そうだ、カクヨムコン10へ参加しよう!

奥森 蛍

第1話 豚とわたし

 今年は猛暑で秋になるのに時間がかかった。お気に入りの長袖ワンピースがようやく着られるようになり、心地いい季節がやってきた。もっともこの時期、多くのカクヨムユーザーには別の関心事があって、わたしもその例外ではない。


 11月29日に開催の迫るカクヨムコンだ。書き手にとっては今がとても大事な時期でこのくらいから書き始めないとコンテスト中も自転車操業に突入することになる。何度かその苦しい経験をしたわたしは今年こそはちゃんとしたいと、先月の中ごろから執筆計画を練っていた。浮き立つ人も多いだろうが、わたし自身は冷静で「ま、落ちることも含めてかな」と考えている。過去に気合の入った作品を書いたにも関わらず成果を出せなかったという苦い経験をしたからだ。


 課題は山積していて文章が崩れてしまっているという問題、そもそもどんな作品を書くかという問題、どの部門を選択するかという問題。現在SFに取り掛かってはいるがそれで挑むにはあまりに準備することが多く、辟易としていた。


 アイデアに悩む或る晩のこと。風呂上りにテレビをつけると偶然にもトリュフハンターのドキュメンタリーをやっていた。わたしはトリュフが好きだ。トリュフのドレッシング、トリュフのポテトチップス。

 夢中になってトリュフを追って山に入っていくハンターの姿を見ているときにふと小説のことを思い出した。


「あ、…………」


 アイデアというものはいつ降ってくるか分からない。常にスマホを手元に置いてメモしているような人間にとってそれは僥倖だったといってもいい。


『トリュフハンター異世界へ迷い込む~目指せ一攫千金、豚と豪遊生活~』


 瞬時にいけるんじゃないかと思った。わたしはあくまで冷静だ。プロットを瞬時に考え、物語を編んでゆく。

 トリュフハンターが山に入ってトリュフを採っている際に愛豚のボクー(←もう決めてる)と異世界へと迷い込む。モンスターが跋扈する世界で命からがら生き延びて町にたどり着きそこでトリュフによる商売を始める。トリュフは夜にならないと取れず(←何故か知らん、メモしてた)、夜はモンスターが多く潜むことから護衛隊を雇ってモンスターの跋扈する山に分け入りトリュフを収穫していく。商売は成功してトリュフ御殿を建設するが、地元住民との軋轢から御殿の焼き討ちにあう。


 公開したとき用の作品のあらすじも考えた。


 お前らトリュフは好きか。オレは好きだ。あの豊潤な香りがたまらない、愛豚のボクーと一緒に迷い込んだ先の異世界で……




 翌日、冷静になって改めてスマホのメモ帳を目にしたわたしは失笑する。


「ふっ……やめとこか」


 わたしの作品を好きといってくれる方にとってひどい裏切りになるだろう。あんまり胸張って読んでともいえない。というかこんな着地点ない作品書くとかぞっとするわ! まあ、いろいろ頑張って考えてるんですよ。アイデアはクオリティなんか関係なく降ってくるから。

 カクヨムコン10はSFで参加します。タイトルは『お隣の植物くんと地球を科学する』。

 頑張んなきゃなと。さてウーパールーパー先生の動画観るか。

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