第6話     大丈夫?

香子が「野乃、大丈夫?」と病室の203号室のドアを開いた。

野乃が「大丈夫。お姉ちゃん」と笑顔で返事に答えた。

香子が「頭痛くない?」と気に掛けてくれた途端に野乃は「頭痛いよ。ヤバイ」と顔をうずめていた。

香子が「やっぱり、あんまり無理する事無いからね」と野乃に伝えた。

野乃が「ありがとう。お姉ちゃん。そうだ、これ病室の患者さんから貰った饅頭なんだけど、皆で食べて下さいって言っていたよ」と白い袋に6つも入って居た。

看護師さんが「野乃さん。今から血圧を測りますね」と笑顔で病室に入って来た。

野乃が「はい」と腕を捲り、看護師が血圧を測り始めた。

香子が「野乃?リンゴ食べる?」と声を掛けた。

野乃が「お姉ちゃん。リンゴむくなんて珍しいね」と笑顔で話し掛けた。

香子が「そうかな?林檎剥くのは自然だよ。妹が入院して居るのに」と楽しそうに話をした。

野乃が「ありがとう。お姉ちゃん」と喜んで居た。

道成が来て「お、姉妹で楽しそうにして居るんだな」と微笑ましく見ていた。

野乃が「道成の方こそ、今日は何しに来たの?」と声を掛けた。

道成が「今日学校で頼まれていたプリント持って来たんだよ」と白い問題用紙を出した。

野乃が「ありがとう。で?学校は真面目に勉強をして居たの?」と話し掛けた。

道成が「まぁ、それなりに」と野乃に恥ずかしそうに返事に答えた。

香子が「2人とも仲良さそうね?私、そろそろ家に帰ってお風呂の準備をして、夕飯の準備をしないと」と時計を見ると午後18時を過ぎていた。

道成が「お、行ってらっしゃい。やっぱり持つべきものは姉ちゃんだよな?」と羨ましそうにしていた。

香子が「道成のお姉ちゃんの成実さんは、どうしているの?」と声を掛けると、道成が「それがさ、聞いてくれよ。俺にお風呂の準備をやらせるんだぞ?冗談じゃないよな」と暑そうに帽子を取って話を始めた。

野乃が「ええ、やっぱり成実さんは、道成にとってカカア天下なのね」と笑って話をして居た。

道成が「全くだよ。香子の耳の赤でも煎じて飲ませたいくらいだ」と嫌な顔をして話を続けた。

野乃が「うふふ、成実さんと、道成ってまるで夫婦みたいね。笑っちゃうわ」と手で口を押えて笑った。

香子は、颯爽と病室の扉を開けて、終始、笑いが絶えない野乃を見て安心して家に帰った。

家で香子は「これでよし。じゃ、今日の夕飯はトマトのバジル和えでも作ろうかしら」と楽しそうに料理を始めた。

その後、道成のお姉さんの成実さんが来て「あの、これ良かったらカレーの残りなんですけど、食べて頂けませんか?」と鍋ごと持って来た。

香子が「はい、頂きます。ありがとうございます」とカレーの鍋を受け取った。

母親の遺影にもカレーを生前生きていた時のお茶碗に持ってお供えをした。

チンと鐘を鳴らして、香子が「お母さん、道成のお姉さんが持って来てくれたカレーです。食べてください」と手を合わせた。

今でも母の静が「あら?香子?こんな所に居たの」と溜息を吐いて、毛布を掛けてくれて居たのを思い出していた。

もう、香子は「お母さん。あの時、私達の事を優しく見守ってくれて居たんだな」と心の中で母の静の遺影を見て涙を流していた。


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