第7話 山積した課題④イメージを形にする

 昨日、NHKのスイッチインタビューという番組で北野武監督と素粒子物理学の村山斉教授の対談が行われていた。北野監督は科学がとてもお好きらしくそういう視点から色んなことを語っていらっしゃった。人間は死んだら素粒子に戻っちゃうだけとか映画はフィルムからデジタルになったから全然ダメだとか(化学反応で細かく表現していたものがドット絵になったからという理由)、あとは科学以外ではお笑いの劇場で新人のうちに破天荒なことをやると干されるけれど、実力をつけてからだと大丈夫だとか。多角的でとても面白かったので興味ある方はNHKプラスの再配信を観るか番組のブログを見てほしい。


 で、今日の話題。番組の中で北野監督は映画のストーリーは映像にする前に頭のなかで完成しているんだと語っていた。完成形がちゃんとあるけれど、それを映像にする時に失敗するんだと。

 あ、これ小説と似てない? って思ったのだ。

 たぶん小説を書く多くの人は、ある程度映像というものを頭に浮かべてそれから文章にする。だが、ほとんどの場合それを再現し切れずに終わる。100パーセント表現し切れたなんてほとんどないはずだ(まあ、稀にそういう天才もいるかもしれないが)。


 小説を書き始めて間もないころ、わたしはこれが一番悩みの種だった。頭のなかに壮大なストーリーがあって、特にファンタジーなどは巨鳥が空に舞っていたり、大森林が広がっていたり、飛空艇なんてものも登場するかもしれない。だが、その壮大なイメージとは裏腹に文章は拙く、イメージを読者に伝えきれなかったのだ。


 8年書いてきてなにが変わったの? と問われれば私自身はここの部分の成長が一番大きい。書き始めは脳内映像の再現率が35パーセントくらいだったものが鍛錬を重ねるにつれて50パーセント、65パーセントとだんだん上がってきたのだ。それがSFというジャンルに再び手を出してみる気になった理由だ。


 イメージを再現するためになにが必要か。言葉である。例えば目の前にイケメンがいたとする。そのイケメンを「イケメン」と表現するのでも伝わることは伝わる。でももっと表現するならば「顔が整っている」、「容姿端麗」、「すっと伸びた鼻筋に強い視線」、「煌びやかな笑顔」、「魅惑的な微笑み」、「バラの花が霞むような高貴さ」、ごめんね、これくらいしか今は思いつかないけれど。イメージを表現するのに適切な言葉を探すことで少しずつ脳内映像の再現率が上昇するようになった(あくまで過去の自分比ね、ほんとアレなの書いてたから苦笑)。

 まあ、でもこの作業はほとんどの場合上手くいかない。基本トライ&エラーの繰り返しで冒頭の方なんて毎日書き直している。そう、わたしは今作の冒頭を書いて早速失敗してしまったのだ。次回はその失敗について語ります。


 あ、念のためURL載せときますね。お勉強のほうちょっと進んだよ。


NHK『スイッチインタビュー』

1話目 https://www.nhk.jp/p/switch-int/ts/K7Y4X59JG7/blog/bl/peZjvLyGze/bp/pDqM47JrgD/


2話目 https://www.nhk.jp/p/switch-int/ts/K7Y4X59JG7/blog/bl/peZjvLyGze/bp/p4KXVvYB5q/


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