――――――――






「あ、あれ? 何だろう……身体がふわふわする。しかし、ここは何処だ?」


 辺り一面を見渡して見ると真っ白な空間が、何処までも果てしなく続いている。静かで雑音も何も聞こえない……あれ? さっきまでの記憶が無いぞ? 私は一体何を……



 〖目が覚めたようですね。神崎浩一さん〗

「えと……どちらさまでしょうか?」


 何も姿は見えないが、何処からか美しい鈴の音のなる様な声で私に話し掛けて来る声が聞こえる。声の質からして、恐らく若い女性だと思う。


 〖私はこの世界の〇〇〇とだけ名乗って置きましょうか。神崎さん、貴方は死んだのです。死因は、お酒の過剰摂取による病気の悪化です〗

「あ、そうか……記憶が……」


 名前の所はノイズが入ったかのように聞き取れなかったけど、先程のまでの記憶が鮮明に蘇って来た。もしかして、ここは死後の世界と言う奴なのか? あるいは……


 〖貴方は大罪を犯しました。何かお分かりですか?〗

「わ、私が大罪を?」

 〖はい、それは自殺です。貴方の身体は元々は神様が与えて貸して下さったものです。それを傷付けると言う行為は、殺人を犯したのと同罪です〗

「そ、そんな……私はこれから、一体どうなるのですか?」


 自殺すれば楽になれると思ったのが大間違いだったのか……もしかしたら、私はこの後、地獄とかに落ちたりするのだろうか? 


 〖本来なら魂を消滅させ、未来永劫、地獄のような苦しみを受け続ける罰を与えるつもりでしたが、貴方には最後のチャンスを与えます。別の世界で寿命まで生きなさい。何を為すのかは、全てはあなた次第です。制限を掛けるつもりは一切ありませんので、自由に謳歌なさい〗

「別の世界で……も、もう一度人生をやり直せると言うのですか!?」


 神様は私にもう一度チャンスをくれると言うのか?


 〖はい、ですが決して楽な人生にはなりませんよ? そこの所は覚悟して下さい。これも試練なのです〗

「は、はい! ありがとうございます!」


 次こそは、私は普通の幸せ……良きお嫁さんを見つけて、素晴らしい家庭を築きたい。もう独りは嫌だ! 私は人生を充実させたい! しかも、46年間生きて童貞のまま女性経験も無く終わるのも嫌だっ!!



 〖ふふっ……では頑張って下さいませ。次にお会いする時は…………〗



 神様の声が、段々と小さくなって行き、次第に私の視界は眩しい光に覆われて、再び意識が途切れるのであった。

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