第11話

コンサートホールは満席だった。

バイオリンで演奏される『アニメ主題歌』に子供たちは大喜びだ。

子供向けだが、大人も楽しめる高度な演出になっている。

クラシックの名曲は、親子で聴き入って感動した。


「光希が芸術を理解してる!」

奈央は心から嬉しかった。


コンサートの後は、レストランでランチを食べた。

詩織お勧めの高級フレンチ店だ。

光希は、詩織の子供を真似てスプーンとフォークをうまく使った。

小姑に「使い方が下手」と言われたが、もう大丈夫だ。


塾長は「優れた環境と友達が、子供の成長を助ける」と言った。

詩織の子供と仲良くしたら、光希も優秀になるはずだ。



帰り道。

奈央と美咲が、子供と手を繋いで歩いている。

「結衣ちゃん 楽しんでたね」

「光希くんもノリノリだったね」


「やっぱり、テレビや配信動画とは違うわ」

「でもさ……」


美咲が不満そうに言った。

「子供連れだからファミレスでいいのにね」


奈央は「そうね」と同調したが、本心は違う。


ファミレスなんて情操教育に良くないわ。

詩織さんの言う通りにしたら間違いない。


口では言えないけど、そう思う。だって、


詩織さんと一緒に行動したい!

光希に詩織さんの子供と同じ経験をさせたい!

同じ幼稚園に入園させて、ママ友になりたい!


そのためなら、多少のお金は必要経費。


奈央の詩織に対する信頼と憧れは、今日で一層強くなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る